米国から専門チーム 
 多摩動物公園(東京都日野市)は、飼育しているアフリカゾウ「
砥夢(トム)
」の牙を抜く「
抜牙(ばつが)
」の手術を実施し、成功したと発表した。国内で抜牙手術が成功するのは初めてで、米国から専門チームを招き、約60人がかりでの一大処置となった。術後の経過は良好で、砥夢の一般公開が再開された。(水戸部絵美)
60人以上が処置に当たった砥夢の抜牙手術の様子(東京動物園協会提供)60人以上が処置に当たった砥夢の抜牙手術の様子(東京動物園協会提供) 砥夢は15歳のオスで、2012年に来園した。同園によると、園で牙を柵に押し当てて揺らすなどの行動が目立つようになり、18年2月に左牙の先約30センチを折ってしまったという。

手術で抜けた砥夢の左牙(東京動物園協会提供)手術で抜けた砥夢の左牙(東京動物園協会提供)
 同園では牙がさらに損傷しないよう保護材を巻くなどの対応をしてきたが、内部組織が
壊死(えし)
し、剥がれ落ちて空洞化。内部の洗浄を続けていたが、牙再生の見込みがない上、細菌感染のリスクもあったことから、抜牙することを決断した。
抜牙後も元気な様子を見せる砥夢(東京動物園協会提供)抜牙後も元気な様子を見せる砥夢(東京動物園協会提供) 国内ではゾウの抜牙の実施例がほとんどないため、同園は抜牙経験が豊富な米国の専門チームを招くなどして、1年前から手術の準備を進めてきた。十数回のミーティングを重ね、全身麻酔をかけるために砥夢を適切な位置に誘導するトレーニングも繰り返した。 手術当日の5月22日は、来日した米専門チームのほか、同園の獣医師、飼育係、ほかの動物園や国内外の大学の専門家も駆けつけ、総勢66人のスタッフが処置に当たった。午前10時前に砥夢に麻酔薬を投与して処置を始め、空洞に器具を挿入してゆっくり牙を引き抜き、正午過ぎに処置が終了した。想定よりも早く終わり、目を覚ました砥夢は、すぐに立ち上がったという。 砥夢はその後も落ち着いた状態で、翌23日から一般公開が再開された。エサも通常通り食べて元気に過ごしている。同園教育普及課の大橋直哉課長は「スムーズに処置ができてほっとした。今後も、患部が感染症を起こさないようケアしていく」と話している。