2004年に長崎県佐世保市の小学校で6年生女児が同級生に殺害された事件で、犠牲となった女児(当時12歳)の兄(34)が、被害者の「きょうだい」として感じた苦悩を講演で訴え続けて今月で10年となる。14日には衆議院の議員会館で国会議員や官僚らに初めて講演し、事件から約20年を経ても不十分なきょうだいへの支援の充実を求める。(大久保和哉)事件後のきょうだいの苦悩と支援の必要性を講演で訴えてきた被害者の兄(7日、福岡県内で)=佐伯文人撮影事件後のきょうだいの苦悩と支援の必要性を講演で訴えてきた被害者の兄(7日、福岡県内で)=佐伯文人撮影理解できぬまま

 「校長先生から話があるから来て」。事件が起きた6月1日、中学3年だった兄は昼休み後の授業中に担任から呼び出された。部屋には校長と学年主任、1~3年時の担任ら6~7人がいて、着席するなり囲まれた。「まずはこれを読んで」と校長から差し出されたのはA4判の紙1枚。印刷されたネットニュースを読み進めると、妹の名前が目に入った。同級生に殺された――。そう書かれていた。 突然のことで理解が追いつかない。なのに、誰も話をしない。泣いている女性教員もいた。「同級生って誰ですか」。やっとの思いで尋ねたが、校長は「今はそういうことは気にしなくていいよ」と答えた。自分が置かれた状況が理解できないまま「放置」され、警察に事情を聞かれていた父親が学校に迎えに来たのは、約5時間後だった。
 「今でも思い出すのは、囲まれて紙を渡された瞬間なんです」。居場所だった中学校は「トラウマを抱えた場所」となった。母親も亡くなっており、事件後は「
憔悴(しょうすい)
した父がいつ死ぬか分からない」と、平静を装って通学し続けた。小学校で妹の同級生に行われた臨床心理士のカウンセリングは、自分にはなかった。
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