2026年F1第5戦カナダGPのスプリント予選での手応えを背景に、ルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、週末に向けた準備としてシミュレーターを使わないという方針について、自身が「進むべき道」であるとの考えを示した。

ハミルトンは、セッションの大半でメルセデスに最も近い対抗馬に見えた。最終ラップでわずかにミスを犯し、土曜のスプリントに向けたグリッドは5番手にとどまった。だが、その走りは予選巧者と広く評価されるチームメイトのシャルル・ルクレールを上回るものだった。

あらゆる種類のセッションを対象としてハミルトンがルクレールを上回ったのは、第2戦中国GP以来初めての出来事だった。ルクレールはハミルトンにコンマ1秒及ばず6番手に終わった。

直近の日本GPとマイアミGPの2戦でルクレールに明確に水をあけられていたハミルトンは、カナダに向けて週末の準備を見直した。中国GP以来初めてシミュレーターを使わずに現地に乗り込んだのだ。

「おそらく、ここしばらくの中で最高の予選セッションだったと思う」とハミルトンは振り返る。

「エンジニアたちと本当にうまく連携して仕事に取り組めたし、セットアップも本当に効果的に変更することができた。クルマはFP1から本当に最高の感触だった。予選に向けては、ほんのわずかに調整を加えただけだよ」

開発パーツがない中、一時はポールも視野に

縁石にクルマを乗せながらジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年5月22日(金) F1カナダGPフリー走行1Courtesy Of Ferrari S.p.A.

縁石にクルマを乗せながらジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年5月22日(金) F1カナダGPフリー走行1

ハミルトンの速さはセッションを通じて際立っていた。SQ1でトップタイムを記録すると、SQ2でも好調を維持した。SQ3の最初の走行では、一時はポールも狙える位置につけていた。

そして迎えた最終ラップでは、セクター1で全体ベストを刻んだ。だが、ターン10のヘアピンでわずかにロックアップし、ポール争いから後退。マクラーレンの2台にも先行を許し、最終的に5番手で予選を終えた。

「SQ1とSQ2は悪くない感じだった。ただ、どうして他の連中があそこからもう少しペースを上げられるのか、僕には分からないけどね」とハミルトンは振り返る。

「でも、争いに絡む場所にいられたことがうれしい。走っていて、本当に楽しかった」

フェラーリは今週末、上位争いを期待されてはいなかった。メルセデス、マクラーレン、レッドブルが新たな開発パーツを持ち込むなか、フェラーリにはアップグレードがなかったためだ。

それを踏まえれば、5番手は上々の結果だった。

シミュレーター離れがもたらした効果

ハミルトンが自身をして納得する予選パフォーマンスを引き出した背景には、週末に向けた準備の変更があった。シミュレーターを使わず、その時間をデータの精査に充てたのだ。

「その方が、ずっと有益だと感じた。ひとつには、トレーニングだけに集中できて、気を散らされずに済んだからね」とハミルトンは語る。マイアミ以降の約3週間にわたる中断期間を通して、データを精査し、マシンへの理解を深めることができたという。

「もう一つは、ライドスタビリティ(車体の安定性)や、コーナーバランス、メカニカルバランスを、本当に細かく見直せたことだ」とハミルトンは続ける。

この作業の結果として、ハミルトンはこれまで使ったことのないセットアップを選択。それにより「マシンが一変」したという。

ハミルトンにとって、シミュレーターは長年の悩みの種だった。シミュレーターがこのスポーツに本格導入されるより前にキャリアをスタートさせたハミルトンは、メルセデス時代にはほとんど使わなかった。フェラーリに移籍した昨年以降は常用するようになったが、いまだになじめずにいた。

そんなハミルトンは、コンピューター上の予測ではなく、データ分析を通してイニシャルセットアップを決定し、実際のマシンの挙動に基づいてセットアップを調整するという、いわば原点に立ち返る道を選んだ。

「シミュレーターを使わなかったのに、今年一番の感触だった。だから、これが僕の進むべき道だと思う」とハミルトンは語った。

ブレーキに苦戦したルクレール

スプリント予選後のパルクフェルメを歩くシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2026年5月22日(金) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

スプリント予選後のパルクフェルメを歩くシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2026年5月22日(金) F1カナダGP(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

ハミルトンとは対照的に、ルクレールはマシンに苦しんでいた。その原因はブレーキにあった。

「クルマに対してまったく安心感が持てていないんだ。原因を調べて、明日に向けて何か手を打つ必要がある。それができなきゃ、今週末はかなり長い週末になるだろうね」とルクレールは語る。

「ブレーキのせいで、コーナーに入るたびに、まっすぐ突っ込みませんようにって祈っているような状態なんだ。それが一番の問題だね。それ以外は、クルマ自体の感触はまずまずなんだけど」

ルクレールは自らの苦戦を認めつつも、同時にチームメイトの速さも認めている。

「ルイスは今週末、信じられないくらい速い。一方で僕は、ブレーキの感触に取り組む必要がある。なんとか状況をひっくり返したい」

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