第一生命経済研レポート
2026.02.19
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トランプ関税
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~インドと米国が急展開で通商合意、トランプ関税は18%に大幅低下へ~』(2026年3月号)
西濵 徹
目次
インドのモディ首相と米国のトランプ大統領は、2月2日に電話会談を行い、直後にトランプ氏は自身のSNSに、米国がインドからの輸入品に課す相互関税の税率を25%から18%に引き下げる旨を明らかにした。米国はインドがウクライナ戦争以降にロシア産原油の輸入を拡大させたことを理由に、25%の2次関税を上乗せする制裁に動いたが、これも撤廃される。一連の措置により、米国のインドに対する関税は50%から18%に大幅に引き下げられる。
その見返りに、インドはロシア産原油の輸入を停止し、米国やベネズエラからの原油輸入を拡大させる。さらに、インドは米国に対する関税や非関税障壁を低下させるほか、5,000億ドルを上回る米国産品の輸入を拡大させる。モディ氏も自身のSNSで、米国がインドからの輸入品への関税を18%に引き下げることを歓迎するとし、両国のパートナーシップの強化に向けて緊密な連携を図るとの考えを明らかにした。直前には米国のベッセント財務長官のほか、トランプ氏もインドがベネズエラ産原油の輸入によりロシア産原油の輸入を一部代替する旨で合意したと明らかにし、関係改善の兆しをうかがわせる動きがみられた。インドとEU(欧州連合)は1月末に自由貿易協定(FTA)の締結交渉が最終合意に至るなど、いわゆる「米国外し」とも呼べる動きが広がりをみせたことも、米国の対応を後押しした可能性がある。


トランプ氏は一連の措置を即時発効するとしたが、具体的な時期などは不明である。さらに、インドによる関税や非関税障壁などの削減の行方も不明なうえ、米国製品の輸入拡大の詳細も明らかではない。インドの平均関税率は2024年時点で16.2%、農産品には36.7%と高い。過去にUSTR(米通商代表部)はインドの非関税障壁の高さを度々指摘しており、インド側の対応も不透明である。また、インドの米国からの輸入額は、2025年時点で501億ドルにとどまり、輸入拡大の実現性にも疑問が残る。よって、両国の詰めの協議を経た後には、過去にもしばしばみられたように、トランプ氏がTALO(強硬発言)に訴えるリスクは残ると考えられる。
金融市場では、インドとEUのFTAを巡る合意、米国との合意を好感すると期待される。通貨ルピーの対ドル相場は最安値を更新するとともに、上値の重い展開が続いてきたが、大きく変化する可能性はある。一方、米国との合意遵守を目的にインドが関税引き下げに動けば、税収が減少し、国債発行など金融市場からの資金調達への依存を強めることも考えられる。また、インドによる輸入拡大は、貿易赤字の拡大を通じて対外収支を悪化させるなど、金融市場からの懸念材料となるリスクもある。短期的な動向のみならず、米国との合意による中長期的なマクロ経済への影響を注視したうえで、慎重に判断を下す必要性は高いと考えられる。


西濵 徹
