本件のポイント

◆弘前大学グローバルWell-being総合研究所の前多 隼人教授、琉球大学 農学部 亜熱帯生物資源科学科 小西 照子教授、㈱YoKa食品科学研究所(代表:弘前大学名誉教授 加藤陽治)、キリンホールディングス㈱(社長COO 南方 健志)の飲料未来研究所(所長:决得 麻佐子)は、カシスに含まれる多糖類に免疫賦活作用があることを明らかにしました。

 ・カシスは青森県が生産量日本一の果実です。培養細胞を用いた試験により、カシスに含まれるある種の多糖類が免疫賦活作用を示すことが示されました。免疫賦活作用とは、免疫力を高め細菌やウイルスに対する抵抗力を高める作用のことです。
 ・本研究成果は学術雑誌「Food Science and Technology Research」に掲載されました(Food Science and Technology Research, 32巻2号, pp191-202、2026年)。


図1青森県が生産量日本一のカシスの果実





<本件の概要>
【背景と経緯】
 カシスは青森県が日本一の生産量を誇る果実です。またカシスに特徴的な成分であるアントシアニンが含まれており、抗酸化作用やフィトエストロゲン作用などの機能性が報告されています。更にカシスに含まれる多糖類には、抗腫瘍活性や抗アレルギー作用が報告されています。特に抗アレルギー作用についてはアトピー性皮膚炎の症状軽減や、ヒト試験における花粉症に伴う鼻粘膜の炎症緩和作用などが報告されています。このようにカシスの多糖類による免疫調節作用が報告されていますが、どのような種類の多糖類が活性に寄与しているかについては未解明でした。そこでカシスの多糖類の詳細な分析をおこない、活性を示す成分の特定を試みました。

【研究、及び成果の内容】
 マウス由来マクロファージ様細胞(RAW264.7細胞)に対しカシス果汁から精製した多糖類を添加したところ、免疫賦活作用を有することが確認されました。次にこの多糖類を酵素処理により低分子化し、様々な分子量の多糖類を調製しました。次にこれらの多糖類を分画し、RAW264.7細胞に添加し、活性の指標となる一酸化窒素(NO)やインターロイキン6(IL-6)などの分泌量を測定した結果、高い免疫賦活作用を示す画分を明らかにしました(図)。更に当該画分の糖組成を分析したところ、分子量が約5,000のラムノガラクツロナン-I(Rhamnogalacturonan-I, RG-I)およびキシロガラクツロナン(Xylogalacturonan)であることが推定されました。本研究結果から、カシスに含まれる特定の多糖類の構造が免疫賦活作用に関与することが示唆されました。


図 カシスから調製した多糖類による免疫賦活作用の指標の上昇作用

【今後の展開】
 本研究により、これまで未解明であった免疫賦活作用を示すカシスの多糖類の構造が明らかになりました。今後はカシスからの効率的な抽出方法の確立や、機能性食品原料としての実用化が期待されます。

<用語の解説>
・カシス(Ribes nigrum)・・・別名クロフサスグリ。英名はブラックカラント (Blackcurrant)。青森県が生産量日本一の果実。
・免疫賦活作用・・・身体の免疫機能(マクロファージなど)を活性化・増強し、ウイルス、細菌、がん細胞などの異物に対する抵抗力を高める働き。病気に対する予防の効果が期待される。
・多糖類・・・複数の糖分子が結合した高分子化合物の総称。食品にはデンプンなどの消化性多糖類と、セルロースやペクチンなどの難消化性多糖類が含まれる。
・ラムノガラクツロナン-I(Rhamnogalacturonan-I; RG-I)・・・ペクチンの一種で主にガラクツロン酸とラムノースが交互に結合した構造を持つ多糖類。
・キシロガラクツロナン(Xylogalacturonan)・・・ペクチンの一種であり、ホモガラクツロナンの主鎖にβ-1,3-キシロースが側鎖として結合した構造を持つ多糖類。
・㈱YoKa食品科学研究所・・・弘前大学発ベンチャー認定企業。2018年6月設立。

<論文情報>
掲載誌:「Food Science and Technology Research」
(Food Science and Technology Research, 32 巻2 号, pp191-202、2026 年)

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