排ガス問題と燃費問題を同時に解決できるBEV

そもそも、今日にいたる世界的な環境規制のはじまりは、1990年代初頭にさかのぼる。国連が地球の気候変動を受けて枠組みをつくり、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を抑えるよう、取り組みを始めたことに端を発しているのだ。

これ以前を振り返ると、1980年代までは自動車の環境性能といえば、それはほぼ排ガス性能とイコールだった。窒素酸化物による光化学スモッグの発生や、粒子状物質が引き起こす人の呼吸器障害などが社会問題となっていたからだ。これが1990年代後半になると、CO2排出量≒燃費も重要な問題となってくる。1997年にCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)が開かれて京都議定書が発効され、地球温暖化、CO2排出削減などへの関心が高まり始めたのだ。日本では同年に世界初の量産HEV「トヨタ・プリウス」が登場。2000年代に入ると、カタログに記載される燃費性能は販売を左右するほどの関心事となり、今では国内の乗用車販売の半数以上がHEVという状況になっている。

当時の様子を俯瞰(ふかん)すると、欧州ではクリーンディーゼル車の普及が目覚ましかった。排ガスに関してはやや不利なディーゼルではあるが、燃費はよかったからだ。対して北米は、燃費にはあまり頓着しないが、そのかわりに排ガス規制は厳しい。そして日本は、燃費と排ガスの両方を追うという構図だった。背景には、欧州では地球温暖化への問題意識が強いいっぽうで、日本と北米では光化学スモッグなどの公害が問題となっていたこと、加えて日本はエネルギー自給率が低く、省エネも重要な課題だったことなどがあった。

このように、各国(各地域)は「排ガスを浄化し、エネルギー効率(燃費)を高めていくのが理想である」という共通認識を持ちながらも、おのおのが抱えるエネルギーや経済、安全保障といった事情により、同じ山頂を違う登山道から登っている状況だった。そうしたなかにあって、各問題を一挙に解決できる手段として、BEVが注目されるようになったのは自然なことだろう。


自働車のCO2削減、燃費改善に関しては、長らく低燃費なディーゼルエンジンに頼ってきた欧州の自動車メーカーだが、2015年の「ディーゼルゲート事件」を受けて路線を変更。多くのメーカーが、一気にBEV化を推し進める姿勢を見せていた。


自働車のCO2削減、燃費改善に関しては、長らく低燃費なディーゼルエンジンに頼ってきた欧州の自動車メーカーだが、2015年の「ディーゼルゲート事件」を受けて路線を変更。多くのメーカーが、一気にBEV化を推し進める姿勢を見せていた。拡大

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