ユニークな特徴を備えた「東京MINATO CITY国際音楽コンクール&ワークショップ」が、10月に都内で開かれる。第1回の今年はバイオリン部門。審査員長を務めるバイオリニストの篠崎史紀(61)に、コンクールの狙いを聞いた。(松本良一)

東京・春・音楽祭「トリスタンとイゾルデ」…高潔な騎士、激烈な心情

「コンクールは何のためにあるのか。その原点を見つめ直したい」=古厩正樹撮影「コンクールは何のためにあるのか。その原点を見つめ直したい」=古厩正樹撮影 バイオリン、チェロ、ピアノの3部門を、毎年1部門ずつ開催していくコンクール。まず目をひくのは課題曲だ。オーケストラと共演する本選では、ハイドンのバイオリン協奏曲で聴かせどころのカデンツァを、自作して弾かなければならない。こんなコンクールはとても珍しい。

 「参加者にはテクニックではなくファンタジーで音楽性を披露してほしいから」というのが答えだ。「本来、審査員を前に腕を競うのではなく、限られた条件下で自らの音楽をどこまで掘り下げられるかを見たい。その経験が重要なのです」 ほかにもセミファイナルで、必須とする演奏曲の候補にベートーベンのあまり有名ではないソナタが並ぶなど、ひねりの利いた課題が用意される。「音楽を心から愛する若い人が、審査員や聴衆と楽しくコミュニケーションできる場にしたい」と話す。 NHK交響楽団のコンサートマスターを務めるかたわら、気の置けない演奏家仲間と室内楽のシリーズ演奏会を企画するなど、アンサンブルの楽しみを熟知している。その経験を基に、クラシックの伝統を次世代に継承する際には、千利休の言葉という「守破離」が理想だという。 「師匠から伝授された型を『守り』、自らの模索を通じてそれを『破り』、最後にはそこから『離れ』自己の流儀を完成させるのです」 指導者に仕込まれた型を曲芸のように競うだけでは、クラシックの本質は伝承できない。そう考え、期間中にコンクール参加者が主体的に学ぶことを目的としたワークショップも用意する。「若手が遊びながら考え、同好の士とふれあい、一緒に成長していくのが夢です」。その意気込みはどんな実を結ぶだろうか。◇ 参加申し込みは5月31日締め切り。予備審査を経て、10月16~26日に築地の浜離宮朝日ホールと赤坂のサントリーホールで予選・本選を開く。第1位賞金は500万円。申し込みは公式サイト(https://tmcimc.jp/)から。

Share.