岡山市は2026年9月28日、「岡山市アリーナ整備・運営事業」の実施方針案と要求水準書案を公表しました。最大収容人数は約1万人。スポーツやコンサートなどの興行時には8,000席以上を確保し、Bリーグ、SVリーグなどのトップスポーツに加え、大規模ライブ、展示会などを受け入れる施設を整備します。2027年2月に総合評価一般競争入札を公告し、同年10月に落札者を決定する予定です。
当ブログでは2023年12月、基本計画素案の段階でこの計画を取り上げました。当時は5,000席以上、延床約1万3,300㎡、概算事業費約145億円でした。その後、市場調査や事業性の検討を経て、計画は最大1万人規模へ拡大しています。
岡山市新アリーナの最新計画
項目
最新計画
建設地
岡山市北区野田4丁目付近
事業区域
約2.3ha
JRアクセス
北長瀬駅から約1km
最大収容人数
約1万人
興行時客席数
8,000席以上
主な用途
Bリーグ、SVリーグなどのプロスポーツ、コンサート、展示会・イベント
サブアリーナ
固定席400席以上
事業方式
PFI・BT方式+コンセッション方式
運営期間
約30年間
従来想定事業費
約275~280億円
最新動向
物価高騰を受け増額方向
入札公告
2027年2月
落札者決定
2027年10月予定
設計・建設
2028年3月~2032年11月予定
運営開始
2032年12月予定
5,000席級から「1万人級」へ。3年間で計画が大きく変化
今回の続報で最も大きいのは、単なる事業進捗ではなく、2023年の基本計画素案から施設の規模と役割が大きく変わったことです。
2023年基本計画素案
現在
観客規模
5,000席以上
最大約1万人
興行規模
トップスポーツ中心
スポーツ・コンサート時8,000席以上
延床規模
約1.33万㎡
約2.6万㎡を想定して検討※
事業費
約145億円
約275~280億円→増額方向
施設の役割
ホームアリーナ確保
スポーツ+ライブ+集客拠点
運営方式
検討段階
BT+コンセッション
※延床約2.6万㎡はこれまでの計画段階で示された想定。今回の要求水準書では、必要機能を満たした上で事業者が適切な規模を提案する方式としています。
当初計画の背景には、岡山シーガルズ、トライフープ岡山、岡山リベッツなどが活動する一方、県内では大規模大会に対応できるアリーナが限られ、トップチームとアマチュアスポーツの双方で会場不足が生じていた事情があります。さらにSVリーグやBリーグのホームアリーナ基準への対応も必要になりました。
その後、岡山市が興行・運営関係者にヒアリングしたところ、最大1万人、コンサート時7,000~8,000席程度が収支面で適した規模との回答があり、現在の計画へ拡張されました。つまり、5,000席級のホームアリーナから、スポーツと大型興行を両立する施設へ計画の前提が変わったことになります。
要求水準書で見えてきた「大型ライブ対応」の具体像

出展:岡山市 コンサート利用イメージ
今回の要求水準書では、施設に求める性能がかなり具体化しました。
機能
主な要求内容
メインアリーナ
最大収容約1万人、興行時8,000席以上
アリーナ床
原則コンクリート床
搬入
11t車程度がメインアリーナへ直接乗り入れ可能
客席
壁面収納式移動観客席など、用途に応じて配置変更
サブアリーナ
固定席400席以上、天井有効高12.5m以上
競技対応
バレー2面、バスケット1面の試合・練習に対応
ホスピタリティ
スイート・ラウンジ、飲食サービス
興行設備
音楽興行用の楽屋、メディア室、物販スペース
防災
一時避難場所、物資搬出入の広域拠点
非常用電源
72時間対応を標準
環境性能
ZEB Ready以上
特に11t車がアリーナへ直接乗り入れられる搬入計画は、施設の性格を端的に示しています。大型ライブでは音響、照明、ステージなど大量の機材を短時間で搬入・撤去する必要があります。要求水準書でも、音楽・ライブ興行の主催者が運営しやすく、設備の設置・撤去を効率化できる構造を求めています。
スイート・ラウンジでは、利用者の注文に応じて調理した食事や飲料を提供できる仕様を求めています。スポーツを見るための体育館ではなく、興行収入、飲食、物販、ホスピタリティまで含めて運営するアリーナとして計画されていることが分かります。
約280億円の事業費はさらに増額へ

