
夏に11年ぶりの復活を果たしたアジカン主催のフェス『NANO-MUGEN FES.2025』。その延長上のような形で盟友であるアイルランドのロックバンドASHとのスプリットツアーとして5公演が開催された。初日の福岡公演はサポートアクトとしてリーガルリリーが出演。結果的に3時間半に及ぶ長尺のフェスティバルとなった。以下、感想。
18:30- リーガルリリー
前説でアジカンが4人を登場し、ナノムゲンみがしっかりと立ち込める中、ゴッチの呼び込みで登場したリーガルリリー。「1977」のベースイントロからじっくりと立ち上げ、キレキレでいてヘヴィな「60W」へと続くアッパーな幕開け。個人的に4年ぶりの鑑賞で、その間に名ドラマーゆきやまの脱退を経ており、そこも気になっていたのだがサポートドラマーのDesire Nealyが素晴らしい。正確なのに凶暴、このバンドに相応しすぎる。
ヒリヒリとしたテンションを維持したまま、たかはしほのか(Vo/Gt)の弾き語りで始まった「ムーンライトリバース」が切々と響き渡る。美しく孤高さを際立たせる轟音。シューゲイザー論争なんてどうでもよくなる、彼女たちにしか出せない音の壁だ。そして一転し、ポップサイドの結晶たる「キラキラの灰」が高揚をもたらしていく。わずか4曲で様々なモードを凝縮し、叩きつける迫力。じっくりと受け止めたくなる激しさがある。
『AKG TRIBUTE』の参加曲「ムスタング」のカバーも披露。長らく焦がれたこの曲が完璧な状況下で鳴る感動。そして「ムスタング」に感化され、自身のギターの名を題につけた代表曲「リッケンバッカー」へ繋ぐ至高の流れ。音楽をやることの意義を込めた曲がアジカン由来の題である必然性を感じ、普段以上にグッとくる。下の世代のもたらされたアジカンの大きな影響と、独自のロックを磨き続けるリーガルリリーの現在地。その交差点として福岡が選ばれた興奮に満ちた30分だった。
《setlist》
1.1997
2.60W
3.ムーンライトリバース
4.キラキラの灰
-MC-
5.ムスタング(ASIAN KUNG-FU GENERATIONカバー)
6.リッケンバッカー
19:25- ASH
私、欧州のバンドを観るのは齢31にして初のこと。事前に聴いた最新アルバムの印象はとにかく曲が多彩!これは良さげだと思っていたところ、想像を遥かに超える楽しさだった。ティム・ウィーラー(Vo/Gt)はフライングVを掲げてタッピングで長尺ギターソロをかまし、マーク・ハミルトン(Ba)はスピッツ田村氏ばりに上下左右に伸びながら低音を支え、派手な存在感を放つリック・マックマーレイ(Dr)は姿勢良く堅実に土台を作る。
パフォーマンスの楽しさは勿論のこと、サウンドもとかく相性が良い。ゴッチがバンドに目覚めたきっかけの1組で、アジカンと長きに渡り交流がある時点でお察しの通り、パワーポップ主体の気持ち良い展開が続く爆音のロックなんて本能的に好きに決まってる。海外に行ってメシの味が合いまくる喜びってこんな感じだろうか。ハイファイなシンセが煌めく、最新作のレトロ&スペイシーなモードもとても可愛くてツボだった。
終盤は20年ほど前に「アジカンLOCKS!」で聴いた覚えのある「Kung Fu」が記憶をくすぐってきた。あったな、この効果音みたいな始まり方。イントロが「ワールドアパート」ぽい、とか思った。思い出に焼き付くほどのキャッチーさ、ASHの魅力が詰まっている。ラストはアジカンから喜多建介がステージインしての「Burn Baby Burn」。大熱狂の末、50分のステージを終えた。海を越えた繋がりがこんなにも幸福な時間をくれた。フェスの高揚に国境も言葉も関係ないという確信を得た。
《setlist》
1.Zarathustra
2.Fun People
3.Ad Astra
4.A Life Less Ordinary
5.Orpheus
6.Race The Night
7.Which One Do You Want?
