2026年5月18日(月)
太田昌克の視点
『太田昌克の視点』
3つの安定、視界に覇権交代 自信の中国と自滅の米国
2026年5月15日(金)放送分より
今月14、15日に行われた米中首脳会談は、台湾、イラン、関税、レアアース、AIと課題満載だったが、米国産農産物やボーイング機の購入という、比較的目先の利益を優先させたトランプ大統領。これに対し、中国の長期的国益の増進を優先させた習近平国家主席。このコントラストが際立った会談だった。
中でも習氏が何度も口にした「安定stability」がキーワードで、念頭には①米中関係の安定、②台湾海峡の平和と安定、③米中の建設的な戦略的安定の「三つの安定」があるのではないかとみている。
まず1つ目は米中関係の安定。中国の国内経済に不安が残る中、来年は5年に1度の中国共産党大会がある。党総書記4期目を狙う習氏にはこの1年、まず「外敵」、米国との間で安定が必要だ。
それから2つ目は、「台湾海峡の平和と安定」という言葉を習氏が自ら使ったという点。もともとこの言葉は、台湾周辺で軍事演習を行う中国の「力による現状変更」をけん制する日本と米国が中国に向けて繰り返してきた決まり文句だ。これをむしろ逆手にとって習氏がこの言葉を使いだした。その心は、昨年末にトランプ政権が一旦決めた台湾への1兆7500億円の超大型の武器売却を阻止することにある。中国はかねて猛反発しており、14日の会談でも習氏は台湾問題の扱いを間違えると米中は「衝突、紛争」に至ると強烈な圧力を米国にかけ、台湾への軍事支援に釘を刺した格好だ。
3つ目は米中の建設的な戦略的安定。これも習氏が初めて口にした。そもそも戦略的安定とは核超大国の米ソ、米ロの関係性を規定する際に使われた専門用語だ。さらに習氏は、「トゥキディデスの罠」を克服しようとトランプ氏に呼びかけた。「トゥキディデスの罠」とは、台頭する新興国が覇権国の地位を脅かし緊張が高まると、不意に戦争が起こるリスクのことだ。これをわざわざ口にしたということは、習氏はおそらく、台頭する新興国を中国、イラン攻撃に踏み切り国力を消耗する覇権国を米国と見立てているのかもしれない。
他にも習氏は14日の晩餐会の乾杯で、「中華民族の偉大なる復興を実現することと、米国を再び偉大にすること(MAGA)は、手を携えて進めることができる」と強調した。つまり、支持率低下にあえぐトランプ氏に、MAGAを持ち出してエールを送る懐柔策に出た。
関税戦争とイラク戦争で自滅する米国、これに対し「時は我にあり」と自信を深める中国。「三つの安定」を掲げた習氏の視界の先にあるのは、米国から中国への覇権交代のシナリオではないか。
※このコーナーでは、BS11の報道番組で放送した内容を元に記事にして掲載しています。
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太田昌克の視点
番組キャスターで共同通信編集委員、ジャーナリストの太田昌克が取材したネタを中心に、独自視線で語るコーナー。毎月第2・第4金曜日放送中。
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