馬のひづめを整え、蹄鉄をつける職人「装蹄師」。
馬を愛し、馬と生きる。
県内で、ただ一人の装蹄師を取材しました。
◆ 県内でただ一人 “馬の靴屋さん”
諫早市の馬事公園にある、乗馬クラブ。
広い馬場を気持ちよさそうに馬が駆け回ります。
その軽快な足取りは “ある職人” の技術によって守られています。
(作業の音)
「カン!カン!カン!…」
熱く熱せられた馬の蹄鉄に槌を振り下ろすのは、龍田 太朗さん(41)。
諫早市出身、県内でただ一人の「装蹄師」です。
(龍田 太朗さん)
「装蹄師という仕事は、簡単に言えば “馬の靴屋さん” 」
装蹄は全て手作業で行われます。
馬のひづめは「人間の爪」にあたり、放っておくと伸び過ぎたり、すり減ったりします。
馬がケガをしないように伸びたひづめを削って整え、保護するための蹄鉄を付け替える技術を持っているのが装蹄師。
龍田さんは、まさに “馬の足を守るプロ” なのです。
(龍田 太朗さん)
「一本一本、ひづめのバランスをしっかり作ってあげて、バランスよく足を運べるように整えてあげるイメージです」
すり減った古い蹄鉄を外して専用の道具でひづめを整えたら、馬の足に合うように新しい蹄鉄を熱します。
(龍田 太朗さん)
「蹄鉄を平らにして、ひづめと蹄鉄の密着を高めるために焼き付け作業をする」
ひづめと蹄鉄が隙間なく密着するように、ミリ単位で微調整を繰り返します。
完全にフィットすることを確かめて専用の釘で固定すると、作業は終了。
4つのひづめを全て交換すると、1時間ほどかかるそうです。
(龍田 太朗さん)
「ひづめは、馬1頭1頭でも違うし、1頭で4本とも全く違う形というのが多い。足が痛くて走れなかった馬たちが、装蹄によって また走れる姿を見ると、非常にやりがいを感じる」
◆馬と出会い「国体出場」そして装蹄師へ
龍田さんが馬に夢中になったきっかけは、子どもの頃の乗馬体験でした。
(龍田 太朗さん)
「小学校3年の時なんですが、(馬に)またがった瞬間に目線が高くて、見たことがない景色だったのでそこでとりこになったと思う」
県内で唯一、馬術部がある諫早農業高校に進学し、1年生から当時の国体に出場。
栃木県の専門施設で装蹄師の資格を取得した後、宮内庁で馬車馬の世話や管理に携わり、24歳の時に地元の諫早市へUターンしました。
(龍田 太朗さん)
「馬にとって一番支えてあげられる職業だと思ったので、この仕事を選びました。長崎に装蹄師が一人もいない状況があったし、長崎に帰ることにした」
現在 龍田さんは装蹄師として、九州各地の乗馬クラブを回る多忙な日々。
自身が運営する「諫早乗馬クラブ」にも、約30頭の馬がいます。
スタッフとともに世話を行っているのが、妻の佳野さんです。
(妻 佳野さん)
「(性格は)穏やかです。(馬をなでて)この子は全身ゴシゴシされるのが好きなので、顔も触られるのが好き。お休み明けなので、結構 元気だと思います。お利口さんに運動してくれると思います」
佳野さんも、馬術競技の経験者。
厩舎の清掃からエサやり、運動など、馬たちの日々の体調管理を行っています。
(龍田 太朗さん)
「乗ってみてどう?」
(妻 佳野さん)
「国体ぶりの “障害飛越” だったから、(馬は)オフモードが強かった。相変わらずおりこうさん」
(龍田 太朗さん)
「ちょっとやせた方がいいかな」
馬の気持ちを理解し、多忙な龍田さんをサポートする心強い存在です。
(妻 佳野さん)
「基本的に夫は平日はいないと思っているので、私が出来るのは馬のこと。装蹄に関しては私は何もできないので、クラブをしっかり守るのが私の使命と思っている」
(龍田 太朗さん)
「感謝しかないです」
◆夢は馬術競技全国大会で1位
そして今年、龍田さんの描く夢は…
“馬術競技の現役選手”としての飛躍です。
(龍田 太朗さん)
「全日本や国スポという全国大会で まだ優勝した経験がないので、全国大会で1位になるのが目標。
人と馬とで、お互いを尊重し合いながら、お互いのいいところを引き出せるのが(馬術競技の)醍醐味だと思う」
馬と人が「心をひとつ」に。
午(うま)年の今年こそ、全国制覇をと意気込んでいます。
龍田さんにとって「馬」とは…。
(龍田 太朗さん)
「馬は僕からしたら、本当にパートナー。友だちみたいな存在です。
(装蹄師は)馬を支えていく重要な職だと思うので、興味をもって自分もなりたいという人が、一人でも増えてくれたら非常にうれしい」
馬に魅せられ、馬をこよなく愛する県内唯一の装蹄師 龍田 太朗さん。
これからも馬とともに、人生を歩んでいきます。
