女児の机と椅子を見つめる黒田校長(7日、長崎県佐世保市の大久保小で)=坂口祐治撮影 2004年に長崎県佐世保市立大久保小で6年の女児(当時12歳)が同級生の女児に殺害された事件から6月1日で20年となる。市内の小中学校などでは、背景とされたインターネット上のトラブルを防ぐ取り組みが進められてきた。女児の机と椅子は同校校長室で大切に保管され、命の尊さと再発防止の決意が脈々と受け継がれている。(小松一郎)
IT大手と連携 <まじめだね><おとなしいね><いっしょうけんめいだね><個性的だね><マイペースだね> 小学校高学年用の教材の冊子には五つの言葉が並ぶ。教員は児童に「嫌だな」と感じる言葉を選んでもらい、理由を尋ねる。どれが嫌だと感じるかは人それぞれで、子どもたちは言葉を選ぶことの難しさを感じ取る。 大久保小をはじめ市内の小中学校では例年、事件が起きた6月頃に「情報モラル」の教材を使って、SNSを利用する際の注意点を集中的に教えている。 長崎家裁佐世保支部の決定は、インターネットなどへの被害者の書き込みが加害者に殺意を抱かせたとする一方、「他人に殺意を抱かせるようなものでは決してない」とも指摘した。 「言葉の感じ方は人によって異なり、文字だけで伝えると誤解されやすい。情報モラルは非常に重要だ」。大久保小の黒田優一校長(52)は意義を語る。 教材は19年、県教育委員会がIT大手LINE(現・LINEヤフー)と連携して作った。県教委によると、事件も踏まえ、近年のSNSを巡るいじめなどに対応するために開発。LINEみらい財団(東京)によると、当時は東京都教委に次いで2例目の連携で、こうした取り組みは現在、全国に広がっているという。
長崎大の倉田
伸(しん)
准教授(教育工学)は「先進的な取り組みだった」と評価する一方、「現在は児童に1台ずつ端末が与えられており、実際に端末を操作して実体験を積みながら学ぶことも重要」と話す。
「自ら判断し行動する力を」 大久保小には全教職員が必ず目を通す「教訓」がある。県教委が作成した事件の調査報告書(約60ページ)だ。市教委と連携して、同校の教職員らへの聞き取り調査を実施。少年審判の決定を踏まえ、心理学などの専門家らの見解も得て、事件半年後にまとめた。 「インターネットの掲示板に悪口を書かれて、殺そうと思った」。背景を探る上で欠かせないインターネットの書き込みについては、事件直後に加害者が発言した言葉を明記し、「怒りや憎しみを抱く大きな要因となった」と分析した。 「(ネット上の)モラルやマナーについて体系的な教育が行われていない」とする専門家の指摘も踏まえ、「モラルやマナーを身に付けさせ、自ら判断し行動する力を育成することが重要」との見解を示した。 黒田校長は「事件の風化と再発の防止に欠かせない」と強調する。机に誓う 校長室には、女児が使っていた小さな机と椅子が置かれている。事件後に校長室に移され、一時、処分が検討されたこともあったが、歴代の校長が引き継いできた。 5月上旬、机の上には教職員が花瓶に生けた花が供えられていた。女児が好きだったヒマワリを想起させる鮮やかな黄色の花だった。黒田校長は毎朝、花瓶の水を入れ替え、事件現場の教室があった3階の広場で手を合わせる。 「この机と椅子を眺めるたび、今日も子どもたちが元気に過ごせるようにがんばろうと誓っています」◇ 事件は2004年6月1日昼に発生。女児が同級生(当時11歳)にカッターナイフで切りつけられ、失血死した。同級生は同年9月、家庭裁判所の決定で児童自立支援施設に送致された。現在は社会復帰したとされる。
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