宇宙服を着ずに車内で約1ヶ月間生活することができる有人与圧ローバー。近い将来、月面探査で活躍する予定(実物大模型)

宇宙服を着ずに車内で約1ヶ月間生活することができる有人与圧ローバー。近い将来、月面探査で活躍する予定(実物大模型)

「アポロ計画」からおよそ半世紀。人類の宇宙開発は驚異的なスピードで進んでいる。ロケットをはじめ人工衛星や探査機などの技術革新も目覚ましく、再び月に宇宙飛行士が降り立つことも、火星の有人探査を行うことも、数年のうちに現実になろうとしているとのこと。さらに、その先に広がる「深宇宙」の謎にも、人々は挑み続けている。最先端の宇宙開発の“今”を、特別展「深宇宙展」で体感してみよう。

チョウカンヌ

日本のロケット開発の最前線を知る

H3ロケット最先端部のフェアリング(実物大模型)

H3ロケット最先端部のフェアリング(実物大模型)

 地球から200万㎞以上先の宇宙のことを「深宇宙」と呼ぶ。と言われても、ピンとくる人は少ないだろう。地球から月までは約38万㎞、地球から火星までは、一番近いときで約5600万キロなので、月と火星の間から先が深宇宙になる。今回の展覧会は、これまでの宇宙開発の歴史から始まり、最新の月探査の状況、火星圏探査の現在と未来、そして深宇宙への挑戦という流れで構成されている。

前澤友作さんが宇宙からの帰還時に搭乗したソユーズ宇宙船帰還モジュール(実機)

前澤友作さんが宇宙からの帰還時に搭乗したソユーズ宇宙船帰還モジュール(実機)

 入り口で出迎えてくれるのはH3ロケットの最先端部(フェアリング)の実物大模型だ。H3ロケットとは、約10年の年月をかけて開発された日本の最新基幹ロケット。フェアリングには探査機や人工衛星が積まれ宇宙へ飛び出していくという。丸みを帯びたフォルムはシンプルで美しい。

「さわれる本物のロケット部品」のコーナーも楽しい。実際のロケット部品に触ったり、持ち上げたりすることができる。さっそく試してみると、「あ、軽い!」。実はロケットの重さは約9割が燃料と酸化剤で、機体の重さは1割しかないそう。いかに軽くて強い素材を開発できるかが永遠のテーマなのだ。ほかにも、ロケット外部に実際に使われたカバーなどにも触ることができて、ロケットをぐっと身近に感じることができる。

(上)天井に展示された巨大なソユーズ宇宙船のパラシュート(下)前澤友作さんが実際に着用した宇宙服ソコルスーツ

(上)天井に展示された巨大なソユーズ宇宙船のパラシュート(下)前澤友作さんが実際に着用した宇宙服ソコルスーツ

 宇宙開発は、今や国の機関のみならず、民間企業も参入し活況を呈している。その象徴といえば、やはり2021年の前澤友作氏の宇宙飛行だろう。日本の民間人初の国際宇宙ステーション滞在は大いに話題になった。今回は、なんと前澤氏が帰還時に乗っていたソユーズ宇宙船のモジュールの実機が特別展示されている。

 黒光りするモジュールは直径2166ミリ、高さ2285ミリと意外に小さい。内部には操作パネルや計器類が配置され、狭いながらも3人が搭乗できる。「こんなに狭いんだ」と、思わず声がもれる。でも、その狭さが気にならないほど、宇宙への旅は心躍る時間だったのだろう。

 機体に比して巨大なのがパラシュート。地球帰還のとき、大気圏内に突入し高度約8キロの地点で開き、安全な着陸を支えてくれたものだ。ほかに前澤氏が着用した宇宙服も展示され、宇宙は本当に民間人が訪れられる場所になったのだなと感慨深くなる。

人類が月や火星に降り立ち、探査する日が、もうじきやってくる!

