兵庫県立美術館(神戸市中央区)で、「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」が3月25日から開催されます。
戦後まもなく、前衛美術の領域で大きな注目を集めた女性美術家たち。その自由な実験が、十分に目を向けられてこなかったのは何故でしょうか。当時、女性の活躍を後押ししたのが、海外から流入した抽象芸術運動「アンフォルメル(非定形)」と、それに比例した批評言説でした。
しかし、次いで「アクション・ペインティング」が導入され、豪快さや力強さといった男性性に結びつきやすい「アクション」が評価の中心となるにつれて、結果的に多くの女性美術家の作品が見落とされてゆくことになりました。
本展では『アンチ・アクション』(中嶋泉[本展学術協力者]著、2019年)のジェンダー研究の観点を足がかりに、1950~60年代の日本の女性美術家による創作活動を見直します。「アクション」の時代に別のかたちで応答し、独自の抽象表現を展開した14名の作品およそ120点を紹介。半世紀以上を経ても驚くほど新鮮な「彼女たち」それぞれの挑戦に注目が集まります。
芥川(間所)紗織 《スフィンクス》1964年 東京国立近代美術館藏
アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦
会場:兵庫県立美術館 (神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
会期:2026年3月25日(水)~5月6日(水・振休)
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし5月4日(月・祝)は開館)
観覧料:
一般 1,600円、大学生 1,000円、70歳以上 800円
障害者手帳等をお持ちの方(一般)400円、(大学生)250円
※高校生以下 無料
※一般以外の料金でご利用される方は証明書の提示要
※障害者手帳等をお持ちの方1名につき、介助者1名無料
コレクション展は別途観覧料が必要
(本展とあわせて観覧される場合は割引有)
アクセス:
阪神「岩屋駅(兵庫県立美術館前)」から徒歩約8分
JR神戸線「灘駅」南口から徒歩約10分
阪急神戸線「王子公園駅」西口から徒歩約20分
詳細は、兵庫県立美術館公式サイトまで。
本展の見どころ
最新の研究に基づく歴史の見直し
近年、女性美術家の再評価が進むなか、本展では『アンチ・アクション―日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ、2019年、第42回サントリー学芸賞受賞/『増補改訂 アンチ・アクション―日本戦後絵画と女性の画家』筑摩書房、2025年)の著者・中嶋泉氏の学術協力を得て、ジェンダー研究の観点から日本の戦後美術史に新たな光を当てます。
時代背景に関する充実した情報
素材や制作方法に注目するアンフォルメルの隆盛は、ジェンダーの差異を問わない価値基準をもたらしました。しかし間もなく評価の中心はアクション・ペインティングへと移ります。本展では、いかにも英雄的で豪快な「アクション」という言葉に回収されない当時の多様な制作行為を「アンチ・アクション」として捉え直します。会場には、時代背景と本展のコンセプトを読み解く詳しい年表や、会場で集めるのが楽しい14種類の無料ガイドも用意されています。
毛利眞美《裸婦(B)》1957年 東京国立近代美術館蔵
圧巻の代表作から知られざる実験まで
「アンチ・アクション」=それぞれの制作行為の幅広さを示すため、50~60年代に抽象に取り組んだ美術家より、所属グループやスタイルの異なる14名の例が紹介されます。書籍『アンチ・アクション』で中心的に取り上げられた草間彌生や田中敦子らの圧巻の大作はもちろん、関係者の協力を得て、赤穴桂子、多田美波、宮脇愛子らの初期作品や未発表作品も展示されます。作家たちの知られざる創作活動と、新たな魅力に出会える貴重な機会です。
田中敦子《地獄門》1965-69年 国立国際美術館蔵 ©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association
赤穴桂子《スペースに於ける物体》1958年 個人蔵
多田美波《周波数37303055MC》1963年 多田美波研究所蔵 撮影:中川周
宮脇愛子《作品》1967年 撮影:中川周
個性的なそれぞれの表現に注目!
