自ら名付けた「ツクシセントウソウ」について解説する矢原さん 植物学者の矢原徹一・福岡市科学館長(69)が発見した125種の植物を紹介する「新種はっけん!展」が、福岡市中央区の同館で開かれている。植物の多様さや研究の楽しさに加え、幼い頃から60年間にわたり、未知の植物を追究してきた矢原さんの情熱が伝わるユニークな企画展だ。(江口朋美)
「この新種は九州大伊都キャンパスで採取しました」 自ら名付けた「ツクシセントウソウ」の鉢を前に、矢原さんが目を輝かせた。セリ科のセントウソウは国内に1種しかないとみられていたが、各地で収集して解析した結果、葉が小さめのツクシセントウソウなど8種に分類されることを突きとめたという。
新種のモモイロウツギ(左)とツクシベニウツギ。これまではいずれも「ニシキウツギ」と分類されていた=矢原さん提供 企画展で紹介するのは、環境省のプロジェクトで、矢原さんが2020年度から取り組む絶滅危惧植物の調査で見つけた125種。写真を展示し、ツクシセントウソウの鉢や、矢原さんが見つけた「モモイロウツギ」「ツクシベニウツギ」(いずれもスイカズラ科)などの押し葉標本が並ぶ。「新種発見の心得」を解説する動画も放映している。 短期間で膨大な数の新種を発見できたのは、2015年以降の技術の進歩が背景にあるという。矢原さんによると、戦後の植物研究は、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルになった植物学者、牧野富太郎(1862~1957年)の時代に作られた標本が基になっているが、以前は形態以外の分類方法が限られていた。その後、DNA配列の解析技術が発展し、分類しやすくなった。 矢原さんは、石灰岩などの特徴的な土壌や、他地域との繁殖の交流がない地形など、新種が見つかりやすい場所に狙いを定め、サンプルを採取。同一種とみられていた植物の遺伝子情報を比較したところ、複数に分類される事例が相次いだ。「興奮の連続だった。世界は不思議だらけ」と声を弾ませる。◇ 福岡県糸島市出身。子どもの頃から自然に興味を持ち、中学生になると地元の同好会で大人に交じって植物を採集した。京都大理学部に進学後、東京大教養学部助教授などを経て1994年に九州大理学部教授に就任した。同大の伊都キャンパスへの移転を巡っては、現地の生き物を守るため、土壌ごと樹木を切り出して別の場所に移植するなど環境保全に力を注いだ。 2020年3月に退職し、同年10月に市科学館長に就任してからもフィールドワークで全国各地を歩き続ける。発見した125種は現在、海外の科学誌で審査を受けている。環境省の調査は継続中で、新種はさらに増える見込みという。 矢原さんは「新種は身近な公園にもあり、小中学生にも発見の機会がある。地域色豊かな日本の植物に関心を持つ機会になれば」と企画展への来場を呼びかけている。5月26日まで(火曜休館、4月30日は開館)で入場無料。問い合わせは福岡市科学館(092・731・2525)へ。
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