2026年6月1日から6月3日にかけて、日本列島では台風6号「チャンミー」による大雨が各地で発生しました。6月に日本列島へ上陸した台風は14年ぶりで、線状降水帯が広範囲に発生し、氾濫危険情報が発出されました。JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星とEarthCARE衛星(はくりゅう)が宇宙から降水と雲の三次元観測をしています。さらに、降水データを活用して、全球の雨を1時間ごとにモニタリングする衛星全球降水マップ(GSMaP)や河川流量等の数値シミュレーションを行うToday’s Earthを開発・運用しています。今回は、これらの衛星観測データを用いて、台風6号に伴う降雨と河川流量の変化を解析しました。

図1は、2026年5月27日 0:00 (JST)から、6月4日0:00 (JST)までにGSMaPで観測された台風の移動と、台風に伴う降水の時間変化を示しています。
5月27日 9:00 (JST)にフィリピン沖で発生した台風6号「チャンミー」は、勢力を強めながら北上して沖縄・奄美地方に接近し、その後進路を東向きに変えて6月3日4:30 (JST)頃に和歌山県に上陸、さらに東へ進んでいきました。台風が日本列島付近を移動する際に、台風の中心付近だけではなく、遠く離れた地域でも、強い雨が降っていたことがわかります。

図1. 衛星全球降水マップ(GSMaP)で観測された2026年5月27日0時(JST)から6月4日0時(JST)までの時間平均降水量[mm/h]。動画内の赤丸は台風を示している。

■ 台風発生〜フィリピン海北上(5月27日〜6月1日)

GPM主衛星は、5月31日にフィリピン海を北上する台風6号「チャンミー」に伴う降水を観測しました(図2)。GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)は、地表面付近の降水量だけでなく、降水の三次元立体構造を捉えることができます。赤色で示された降水量が多い領域では、雨雲は高度10 km程度まで発達していることがわかります。そして高度6 km以下では、いわゆる“どしゃ降り”(※1)と言われる20mm/h以上の強い雨が降っている様子が観測されました。また、台風の目の周りに同心円状に雨雲が分布している様子も捉えています。発生から日本列島へ近づくまでに、台風は徐々に勢力を増して発達していきました。

図2. GPM主衛星に搭載の二周波降水レーダ(DPR)で観測した2026年5月31日9時頃(JST)の台風6号。

■ 日本列島に接近(6月2日〜3日)

この台風により、気象庁は、下記の地点で線状降水帯の発生を報告しています(※2)。

2026年
6月3日
8時40分
神奈川県
東部

7時40分
静岡県
伊豆

30分
静岡県
伊豆

20分
静岡県
伊豆

10分
静岡県
伊豆

0分
静岡県
伊豆

2026年
6月3日
1時50分
和歌山県
南部

0分
徳島県
南部

表1. 台風6号接近時における線状降水帯の事例(気象庁HPより掲載)

徳島県・和歌山県で線状降水帯が発生した頃の降雨の状況を、GSMaPが推定した結果が図3です。20 mm/hを超える強い雨が降っており、特に徳島県では30 mm/hを超える激しい雨となっています。さらに長時間にわたって降り続けていることがわかります。
こうした長時間の大雨の影響により、和歌山県の古座川では、最も警戒レベルの高いレベル5氾濫特別警報が一時発令され(※3)、東京都の複数河川でもレベル4氾濫危険警報が発令されました。台風による降雨が継続したことによって、河川の水量が急激に増加したことが背景にあると考えられます。

図3. GSMaPによる2026年6月3日 0:00-0:59における(a)時間降水量[mm/h]および(b)12時間積算降水量[mm]。

JAXAでは衛星観測のみならず、衛星観測データを活用した数値シミュレーションを通して、水害リスクを推定・予測する研究開発も行っています。
その一つが、「Today’s Earth」と呼ばれる陸域水循環シミュレーションシステムです。Today’s EarthはJAXAが東京大学と共同で研究開発を進めており、その中でも、日本域に特化した「Today’s Earth – Japan(TE-Japan)」では、降雨量や降雪量、気温、風速といった気象データの予測に基づいて、陸上の水循環のシミュレーションを行い、日本域の河川の流量や水位、氾濫面積の割合、土壌水分量などを約1kmメッシュで推定しています。

台風6号「チャンミー」が日本に接近した2日早朝から3日にかけての河川流量の変化の推定結果を表しているのが図4です。

図4. 2日早朝から3日にかけての九州地方~関東地方での河川流量の変化

図4から、太平洋沿岸の広い範囲で河川流量の増加が推定されていることがわかります。この河川流量の増加には前述の線状降水帯の発生の影響が含まれていると考えられます。特に宮崎県、四国地方、紀伊半島などにおける河川流量の増加が顕著にみられることがわかります。これらの地域の河川では、前述の和歌山県の古座川も含め河川水位の氾濫危険水位への到達も報告されており、それらとも整合していると言えます。

■ 関東地方を通過(6月3日14時ごろ)

台風6号が日本列島を横断し、6月3日14時ごろに関東地方を通過したとき、EarthCARE衛星(はくりゅう)は台風の雲を宇宙からとらえました。図5は、はくりゅうに搭載した雲プロファイリングレーダ(CPR)が観測した台風雲内部の鉛直断面構造を示しています。雲の鉛直構造(レーダ反射強度)に着目すると、高度15km付近にまで達する非常に背の高い雲が広く連なって分布していることがわかります。特に赤く表示されている領域(レーダ反射強度の値が大きい領域)では、雲や雨の粒が大きい、あるいは数多く存在していることを示しています。

さらにCPRは、雲内部の雲粒や雨滴を含む粒子の上下方向の動き(ドップラー速度)も観測しています。高度5km以下では、全体的に負の値(青色)を示しており、台風の雨滴の速い落下速度によるものです。一方、高度5km以上ではドップラー速度の値は小さく、粒子が緩やかに落下していることがわかります。

これらの観測結果をあわせて見ると、台風6号の雲の内部では、雲粒子の成長と降水への変化が活発に進み、台風の下層で広範囲に雨が生成されていた様子がわかります。

図5. はくりゅうが観測した台風6号の雲内部のようす

今回紹介したGPM/DPRの観測データは、気象庁の数値気象予報に定常的に使われており、日々の天気予報でも役立てられているほか、はくりゅうの観測データは数値モデルでの台風の再現性の検証にも利用されています。また、JAXA地球観測研究センター(EORC)では、「GSMaP」や「Today’s Earth」、「JAXA/EORC台風データベース」、「JAXA線状降水帯集中観測モニタ」等を通じて、降雨や台風、それに関連する水文情報を広く提供しています。こうした衛星観測データや数値シミュレーションは、気象や防災判断に役立つ情報源として今後も提供し続けます。

関連サイト

JAXA 世界の雨分布速報
JAXA GPMウェブサイト
Today’s Earth Japan
JAXA 線状降水帯集中観測モニタ
JAXA/EORC台風データベース
JAXA/EORC EarthCARE ウェブサイト

※1. 気象庁、雨の強さと降り方
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html

※2. 気象庁、線状降水帯の事例
https://www.data.jma.go.jp/senjo_list/list_senjoukousuitai.html

※3. 気象庁、古座川水系古座川(和歌山県)にレベル5氾濫特別警報発表
https://www.jma.go.jp/jma/press/2606/03a/20260603_hanran_tokukei.html

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