■Commitment 通関業許可を取得した専門部隊が包括的支援
 

以上、2026年に予定されているEU-CBAM本格運用開始は、国際貿易の環境を大きく変える契機となりうること、及び、それは日本企業にとってチャンスでもあることについて述べた。そうした変化を見越して、デロイト トーマツ グループも企業への支援体制を強化しているところである。

2023年4月には、関税・貿易に関する専門会社「デロイト トーマツ GTA & テクノロジー株式会社」(本社:東京都千代田区、代表:牧野 宏司)を設立した。(1)法令・制度改正への対応、(2)手続・業務プロセスの改善への対応、(3)国際物流の諸問題への対応、(4)貿易関連ITサービスの提供――などの支援サービスを、荷主・国際物流事業者に対して総合的に提供していく。

同社は同年12月、通関業許可も取得し、通関業法に絡む様々な業務を代行できるようになった。日本のコンサルティング大手の中でも、通関業許可を取得し、税関による事後調査への包括的な支援を提供できるのは当社だけだと自負している。顧客の貿易に関する悩みが関税だけでなく貿易プロセスや電子化に拡がっており、貿易・国際物流のボトルネックに対して幅広く支援を提供している。

EU-CBAMへの対応支援も、最重要課題として位置づけているものの一つである。グローバルにおける日本企業の競争力向上のため支援しており、欧州委員会が拠点をおくベルギーにも専任スタッフをおいている。

CBAMの影響を受けている各企業は、排出量算出のプロセスをセットアップのうえ、実際の排出量データの利用が必須となる初回CBAMレポート期限2024年10月31日までに、最大限実際の排出量データを用いたレポーティングを行えるよう準備を進めている。

一方、欧州委員会からFAQを通じて2024年8月8日に行われたアナウンスメントによれば、もし排出量データを入手できなかった場合、CBAM申告者はその理由をCBAMレポート内にてコメントとして付記するとともに、最大限の努力を行った結果排出量データを入手できなかった旨を示す証憑を添付する必要がある。各EU加盟国のCBAM当局は、コメントおよび証憑を確認のうえ、排出量データの不足について罰則適用要否を判断する。これを踏まえ、各社は排出量算出のプロセスセットアップと平行して、もし排出量データを入手できなかった場合にコメントおよび証憑をどのように準備するかについても検討を進めている。

各社は排出量算出プロセスのセットアップが完了した時点でCBAMへのコンプライアンス対応についてはある程度目処がたつと思われるが、その後も、CBAM証書の購入コスト削減や、サプライチェーンのグリーン化にかかる各生産国でのインセンティブの利用など、より戦略的な観点からの検証を行う段階が残っている。

CBAMは世界的にみて新しい制度であることと、業界からの声に応じて制度が変化していくことから、適切な対応を講じるためにはEU輸入者と各生産者との間で密なコミュニケーションが必要になる。デロイト トーマツ グループでは、法令、業界の動向およびリーディングプラクティスについて関連国間でのシームレスなコミュニケーションを行うことにより、EU・関連国の双方から企業のCBAM対応をサポートしている。

構成=水野博泰 DTFAインスティテュート 主席研究員

[1] 炭素国境調整措置に関する基本的な考え方について(2021年3月、経済産業省「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」)

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