米国の物価は間違いなく上昇していく(写真はシカゴで売られているカナダ産チューリップ、4月3日、写真:AP/アフロ)
「Tariff-Palooza」という新語登場
米国のドナルド・トランプ大統領を骨の髄まで嫌うワシントン・ポストは「羽目を外した関税乱痴気騒ぎ」(Tariff-Palooza)の開幕を嘲笑い、そして警鐘を鳴らした。
米主流メディアは、トランプ氏が打ち出す無差別な関税政策を批判し、そのインパクトに危惧の念を表している。
トランプ氏の狙いは、はっきりしている。
不公平な貿易を正し、米国に生産を呼び込む。長年、黙認してきた巨額の貿易赤字を今、一気に解消するというのだ。
まさに米国を「関税の壁」で囲い込む「鎖国政治」である。
もはや「超大国」でもなければ、グローバル国家でもない、一介の中産国になるというのである。
トランプ氏はこれを昨日、今日決めたのではない。思いつきでもない。
バイデン政権下の4年、トランプ氏に忠誠を誓った保守主義者たちが参集して作った政策集団「America First Policy Institute」が練りに練った経済政策の主柱だ。
民主党系の経済専門家たちは口々に非難している。
「関税データを無視した相互関税率のみ計算した危険かつ有害な政策」(ローレンス・サマーズ元財務長官)
(Larry Summers says Trump’s ‘masochistic’ tariffs will cost $300,000 per family of four | Fortune)
「貿易相手国についての虚偽の主張だ」(ポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大学大学院教授)
(Will Malignant Stupidity Kill the World Economy?)
「貿易赤字率だけで貿易の中立性を図るのは経済学から見てナンセンスだ」(イアン・ブレマー「ユーラシア・グループ」社長)
(Trump’s tariffs & the end of globalization – GZERO Media)
だが、トランプ氏はこうした声には一切耳を貸す気はない。第一、トランプ氏は東部インテリ、アイビーリーグ、エリート官僚が大嫌い。鼻も引っ掛けない。「敵」と見ている。
しかも今は、トランプ氏は米国の大統領だ。
おまけにトランプ氏を当選させた南部、中西部スウィング・ステート(選挙のたびに勝つ政党が入れ替わる接戦州)の白人ブルーカラー有権者は主流メディアなど読まないし、観ない。
トランプ支持のFOXニュースしか観ない。
それがトランプ氏の強みになっている。だからインテリが何と言おうとも無視。決めたことを覆す御仁ではない。
(韓国の憲法裁判所のように現職大統領を罷免できる国なら別として、保守派判事が過半数を占める米最高裁がトランプ氏を罷免するはずもない)
どちらに転ぶか、株式市場の行方
ところが、4月4日の米株式市場でダウ工業株30種平均が前日比2231ドル(5.5%)安の3万8314ドルで引けた。
1日の下げ幅として史上3番目の大きさを記録した。
トランプ政権の相互関税に中国が報復関税で対抗し、貿易戦争の激化に市場参加者はリスク回避を強めたからだ。
「患者(米国という国家を指す)は(貿易赤字で)重病だった。だから手術した。その手術は無事終わった」
「これで金融市場は活気づく。株価は急上昇する。そして米国は好景気を迎える」
(Regulating Imports with a Reciprocal Tariff to Rectify Trade Practices that Contribute to Large and Persistent Annual United States Goods Trade Deficits – The White House)
それでもトランプ氏は4月4日、自身のSNSに「私の政策は決して変わらない」と投稿した。
「米国に来て巨額の資金を投じる多くの投資家へ。私の政策は決して変わらない。今こそ、かつてない大金持ちになる絶好のチャンスだ!」
相互関税で米国を含めた世界の株価が急落しても、高関税政策の修正はしないと言い放ったのだ。
