井元康一郎のクルマ進化論

井元 康一郎

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自動車ジャーナリスト

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2026.3.9(月)

スズキ「フロンクス」のフロントビュー。全長約4mのショートボディを伸びやかに見せる巧みなデザイン(筆者撮影)

(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)

「バレーノ」の雪辱を果たせるか? スズキがインド製フロンクスに託した執念

 インド市場を得意とするスズキが2024年10月に発売した小型クロスオーバー「フロンクス」。インドの合弁会社マルチ・スズキで生産された車両を日本に輸入する“インド車”である。

 スズキは2016年、日本メーカーとしては初めてインド車「バレーノ」を日本に導入したことがある。だが、販売は発売当初から不振で、本拠地である静岡県浜松市でもその姿を目にすることは稀というくらいの車となってしまった。そのため、フロンクスは日本における普通車ラインアップの強化だけでなく、インドモデル販売の再チャレンジという使命も負っている。

スズキが2016年に発売したインド製ハッチバック「バレーノ」(写真:共同通信社)

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 新商品発表会で鈴木俊宏社長は「日本と同等品質を達成できたと考えている。インド製ではなくスズキ製と思っていただいていいと思う」と、日本への適合性を高めるための仕様変更から品質管理まで、改革に相当の力を注いだことを強調した。

 だが、アジアンモデルを先進国で販売するのは自動車メーカーにとって生易しいものではない。スズキに限らず一見イケてるクルマをアジア向けに作っているケースは結構あり、日本でも売ればいいのにという声も少なくない。にもかかわらず日本に導入できないのは、「性能や品質を日本のお客さまの要求水準に合わせるのが難しい」(自動車メーカー関係者)からだという。

 果たしてフロンクスも船出は順風満帆ではなかった。一部の車体色で塗装不良が見つかり、その修正にかなりの時間を要した。昨年末にはオーストラリアの衝突安全試験で1つ星評価となり、試験中に後席シートベルトの製造不良が確認されるということがあった。

 とりわけ後者の問題はブランドの信頼性に関わる重大事。スズキは問題のある製造ロットをいち早く割り出すなどトレーサビリティの高さを見せたが、そもそも安全装置の製造不良はあってはならないことだ。世界の生産拠点の品質を均質化するのがいかに難しいかが浮き彫りになった事案と言える。

 それでもフロンクスの販売は好調だ。インドでは昨年11月末時点で、発売後32カ月で累計販売台数が40万台を突破するなど勢いは加速。インドの需要に対応するため日本への輸出は年間1万2000台と少なく設定していたが、完売状態が続いているという。

 筆者はそのフロンクスについて3300kmあまりロードテストを行い、経済性、快適性、走行性能、実用性などを多角的に検証してみた。

フロンクスのリアビュー。インドで販売されているサブコンパクトクラスの第2世代「バレーノ」をベースに作られている(筆者撮影)

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 まずはフロンクスの成り立ちについて簡単に触れておこう。全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mm、最低地上高170mmの小型クロスオーバー。エンジンは1.5リットル自然吸気にごく小さい能力の電気モーターを付加したパラレル型のマイルドハイブリッド。変速機は6速AT。

フロンクスの全高は旧式の立体駐車場にも入れられる1550mm(筆者撮影)

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 日本では輸入車となることもあってグレードを設けておらず、税込み価格254.1万円のFWD(前輪駆動)、同273.9万円のAWD(4輪駆動)の2つの仕様があるのみ。装備はオーディオ&カーナビも含め、最初から“全部入り”だ。ロードテスト車はFWDで、ETC2.0、ドライブレコーダーなどのディーラーオプションが追加されていた。

 試乗ルートは東京~鹿児島周遊で、総走行距離は3331.8km。西行きの往路は山陽、東行きの復路は山陰回りを選択。通行した道路の大まかな比率は市街地2、無料の新直轄自動車専用道を含む郊外路5、高速3。

中国自動車道の最西端、本州と九州を結ぶ関門橋のたもとにて(筆者撮影)

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