『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』ダニエル・ソカッチ著(NHK出版) 2860円 8刷、2万3500部
1993年の「オスロ合意」を覚えている人は多いだろう。イスラエルとパレスチナ解放機構が和平プロセスの開始に合意したこの歴史的出来事は世界に希望を与えた。ところが、約30年
経(た)
った現在、イスラエルとハマスの衝突は3万3000人を超える死者を出すに至った。
『世界は経営でできている』岩尾俊兵著
なぜこんなことになってしまったのか? 日本に住む私たちは、この問題を「
自分事(じぶんごと)
」として捉えにくく、関心を維持するのも難しいが、それだけに本書は新鮮である。なぜなら、著者はアメリカのユダヤ人社会に生まれ育ち、長じてイスラエルに違和感を覚えるようになったという人物だからだ。著者自身の体験を重ねつつ、揺れ動く心情を、ときにユーモアを交えて問題の諸相を
綴(つづ)
っている。
本書を「親イスラエル」的な本と見なすのは早計である。著者はイスラエルを「民主化」する活動家としての顔も持っている。パレスチナ側の視点は弱いが、それは自分がパレスチナを代弁するわけにはいかないという著者の誠実さの表れだと受け止めた。 膝を打ったのは、双方の争いの主戦場が「歴史」「地図」「考古学」だという指摘だ。自らの信念に合わせて歴史を語り、地図を描き、遺跡を意味づける。学術的な正確さは不要、批判も受け付けない。互いが内部に向かって見たい世界を再生産し続ける――歴史認識に広く共通する問題であろう。 硬派な本だし安価でもないが本書は随分と話題になっている。多くの人がこの問題を理解したいと思っている証拠だろう。親しみやすい装丁やイラストの多用などの工夫が、難解だと思われている他ジャンルの本にも波及してほしい。鬼澤忍訳。(文化史研究者 山本昭宏)
ダニエル・ソカッチ
ユダヤ系アメリカ人の社会活動家。イスラエルの民主主義を名実ともに達成させるためのNGO「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。米サンフランシスコ在住。
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