観光立国を掲げる日本において、真に持続可能な成長を実現するには、地域固有の資源をいかに魅力的に“世界と接続”できるかが鍵となる。
その具体的な答えの一つとして、沖縄県本島北部・やんばるの森付近に誕生する新テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」がついに2025年7月25日にグランドオープンする。
この構想を手がけたのは、USJのV字回復を実現したマーケター・森岡毅氏。あえて海ではなく山にフォーカスし、「ジャングル×理想郷(シャングリラ)」というネーミングに託したのは、自然と共生しながらも世界水準の“興奮体験”を創出するという強い意志だ。
環境への配慮、観光教育との連携、地域経済への還元、そして将来的なグローバル展開──
JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)には、単なるエンタメを超えた多層的な戦略と覚悟が込められている。この場所から、日本の観光と地域開発の未来がどのように動き出すのか。
まさしく沖縄でしか生まれなかった企画
記者:
まず、「JUNGLIA(ジャングリア)」というブランド名に「沖縄」だからこその意図はありますか?
森岡さん:
はい、まさにその通りです。JUNGLIA OKINAWAというアイデアに行き着いたのは、この場所が沖縄だったからです。沖縄のことをまだよく知らない人にとっても魅力的に伝わるよう、その良さをどうブランド化するかが非常に重要でした。
沖縄の魅力は、一度訪れれば、その素晴らしい文化や人々に触れることで誰もが実感できます。リピーターが多いのもそのためです。しかし、その「行ってみよう」と思わせる最初のきっかけを、言葉だけで伝えるのは非常に難しい。
そこで、南国リゾートを求めている人々に対し、視覚的に、そして一言で「面白そう、行ってみたい」と思わせるものは何かを考えました。このパークが建設される「やんばる」の素晴らしい大森林、この特徴を最大限に活かす必要がありました。
ジャングルのダイナミックなイメージと、理想郷を意味する「シャングリラ」の語感を掛け合わせることで、「リッチな興奮体験ができる場所」という期待感を直感的に伝えることができる。それが「ジャングリア」という名前に込めた狙いです。このパークは、まさしく沖縄でしか生まれなかった企画なのです。
沖縄北部の魅力の根源は唯一無二の自然
記者:
世界自然遺産であるやんばるの森に隣接するということで、自然環境への配慮についてもお聞かせください。
森岡さん:
それは非常に大切な点です。「大切な自然を切り開いてパークを作るのか」というご心配の声をいただきますが、これは大きな誤解です。私たちは、世界遺産に指定されているエリアを切り開いているわけでは全くありません。パークの敷地はもともとゴルフ場だった場所です。
私たちは、開発前よりも約3万〜4万本多くの木を植えています。また、首里城の再建に必要な木材をこの土地で育て、保全しています。工事においても、できるだけ木を生かし、赤土が外部に流出しないよう細心の注意を払うなど、環境に徹底的に配慮した工法を採用しています。沖縄北部の魅力の根源は、この唯一無二の自然です。これを守り、より良くしていく開発でなければ、未来はありません。
沖縄が「観光立県」として輝き続けるため
記者:
パークの成功には人材も重要です。高度観光人材の確保と育成についてはどのようにお考えですか?
森岡さん:
ハードよりも人、つまりソフトが最も重要だと考えています。特に、地域の魅力を発見し、観光価値に転換できる「観光マーケティング」の発想を持つ人材が圧倒的に不足しています。その育成に一番必要なのは「実践の場」です。
そこで私たちは、名桜大学様と連携協定を結びました。大学で私たちのノウハウを学び、JUNGLIAで実践的な実習を積むことができる。これにより、「日本で一番観光を学びたいなら沖縄へ行け」という未来を作りたい。若い学生が沖縄に集まり、育ち、沖縄の観光産業をさらに高いレベルへ引き上げていく。このサイクルこそが、沖縄が「観光立県」として輝き続けるための鍵だと信じています。教育への投資が、実は最も大きな意味を持つ布石なのです。
海外の資本やリソースを使いながら展開していく
記者:
「ジャングリア沖縄」ということは、これを起点に海外への進出も視野に入れているのでしょうか?
森岡さん:
遠大な計画の、これが大切な第一歩となります。とはいえ、一つのテーマパークを成功させること自体が非常に難易度の高い挑戦です。まずは皆様のお力添えでここまで来た「ジャングリア沖縄」を成功させることに全力を注ぎます。
もちろん、その先には大きな夢があります。この事業を成功させた暁には、このビジネスモデルを海外へ展開し、そこで得たライセンス料などの収益を、しっかりと沖縄へ、そして日本へ還元し、GDPの一助としたい。日本には、世界で人気のドラえもんやハローキティのように、まだ眠っている素晴らしいブランドやコンテンツ(IP)がたくさんあります。
それらを活用し、海外の資本やリソースを使いながら展開していく。ディズニーやユニバーサル・スタジオが日本で展開しているようなビジネスを、今度は私たちが海外で仕掛ける未来を作りたいのです。その大きな野望に向かって歩き出すためにも、まずはこの「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を確実に成功させなければなりません。
「沖縄は全員が関係者なんだ」という言葉
記者:
沖縄の経済界からも大きな期待が寄せられていますが、関係者の皆様への思いをお聞かせください。
森岡さん:
このプロジェクトは、沖縄の皆様と一緒に作ってきたものです。かつてUSJ時代にも沖縄でのパーク計画がありましたが、当時は「良いものを作ればきっと喜んでもらえるはずだ」と、どこか外からの目線で進めていました。その反省から、今回は企画の早い段階から沖縄の皆様にご相談し、一緒に作り上げることを何よりも大切にしてきました。
沖縄県内企業の方にその思いをお話ししたところ、「そこにお気づきになられたのなら、一緒にやりましょう」と、最初の株主になってくださったのです。そこから、沖縄の企業の皆様に次々とご賛同いただき、今では株主の7割が沖縄の皆様です。成功した時の果実を、できるだけ沖縄に還元できる構造を目指しました。
また、「沖縄は全員が関係者なんだ」という言葉をいただき、説明の仕方や向き合い方も学びました。お金を出す側が東京や大阪から指示を出すのではなく、私たち自身が沖縄に拠点を置き、住民票を移し、皆様と同じ空気を吸いながら一緒に汗を流す。この道のりで本当に多くの方に助けていただきました。そのご期待に何としても応えたい。
パークのオープン後に出てくるであろう様々な課題も、地域全体にとって何がベストなのかという視点で、皆様と共有し、一つひとつ解決していきたいと考えています。
ジャングリア沖縄は日本の可能性を世界へと羽ばたかせる
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」の挑戦は、一つのテーマパークの成功にとどまらない。これは、自然との共生を前提にした開発のあり方、地域と一体となった経済モデル、そして人材育成を通じた長期的な国づくりの試みでもある。世界自然遺産に隣接しながら自然を破壊せず、むしろ再生と保全を両立させる開発手法は、これからの日本各地のモデルケースとなる可能性を秘めている。
さらに、教育機関との連携による観光人材の育成は、地域を越えて日本全体のサービス水準を押し上げる力となるだろう。観光立国・日本が世界と競う時代において、沖縄発の「観光教育メソッド」は大きな資産になるはずだ。
そして、海外展開によって得られた収益を日本に還元するという構想は、これまで外資依存だった観光ビジネスの逆輸出モデルとも言える可能性も秘めている。
地方から世界へ、日本から未来へ。「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」が育てようとしているのは、経済だけではない。「希望」そのものだ。静かなる森から立ち上るこの壮大な構想は、日本の可能性を世界へと羽ばたかせる第一歩になるかもしれない。
