愛しているもの、かけがえのない存在を突然失う――それは誰にとっても心に大きな喪失感をもたらすし、心に大きな穴をあけてしまう。
長澤まさみさんが主演映画『ドールハウス』(矢口史靖監督/全国公開中)で演じた鈴木佳恵は、自分が目を離したすきの悲しい事故で愛する5歳の娘を亡くしてしまう。本作は、佳恵がその後ある人形と出会ったことから、謎が謎を呼び、ゾクゾクしながら目を離せない展開になるというドールミステリーだ。
長澤まさみさんがどのような思いで本作に臨んだのか、5月29日に発売された「FRaU」SDGs特集号でカバーをつとめた長澤さんにインタビューをした前編では、長澤さんの「仕事」への思いを聞く。
「矢口監督がこういうゾクゾクするような作品出すんだ」
『コンフィデンスマンJP』シリーズのダーコでは天才詐欺師としてエンターテイナーの姿を見せ、『キングダム』シリーズの楊端和ではかっこよすぎるアクションを、ドラマ『エルピスー希望、あるいは災い』や『ロストケア』ではキャスターとして、検事としての覚悟を感じさせ、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、ナレーターとしてその存在感を見せた長澤さん。映像作品だけではない。2024年の『正三角関係』に続き、2025年も舞台『おどる夫婦』への主演を終えたばかりだ。多くの作品で我々を魅了し続ける長澤さんは、どのようにして仕事を選んでいるのだろうか。
「一番大事なのは、やっぱり物語がどういう結末を迎えるのかということ。物語自体がちゃんと自立している作品に惹かれます。だから、自分の役柄が際立っているか否かという点で惹かれるわけではないんですよね。物語があった上でキャラクターが存在していると思っているので。その点、『ドールハウス』は脚本を読んでワクワクしました」
「ワクワクした」脚本を執筆した矢口史靖監督と長澤さんは、2014年の『WOOD JOB!~神去なあなあな日常』でタッグを組んでいる。
矢口監督といえば、『ウォーターボーイズ』(2001)『スウィングガールズ』(2004)といったユーモア満点のコメディ作品で脚本と監督を兼任し、数々の賞も受賞してきた。ところが『ドールハウス』はこれまでの作風とは一転、コメディとは真逆のミステリーで、思わず目をおおったり、叫びたくなるような場面も多く出会う。
「私も矢口監督がこういうゾクゾクするような作品を書くんだと思ってびっくりしながらも、意外性にすごく惹かれましたし、引き込まれました。ドキドキ、ワクワクして……終わりのない…そういうスピード感のある展開はアトラクションのようなポップさがあり、一方で家族の物語を丁寧に描いている。監督はこれをどういうふうに撮るのかなと気になりました。
また、こういう空気感の作品は、どこかでほっとできる終わりを迎えるっていうイメージが、私の中の固定観念としてあったんですけど、この作品はそうさせないんです。 皆さんがどこまで行くのか、どんな終着点を迎えるのかは、楽しみにしてほしいと思いました」
ペットボトルを再利用したリサイクル可能なナイロン糸から紡がれた素材のカーディガン 317.900円(ステラ マッカートニー/ステラ マッカートニー カスタマーサービス) 撮影/熊谷勇樹
