約350名が集結した「チャンピオンズカップファイナル シーズン4ラウンド3」(以下、チャンピオンズカップファイナル)。この大会を牽引したのは一人の関西出身のプレイヤーだった。

 

 坂野 黎(大阪府)は初日を全勝すると、無敗のままトップで決勝ラウンド進出を決めた。貫禄の12勝1分け。チャンピオンズカップファイナル規模の大会では、史上類をみない成績である。

 その勢いは途切れることなく、準々決勝では二連覇を狙う強豪マ・ノア/Ma Noahとの熾烈なシーソーゲームを制してみせた。冷静なプレイに加えて、ここぞというところで1枚しかないカードを引き込む神がかり的な強さを発揮。もはや坂野はブレーキの壊れたダンプカーであり、止められるものは誰もいないと思われた。それほどまでにノリに乗っており、勝ちっぷりであったのだ。

 その坂野を止めたのは、同じジェスカイ・コントロールを使う堀江 徹(日本)。

 

 コントロールコントロール。まさに坂野の土俵でもって、堀江は勝負を制してみせた。

 堀江は2枚の《》でもって盤石な足場を築くと、マナ差をいかして先に《》をプレイ。1枚目こそ《》によって阻まれるも、坂野の動いた隙にカウンターのバックアップでもって2枚目を通してゲームを決めた。

 堀江が大舞台を経験するのは初めてではない。これまでに二度アリーナ・チャンピオンシップへの出場経験がある。

 今大会では、普段は使用しないというコントロールを手にここまで勝ち上がってきた。しかも前述の通り、この大会を牽引してきた坂野へ初めて土をつけたプレイヤーでもある。

 勝敗をわける要素のひとつに「勢い」というものがあるとするならば、坂野を倒した堀江こそ、今、もっとも「勢い」のあるプレイヤーといえるだろう。

 ここまで15マッチこなしてきた堀江の横顔に浮かぶのは緊張と、疲労と、それでいて失わない冷静さ。

 決勝の席へつき、対戦相手である松元 慶一郎(茨城県)と顔を合わせると、

 「また、会いましたね」

 と、どちらとともなく挨拶をかわす。

 先ほどまで落ち着いていた空気が、途端に熱を帯びてくる。決勝の幕が上がる。

 
ゲーム1

 堀江がジェスカイ・コントロール、松元が4色コントロールとまさかのコントロール対決となった決勝戦。松本のマリガンで始まるも、比較的ゆっくりとしたゲーム展開であり、カード1枚分の差よりも土地が伸び続けるか否かが序盤の焦点となる。

 《》タップインの鏡うちで始まる。


 

 先に仕かけたのは松元。先手の利を生かして3ターン目にしてマナベースを大きく拡張する《》をプレイする。堀江のメインボードにはこのマナアーティファクトに触る手段は《》と《》しかない。デッキ公開性の恩恵を最大限享受したかたちだ。

 ならば堀江はカードアドバンテージへと舵を切る。《》をプレイし手札をため込む。

 

 そこからはコントロール特有のゆっくりとした時間が流れる。互いに《》を重ねて、土地と手札を確保し、必殺の一撃へと備える。

 だが、明確に違いがあった。松元は2枚の《》によって強固なマナベースを構築していたのだ。つまるところ両者の間には4マナの開きがあることになる。


 

 そこから松元は先に《》へと辿り着き、見事に通す。

 ショックインで18となっていた堀江のライフは《》により14。返すターン松元の《》+《》で果敢誘発し、戦闘を挟んで5まで落ち込んだ。

 

 堀江は自分のターンに入り、祈るようにカードを提示する。そこへ《》が撃ち込まれると、ゲームを畳んだ。

 堀江 0-1 松元

 コントロールコントロール。伸びた土地、潤沢な手札、積み重なったアドバンテージを巡る攻防は《》一閃で決まった。

 紹介が遅れたが、ゲーム1を制したのは4色コントロールを操る松元 慶一郎。

 

 競技コミュニティー「マスとん」で切磋琢磨しているプレイヤーだ。旧知の岡 洋介(東京都)をはじめ、プロツアー『久遠の終端』でトップ8の堀内 真(千葉県)、「チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド1」で優勝の小笠原 智明(東京都)と、今「勢い」のあるプレイヤーが集うコミュニティーである。

 松元の強さを支えるのはこれまで培った練習とコミュニティーの力、さらに「勢い」。

 松元が準決勝で対戦したのはプロツアー『サンダー・ジャンクション』の覇者井川 良彦。繰り出された脅威を冷静に対処し、ゲームを掌握する。再構築される場を丁寧にさばいていき《》のもたらすアドバンテージをいかしてライフを削りきってみせた。

 準決勝を制して松元が手に入れたのはプロツアーと世界選手権への権利のみならず、プロツアーチャンプを食ったことで「勢い」までも得た。

 サイドボードを経て、ゲームは《》を撃ち合うゲームから、カウンターによる牽制のしあい、ヘビーカウンター合戦となる。焦点はサイドボードにあるカウンターの枚数。アグロ主体のメタゲームにおいて、遅いデッキを見越したサイドボードを用意してきたのはどちらだろうか。

 静寂の中、互いのシャフル音だけがこだまする。

ゲーム2

 再びマリガンとなった松元は、2回目にとった手札もライブラリーへと返す。都合ダブルマリガンでのキープとなる。

 今度は《》タップインの鏡うちで始まる。

 順調に伸びていく土地、先に動いたのは堀江。《》で松元の《》の起動型能力を止める。

 

