2025年大阪・関西万博の開幕まで1年を切り、会場の防災に関する「実施計画」の策定が山場を迎えている。1月の能登半島地震を受けて、孤立の恐れがある人工島を会場とするリスクに改めて関心が集まっており、日本国際博覧会協会(万博協会)は安全に来場者を受け入れるための準備を進めている。(猪原章、上野綾香)1日22万人 「日本が様々な自然災害に見舞われる国であることはわかっている。避難の計画は国際社会にも知らせなければならないポイントだ」 開幕1年前に合わせ来日した博覧会国際事務局(BIE)のディミトリ・ケルケンツェス事務局長は11日、自見万博相との面会後、記者団の質問に述べた。

 会場の
夢洲(ゆめしま)
(総面積約390ヘクタール)には、これまでコンテナターミナルしかなく、万博は多数の人が訪れる初の機会になる。25年4月13日から半年の会期で見込む来場者は延べ2820万人。1日最大22万人超で、東京ディズニーランド・シーの1日の来場者数の倍以上だ。
 協会は昨年12月、想定する災害規模や被害をまとめた「防災基本計画」を公表。現在、具体策を盛り込んだ実施計画の策定を進めている。来場日の予約は開幕半年前の10月に始まる予定で、協会の成田友・危機管理部長は「安心して訪れてもらうためにも夏頃には示したい」と話す。孤立の懸念 想定する災害規模は、地震は南海トラフ地震級だ。震度は最大6弱、津波の高さは同5・4メートルだが、会場は海面から11メートル程度の高さがあり、協会は直接的な津波被害は生じないとする。 また、夢洲は主に液状化しにくい粘土質の土で造成され、パビリオンも耐震基準を満たすことから、建物倒壊の可能性も低いとされる。 大雨では関西空港が浸水した18年の台風21号級だ。会場は大阪市の中心部同様、1時間60ミリの雨に対応する排水設備が整備される。台風21号で記録した1時間80ミリはこれを上回るが、過去5年で大阪市内で同程度の雨が降った際は床下浸水程度にとどまり、深刻な人的被害に至る可能性は低い。 ただし、島が孤立する懸念は強い。島内外を結ぶルートは、車は「夢舞大橋」と「夢咲トンネル」、来年1月に夢咲トンネルと併走する形で延伸する予定の大阪メトロ中央線の計3本しかない。 橋は平均風速が毎秒20メートル以上で通行止めが検討され、トンネルと地下鉄は震度5強以上の揺れで点検のため通行止めになる。震度6弱を観測した18年の大阪北部地震では、大阪メトロは一部設備の破損もあり全線復旧に14時間を要した。 荒天が予想される場合、協会は鉄道の計画運休にならって「計画閉園」することも検討しているが、大阪市危機管理室は「一定期間、島内に人が取り残される前提で対策する必要がある」とする。15万人×3日分の備蓄、医師や消防職員も常駐 実施計画策定に向け、万博協会では、必要な備蓄の試算や救護体制の構築を進めている。 孤立に備えて重要になる食料や毛布といった物資は、1日の来場者の約7割にあたる最大15万人程度が3日程度過ごせる量を備蓄する方針だ。 大阪市の災害備蓄の予算から単純計算すると、6億円程度のコストが見込まれる上、閉幕後には不要になる。そのため、協賛企業に対し災害用備蓄を一時的に供出するよう協力を求め、交渉を始めている。 避難所も課題だ。孤立した場合、住人がいない夢洲には学校や体育館といった既存の指定避難所がない。会場内の催事場やパビリオンが収容場所となるが、各建物の構造は固まっておらず、収容可能人数の算出はこれからだ。 けが人や急病、熱中症の患者は、会場内に8か所ある医療救護施設の医師らが対応する。また、火災発生や救急搬送に備えては、大阪市消防局が会場に常駐。消防車と救急車最大約10台、職員約50人の体制を組む予定だ。 孤立時に島外に患者を運ぶケースも想定し、ヘリでの搬送手順も詰める。市の木村賢次・危機管理課長は「一般的なイベントとは比較できない大規模な催しで、関係機関との連携もしっかり構築していきたい」と力を込めた。

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