本展では、驚くほど個性的な制作手法や素材が使用された作品が展示されます。絵の具をスタンプのように捺したもの、アイロンで焼け跡を連続的につけたもの、アスファルトや竹、ピンポン玉などを用いた立体的な作品など、ぜひ間近で迫力を感じてみてはいかがでしょうか。
田部光子《作品》1962年 福岡市美術館蔵
田中田鶴子《無》1961年頃 奈良県立美術館蔵
福島秀子《ホワイトノイズ》 1959年 栃木県立美術館蔵
兵庫ゆかりの作家の大作に加え、「コレクション展 II」では同時代の関連作家たちも登場
「具体美術協会」の作家である、白髪富士子、田中敦子、山崎つる子の作品が登場します。同館にて同時期に開催される「コレクション展 II」(開催中~4月5日)では、当時活動をともにした金山明、白髪一雄、嶋本昭三、村上三郎、元永定正の作品も展示。明石市出身で、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館へ女性で初めて選ばれた江見絹子も見逃せません。
白髪富士子《作品No.1》1961年 高松市美術館蔵
山崎つる子 《作品》1964年 芦屋市立美術博物館蔵 © Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo
江見絹子 《空間の祝祭》1963年 個人蔵
充実の関連イベント
本展のコンセプトを提唱した中嶋泉氏による貴重な講演会や、学芸員・ボランティアによる解説会が目白押しです。作品の背景や制作の舞台裏を知ることで、鑑賞体験がより深く、刺激的なものに変わるはずです。
■記念講演会
出演:中嶋泉(大阪大学大学院人文学研究科准教授、本展学術協力者)
日時:2026年4月19日(日)14:00-15:30(開場13:30-)
会場:KOBELCO ミュージアムホール
定員:150名 ※先着順、要観覧券、芸術の館友の会優先座席あり
■KEN-Vi文化セミナー「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展関連企画荻野アンナ氏講演会「母、江見絹子を語る」(仮題)
出演:荻野アンナ(作家、神奈川近代文学館館長、慶應義塾大学名誉教授)
日時:2026年4月26日(日)14:00-15:00(開場13:30-)
会場:KOBELCOミュージアムホール
定員:150名
※先着順、要観覧券、「芸術の館友の会」会員優先座席あり
■特別上映会「草間彌生∞INFINITY」
日時:2026年3月27日(金) ①10:30 ②14:00(入替制)
会場:KOBELCOミュージアムホール
定員:各回250人
料金:1,000円(「芸術の館友の会」会員500円、「アンチ・アクション」展のチケット、半券提示で800円)
主催: 兵庫県立美術館アートフュージョン実行委員会、兵庫県映画センター
■学芸員によるアフタヌーン・レクチャー
日時:会期中 毎週土曜日 16:00-16:30
会場:レクチャールーム
定員:80名 ※先着順
■発見10代語り場:「アートって何?!」
日時:2026年4月29日(水・祝)10:30-12:00
会場:レクチャールーム、展示室
対象:中学生、高校生
定員:20名
※要事前申込 詳細はHPでお知らせします。
■Twilight on the Deck
「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展関連企画
「彼女たち、『具体』の場合」
出演:山本淳夫(横尾忠則現代美術館館長補佐)
日時:2026年4月29日(水・祝)16:00-17:00
会場:山のデッキ(荒天時はレクチャールーム)
定員:40名
※先着順
■ミュージアム・ボランティアによる解説会
日時:会期中 毎週日曜日 11:00-11:15
会場:レクチャールーム
定員:80名 ※先着順
※その他のイベントについては、詳細が決まり次第、兵庫県立美術館ウェブサイト等で告知されます。
先行する巡回館(豊田市美術館、東京国立近代美術館)で注目を集め、2025年の話題展のひとつとなった「アンチ・アクション」がいよいよ関西に上陸します。本展では、中嶋泉氏の研究視点に基づき、戦後の日本美術界において、身体や素材と向き合い続けた14名の美術家たちの挑戦を大胆にクローズアップ。館蔵コレクションと呼応する展示構成など、兵庫県美ならでは展示の工夫も見逃せません。ぜひ会場で、今もなお新鮮な驚きに満ちた彼女たちの圧倒的なエネルギーに触れてみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)
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