 ギリギリ土地は引き続けている松元だが、5枚目の土地が置けない。やむを得ず《》をプレイするも、誘発型能力にスタックして《》で割られてしまう。

 幸いこの切削で無事に5枚目の土地が落ちてセットランド。続いて《》をプレイするも、そこには堀江が《》を合わせる。

 返すターンに堀江は《》でカードをキャッチし、カードアドバンテージを独壇場とする。ここで見えた5枚は、

 《》、《》、《》、《》、《》


 

 《》を素早く手に取るも、《》と《》を天秤にかけて悩む。既定路線はゆったりとしたマナ基盤を整えてからのカードアドバンテージの積み重ね。強襲は、ない。ましてやカウンターの増えたサイドボード後では。

 ここで堀江は土台となる《》を対処できる《》を選択し、《》を見送る。《》を巡る攻防こそ、コントロールコントロールの焦点と見据えて。

 しかし、返すターンに松元は勝負に出る。ここで「勢い」良くプレイしたのは、まさかの《》!


 

 ダブルマリガンに加えて《》が打ち消されたこともあり、松元の手札は長期戦を耐えられるものではない。ならば少ない勝機を探り、割り切って《》を選択したのだ。

 互いの思考と思考が交差した結果、狙いがわずかにズレていく。

 

 カードアドバンテージを積み重ねるゆったりとしたゲームを想定していた堀江は完全に裏をかかれたかたちとなる。堀江の手に《》を打ち消せるカウンターは無い。やむなくプレイした《》にスタックして《》で3枚のカードを引かれてしまう。

 それでも堀江は松元がタップアウトのタイミングで《》から切削された《》をプレイし、手札を増やす。手札には《》もあったが、除去に費やす1ターンとカード2枚を天秤にかけて後者を選択した。

 松元は手札補充が完了し、《》を走らせる。《》で逆転への布石となる《》叩き割る。戦闘を経て堀江のライフは12まで落ち込む。

 

 堀江はセットランドするのみでターンを返し、攻撃前に《》をプレイ。松元は護法コストが支払われたところで、《》。

 松元は巧みにカウンターで除去をさばき、軽快に《》でクロックを刻む。5点、10点、15点と。

 気がつけば堀江の残ライフはわずか2。《》への対処手段を求めて、松元のターンエンドにタップアウトで《》をプレイする。もちろんキッカー込みで、だ。

 

 松元「手札は?」

 堀江「2枚」

 短いやりとりを経て松元は土地を倒す。《》。

 《》を打ち消されたことで、堀江に残されたチャンスは自分のターンのドローのみとなる。

 しかし、ここでドローしたのはまさかの《》。まだ、望みはある。

 堀江は《》をプレイし、松元は頷く。

 ”通った”。堀江はライブラリーへと手をかけ、切削する。

 ライブラリーから切削されたのは……土地。

 堀江は手札を公開することでもって、勝者を祝福した

 

 堀江 0-2 松元

ゲーム3

 対戦後、堀江は語る。1枚目の《》で《》か《》かで迷ったと。ゲームレンジが後ろに伸びる想定であり、だからこその《》であったが、それが裏目となってしまった、と。


 

 堀江「初日のスイスでも堀江さんと対戦して《》を巡る攻防となって、負けたんですよ。さっきの《》は《》にすべきだったかな」

 対戦を反芻しながら悔しさをにじませた。

 《》をとっていれば、《》から《》をプレイしたターンに《》をプレイしていれば……分岐は確かにはあった。

 かたや、松元はこう語る。突っ込まざるをえなかった、と。


 

 松元「直前にプレイした《》が打ち消されて、手札に何もなくなってしまって。ロングゲームでは勝ち目がないことは明白だったので、割り切って突っ込みました」

 追い込まれたが故に少ない勝機を《》でもって手繰り寄せた。

 情報をかみ砕き、己が状況と照らし合わせて最適解を求めた結果、お互いに同じのレンジのデッキを操りながら、実際のゲーム進行は想定と異なっていた。

 選択と意思決定により導かれた結果が最悪なものとなることもある。

 人はそれをミスと呼ぶかもしれない。

 その場の「勢い」と割り切った強気のプレイが最良の結果をもたらすこともある。

 人はそれを運と呼ぶかもしれない。

 しかし、それはフィーチャーマッチの観戦者やカメラ越しの配信を見ている視聴者、ジャッジなど神の視点だからわかること。

 対戦相手は目の前におり、自分の選択により戦況は刻一刻と変化し続けていく。そこに、神の視点による介在はない。

 堀江も松元も、互いの手の内を読み、想像し、自身にとって最良となる選択肢をとり続けた。

 結果として勝敗はつけど、どちらも素晴らしい読みとプレイであった。

 プロツアーを目標にマジックと付き合ってきた松元の願いは今日かなった。望外の優勝という最高のかたちで。

 優勝を手にした松元はトロフィーを大切そうに抱え、片時も離そうとしなかった。

 次の目標を聞かれて、松元は語る。

 松元「プロツアーが最終目標だったので、すぐに思いつかないですね。それこそ世界旅行を楽しみ、マジックを楽しみつくそうと思います」

 次なるステージでの活躍に期待を込めて、勝者へ祝福の言葉で締めくくろう。

 

 「チャンピオンズカップファイナル シーズン4ラウンド3」、優勝は松元 慶一郎!!

 おめでとう!!

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