8.Shining Light
9.Jump in the Line
10.Kung Fu
11.Girl From Mars
12.Burn Baby Burn with 喜多建介 from ASIAN KUNG-FU GENERATION
20:45- ASIAN KUNG-FU GENERATION
ゴッチのギタートラブルで遅れて始まったアジカン。George(Mop Of Head)とアチコ(Ropes)を招いた6人編成、1曲目はかなり意外な「君の街まで」!巡業ソングとして、心地よい幕開けだった。しかしここから更に予想外の選曲が。「ブラックアウト」は20年前のナノムゲン関連曲ゆえに演奏され得るとは思いつつ、2曲目に来るタイプではないと思っていたので驚き。個人的にはアジカンと出会いの曲のため大抜擢じゃないかと誇らしくなった。
「サイレン」で緊迫感たっぷりに序盤を終え、どういうモードか予想のつかぬままMCを挟んで「ライフ イズ ビューティフル」へ。今年のうちに聴いておきたかったので嬉しい!これが出た2月からは想像もできないほど、社会も明確に混迷を極め始めている中、ギリギリの希望をじっくりと届けるこの曲はタフに響く。喪失感を描く前2曲、ゴッチの語った”この瞬間を共有すること”への想いを踏まえて、眩いエネルギーを放っていた。
お馴染みの「ソラニン」はイントロで歓声こそ起きてなかったが(ごめんなさい)、この日は特にキレキレ。最後の絶唱は恐らくデイヴ・グロールが乗り移っていた。そして次に続くのがナノムゲン2008のテーマ「夏蝉」で仰天する。定番曲とレア曲の配分が妙だ。この曲に至っては20年のファン歴で初めてライブで観る。あまり日の目をみない曲だが、最後のコーラスは圧巻。この曲がライブ定番になった世界線も、思い浮かべられる!
「出町柳パラレルユニバース」もすっかりアンセム感を極め、祝祭ムードが立ち込める中、レア曲の披露を予告するMCが。そして『ソルファ』(2004)から「24時」という大サプライズ。2016-2017年の20周年ツアー以来9年ぶりの演奏。多忙を極めた時期の楽曲で、歌詞の内容も焦燥感に溢れているが現在のグルーヴではどっしりとしたアップチューンとしてリブートされていた。この曲も全然、定番曲になってた未来、あったでしょう。
まばらなノイズと繊細なアルペジオが重なりながら、「マーチングバンド」という予想を裏切って「ノーネーム」が鳴る衝撃。4年前が最後の披露ながら個人的には2012年の『ランドマーク』ツアー以来13年ぶり。長かった。この曲はアチコの神秘的なコーラスによって大化けしていた。ひたひたに感傷的になった後で聞き覚えのあるご機嫌な四つ打ちが。「君という花」だ。『君繋ファイブエム』(2003)を立て続ける、祭りでしかない。
「君という花」の演奏中、ASHのティムのお子さんらしきチビちゃんがステージ袖でひょこっと現れるなど可愛すぎる時間もあるなど、全体的にハッピーさが凄い。ラストの「遥か彼方」の全員シンガロング状態もなんだか異様なテンションだったように思う。横浜で開催されるNANO-MUGEN FES.にはなかなか行きづらい身として、キャラバンのようにお祭りを地方都市にまで運んでくれることへの感謝が止まらない。良い夜であった。
アンコールではASH「Starcrossed」のカバーをティムと演奏し、更に特別さをもたらしていく。自分のルーツたるバンドのメンバーと、軽やかにコラボレーションしているこの状況。感無量、とゴッチは述べていたがそれを現実化させてきた歴史の積み重ねを思い、畏怖の念すら感じた。海外のバンドとスプリットツアーを行うことも、道なき道の先にあった未来だ。

この日はセトリの異様さもあってか、別の世界線に想いを馳せる時間も多かった。しかし紛れもなく、この世界線の人生がアジカンとここまで長い付き合いになったのだ。アンコールラストを飾った最新曲「MAKUAKE」の弾けるようなポップさの中にも滲む、生きることの悲哀と迫り来る終わり。この日もゴッチは”あと10年”と言っていた。確かに、少し切ない。しかし有限を告げられているからこそ大切にできることもある。来年は遂に30周年。どんな風に、祝うことができるだろう。

《setlist》
1.君の街まで
2.ブラックアウト
3.サイレン
-MC-
4.ライフ イズ ビューティフル
5.ソラニン
6.夏蝉
7.出町柳パラレルユニバース
-MC-
8.24時
9.ノーネーム
10.君という花
11.遥か彼方
-encore-
12.Starcrossed with ティム・ウィーラー(ASH)
13.MAKUAKE
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