迫力満点&没入感たっぷりの「火星ツアー」映像展示

迫力満点&没入感たっぷりの「火星ツアー」映像展示

 アルテミス計画をご存じだろうか。米国主導の国際的宇宙探査計画で、アポロ計画以来の月面有人着陸を目指し、各国が技術開発に参加している。日本もさまざまな技術提供をしているなか、注目なのが有人月面探査車「有人与圧ローバー」。何かというと、宇宙服を脱いだ状態で活動できる探査車のこと。ローバー内は与圧・温度管理がされていて、1年のうち約1か月間、車内でふつうに食事や睡眠などもとれて、快適な環境で月面探査作業に取り組めるのだ。その実物大模型が今回、世界で初めて公開された。月面ではゴムは使えないため金属製のタイヤ(外径850ミリ、幅220ミリ)を装着し、ロボットのような頑丈な車体を支えている。このローバーが縦横無尽に月面を走る日が今から楽しみだ。

はやぶさが持ち帰った小惑星「イトカワ」の粒子(実物)を顕微鏡で見ることができる

はやぶさが持ち帰った小惑星「イトカワ」の粒子(実物)を顕微鏡で見ることができる

 月面着陸同様、開発が進んでいるのが火星探査だ。火星は地球と似た環境をもっている可能性がある惑星で、多くの探査機・探査車が送り込まれている。その成果を垣間見れるのが「火星ツアー」の映像展示だ。これまでにNASAなどの探査機から送られてきたリアルなデータから作った火星の絶景映像が大スクリーンに描き出されるのだ。火星は全体的に赤いレゴリスと呼ばれる層に覆われており、広大な大地から山、くぼ地など茫漠とした風景が延々と続いていく。地球の砂漠にも似た映像で、どこかに生物が潜んでいるのではと、思わず目を凝らしたくなる。没入感が半端なく、ひととき、火星人気分を味わえる。

 火星も含めた深宇宙の領域でも、人類の宇宙探査は確実に進んでいる。記憶に新しいのは小惑星探査機「はやぶさ」と「はやぶさ2」だ。2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は数々のトラブルを乗り越えて、7年後、小惑星イトカワのサンプルを世界で初めて地球に持ち帰り、大きな感動を呼んだ。そして4年後、2014年には「はやぶさ2」が打ち上げられ、小惑星リュウグウのサンプルをゲット。この貴重なリターンサンプルを顕微鏡で観察することができるのも、本展の大きな魅力だ。サンプルの近くにはイトカワ(1/1000)とリュウグウ(1/3000)の模型も展示されているので、こちらも要チェック。

「はやぶさ」「はやぶさ2」で培われた知見を活かし、現在進められているミッションが世界初の火星衛星のサンプルリターン計画。そこで活躍を期待されているのがMMX探査機だ。2026年度に打ち上げが予定され、2031年に地球に帰還しサンプルを持ち帰れれば世界初のミッションとなる。本展では、このMMX探査機の1/2の模型も展示されている。この計画が成功すれば、火星圏の進化の過程などが明らかになるという。

人類の夢、「深宇宙」へのあくなき挑戦

 月や火星への挑戦が確実に進んでいる今、人類が強い関心を抱いているのは、その先に広がる深宇宙。どこまで広がっているのか、宇宙に果てはあるのか、生命体のいる惑星はどこかに存在しているのか。そうした謎を解明するべく、探査機が打ち上げられるほか、地上の望遠鏡群も進化を遂げ、未知の宇宙への道を切り拓いている。

ブラックホール ©EHT Collaboration 

ブラックホール ©EHT Collaboration 

 展覧会最後を飾っているのは、そんな科学者たちの叡智の結集ともいえるブラックホールの映像だ。アインシュタイン以降、100年にわたる研究の結果、2019年、「イベント・ホライズン・テレスコープ」計画がM87銀河の中心にある超巨大ブラックホールの撮影に成功したのだ。ブラックホール自体は物質も電磁波も飲み込むため真っ黒なのだが、その周囲にはブラックホールに飲み込まれようとする物質がある。物質は電磁波を放ち、一部がブラックホールの重力を脱することができる。こうして地球に届いた電波を画像化したのが「ブラックホールの画像」だ。

 燃えるようなオレンジの輪の中心にぽっかりと空いた真っ黒な穴は、なんとも不気味だが、同時に神秘的でもある。

 広大な宇宙からすれば、人類の宇宙開発は、今、やっと端緒についたばかりかもしれない。だが、謎解明に全力で立ち向かう多くの人の努力は、確実に実を結んでいることが本展でよくわかった。すでに進行しているアルテミス計画で、再び人類が月を歩く姿は果たしてみられるのか。あるいは、火星圏の探査機によって、貴重なサンプルはもたらせるのだろうか。想像するだけで今からワクワクしてくる。

チョウカンヌ

特別展「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか」 To the Moon and Beyond
7/12(土)-9/28(日) 日本科学未来館 東京都江東区青海2-3-6
10:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:7/15(火)、9/2(火)、9/9(火)、9/16(火)
観覧料:大人(19歳以上)2,200円、18歳以下(中学生以上)1,400円、小学生以下(4歳以上)700円
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.deep-space.jp/

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