共学化に反対する浦和高校では、生徒や保護者が街頭に立ち、署名活動を行った(3月下旬、JR北浦和駅前で)=同校同窓会提供 県立高校の共学化を巡り、埼玉県内が揺れている。きっかけは、県の第三者機関からの「早期に共学化を実現すべき」という勧告だった。勧告に対して、県教育委員会が回答する期限は今年8月に迫る。県立の別学高12校(男子5、女子7)はどうなるのか。その歴史と関係者の思いから、将来像を探る。
■1件の苦情発端 「いつかまた出てくるだろうなと思っていた」 昨年8月に県男女共同参画苦情処理委員からの勧告を受けた県教委幹部は、こう言って頭を抱える。2002年にも同様の勧告を受けており、別学の県立高が男女共同参画の観点から問題視されるのは、2度目となる。 今回の勧告は、県民から寄せられた1件の苦情が発端となった。「県立の男子高が女子の入学を拒んでいるが、入学は認められるべきだ」。弁護士らの同委員は県立高校の現状などを調査した。県教委への勧告では女子差別撤廃条約(1985年批准)に触れ、「『男女共学』での教育が奨励され、男女の役割の定型化された概念の撤廃が求められている」などと指摘。他県の公立高で共学化が進んでいることから、「男女共同参画のために共学化が必要であるとの認識は、すでに社会共通の認識に成熟している」とし、早期の共学化を求めた。 勧告に拘束力はないものの、1年以内の回答が求められている。県教委は今年8月中に、別学高のあり方や将来像などをまとめた報告を公表するとしている。■前回は「現状維持」 02年勧告は、県内に大きな波紋を呼んだ。「高校生活の3年間を一方の性に限ることは、人格形成からも男女共同参画社会づくりの視点からも問題」と、強い表現で問題提起したためだ。 これに対し、県立高に通う生徒の保護者らが反発。市民団体を結成し、一律共学化に反対する署名活動を展開した。最終的には約27万人もの署名が集まり、土屋義彦知事(当時)に提出した。ほかにも別学高の関係者や市民団体が、それぞれの立場から要望書を提出した。県議会では、別学維持派が超党派の議員連盟を結成した。 勧告から1年後の03年3月、県教委は「早期に共学化を実現するという結論には至らなかった」とする報告書をまとめた。別学高を維持する理由として、「多くの県民の強い支持がある」「各学校の主体性を尊重する必要がある」ことなどを挙げ、「現状維持」の方針を示した。■賛否問うアンケ 昨年8月の勧告後、県教委の職員は別学高12校の保護者や同窓会から意見を聞いた。4月17日からは、共学化の賛否を問うため、中高生と保護者を対象にしたアンケートを始めた。当初は無記名式だったものの、19日からは記名式に回答方法を変更。その後の6日間だけで、約1万6000件の回答が寄せられた。 「一律に別学高といっても、入試の倍率や進学実績、地域での役割など置かれている状況は様々。多くの県民から納得してもらうためには、丁寧に声を吸い上げていくしかないだろう」。県幹部はこうつぶやく。 県民の関心が高まる中、「20年越しの宿題」に、どんな答えが出されるのか。▽県男女共同参画苦情処理委員:県条例に基づき、知事が委嘱する。任期は2年で弁護士らで構成される。苦情の申し出を受け、調査を行い、必要に応じて助言や勧告を行う。勧告を出したのは、2002年以来という。別学高北関東に7割 全国に45校 文部科学省の学校基本調査(2023年度)によると、公立高校の男女別学(男子、女子の一方のみが在籍する学校)は全国に45校(男子15、女子30)。7割にあたる32校は埼玉、群馬、栃木の北関東に集中している。 歴史的にみると、別学高は減少傾向で、1963年度には377校あったが、60年間で8分の1まで減った。少子化を受けて高校の統廃合が進み、新校が共学化されるケースが多い。別学5校があった鹿児島県では、男子校1校が4月に共学化。別の男子校1校も共学化することが決まっている。 一部の地域に別学高が存続しているのは、戦後の教育改革の名残と見ることもできる。 埼玉大学の山田恵吾教授(教育史)によると、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)主導の教育改革で、学校の共学化が進められた。ただ、東日本では「GHQの担当官が地域の要望を柔軟に受け入れた。その結果、別学校が多く残った」という。旧制中学校が男子校に、高等女学校が女子校になっていった。
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