欧州で航空燃料不足が深刻化 ルフトハンザ2万便運休、日本発欧州便にも影響懸念

欧州で航空燃料の不足懸念が一気に高まり、減便や運休の動きが広がっています。 ドイツの大手航空会社ルフトハンザは、燃料価格高騰などを理由に2026年10月までに短距離路線を中心に2万便を運休すると発表しました。 背景には、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による中東産ジェット燃料の供給不安に加え、環境規制の強化で欧州域内の製油能力が縮小してきた構造問題があります。 国際航空運送協会(IATA)は4月中旬、欧州では早ければ5月末にも燃料不足を原因とする欠航が出始める可能性があると警告しており、夏の繁忙期に向けて危機感が高まっています。

ジェット燃料は原油を精製する過程で得られる製品のひとつで、ガソリンやディーゼル燃料と同様に需要構造の影響を受けます。 欧州ではディーゼル需要が根強い一方、電気自動車(EV)シフトの進展でガソリン需要が落ち込み、老朽化した製油所の閉鎖が相次いできました。 英エナジー・インスティチュートによると、欧州連合(EU)の石油精製能力は過去約40年で3割近く減少しており、域内だけでは航空燃料需要を賄いきれない状況です。 そのため欧州は中東などからの輸入に依存してきましたが、イラン情勢の緊迫化とホルムズ海峡の混乱を受け、供給リスクが一段と高まりました。

IATAの分析では、欧州の航空燃料在庫は平時で30日前後とされ、これが23日分を下回ると一部空港で燃料不足が顕在化し欠航が相次ぐ「危険水域」に入るとされています。 国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長も、欧州のジェット燃料備蓄は「おそらく6週間分程度しか残っていない」と述べ、供給途絶が続けばさらなる欠航は避けられないと警鐘を鳴らしています。 こうした事態を受け、欧州委員会は燃料不足を想定したガイドラインを策定し、空港スロットの運用や燃料過剰積み込み(アンチ・タンカリング)の制限、旅客権利の扱いなどを整理する方針を示しました。

一方、日本は原油調達こそ中東依存が続くものの、国内の製油能力を背景に航空燃料の多くを国内生産で賄っており、現時点で燃料そのものの供給は相対的に安定しています。 しかし日本発欧州路線では、現地空港での給油が前提となるケースが多く、欧州側の燃料逼迫は日本の航空会社にとっても無視できないリスクです。 燃料費は航空会社の運航コストの最大4分の1を占めるとされ、価格高騰と供給制約が重なれば、運賃上昇や減便などを通じて利用者にも影響が及ぶ可能性があります。

ANA・JALは給油経由地の検討進む インド経由などで欧州便維持を模索

欧州の燃料不足リスクが顕在化するなか、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)は、欧州路線の安定運航に向けた対策の検討を水面下で進めています。 東南アジア路線では出発地で往復分を積み込む「タンカリング」によって到着地での給油を避ける運用が可能ですが、距離が長い欧州便では安全面や重量制約の観点から同様の手法をそのまま適用することは難しいとされています。 このため、復路の日本行きでアジア上空を通過する際に、航空燃料輸出国として知られるインドの空港を給油拠点とする案など、経由地を活用した運航シミュレーションが検討されているとみられます。

欧州発の長距離路線は、訪日客の増加や中東経由便からのシフトも追い風に、日系社にとって収益性の高い「虎の子」の路線です。 IATAやIEAは今後数カ月の動向次第で、欧州発長距離便の運賃が一段と上昇する可能性も指摘しており、日本の航空各社としては、減便による機会損失を最小限に抑えつつ安全と採算の両立を図る難しい舵取りを迫られています。 ルフトハンザによる2万便運休の決定は、燃料市場の混乱が続くなかで欧州発の供給制約が長期化することを印象づけるものであり、日本発欧州便にも中長期的な影響が及ぶ可能性があります。

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