出展:岡山市 スポーツ利用イメージ
施設の大型化に伴い、事業費も2023年の約145億円から大きく増えました。
岡山市はこれまで、新アリーナ本体などの事業費として約275~280億円を想定してきました。一方、資材価格や人件費の上昇を受け、現在は約280億円からさらに増額する方向で見直しています。市は2026年11月定例市議会で、市負担額の上限に関する補正予算案を示す方針です。
2023年との単純比較では約2倍ですが、現在の計画は収容規模、興行設備、ホスピタリティ機能などが大幅に増えており、物価上昇と施設の大型化が同時に進んだ結果と見る必要があります。
「建設費」だけでなく、30年間の運営まで事業化

出展:岡山市 展示会利用イメージ
今回の計画では、設計・建設にBT(Build Transfer)方式、完成後の維持管理・運営にコンセッション方式を採用します。
民間事業者が設計・建設し、完成後に施設を岡山市へ移転。その後、市が公共施設等運営権を設定し、民間事業者が約30年間にわたり施設を運営します。指定管理者制度も併用します。
収益構造も従来型の公共体育館とは異なります。
項目
仕組み
利用料金
事業者の収入
飲食・物販
事業者が運営
広告・スポンサー
事業者が獲得可能
ネーミングライツ
収益化を想定
維持管理・運営費
原則として事業者負担
運営権対価
事業者から岡山市へ支払い
市負担額
設計・建設費から運営権対価を差し引いて算定
利益上振れ
一部を市へ還元するプロフィットシェアも想定
施設を完成させた後に運営会社を探すのではなく、設計・建設・興行誘致・運営を一体で事業化する点が特徴です。ライブの搬入動線やVIP設備、飲食、広告など、完成後の収益性を設計段階から織り込みます。
北長瀬のまちづくり、防災拠点とも連動

出展:岡山市
計画地はJR北長瀬駅から約1km、北長瀬未来ふれあい総合公園に隣接する約2.3haです。岡山市は周辺地区を都市拠点に位置付け、アリーナを核とした「スポーツコンプレックス」の形成を進める考えです。
一方、1万人規模の施設ではイベント終了後に人流が集中します。要求水準書では、公共交通への誘導、シャトルバス、臨時バス、タクシー、送迎車の乗降動線を含む交通処理計画を求めています。周辺には住宅地もあるため、ライブ開催を想定した騒音・振動対策も条件に盛り込まれました。
災害時には一時避難場所に加え、物資搬出入の広域拠点として活用します。非常用電源は72時間対応を標準とし、スイート・ラウンジは要配慮者の避難スペースとして使うことも想定しています。
最終デザインは事業者選定後
岡山市は新アリーナの外観イメージパースを公開しています。大きく張り出した屋根と広場空間を組み合わせ、公園との連続性を意識した構成です。
ただし、現在のパースは完成デザインを確定したものではありません。今回の要求水準書では、岡山のシンボルとなるデザイン、公園との一体性などの条件を示した上で、具体的な施設計画は民間事業者の提案に委ねています。2027年の事業者選定後に、実際の完成形が具体化することになります。
画像キャプション:岡山市新アリーナの外観イメージ。今後の事業者提案・設計により変更される可能性があります(出典:岡山市)
2027年2月入札、2032年12月の運営開始へ
時期
予定
2026年9月28日
実施方針案・要求水準書案公表
2026年10月27日
質問・意見受付締切
2026年12月~2027年1月
特定事業の選定・実施方針公表予定
2027年2月
入札公告
2027年3~4月
説明会・現地見学会
2027年9月
事業提案書締切
2027年10月
落札者決定予定
2028年3月
事業契約締結予定
2028年3月~2032年11月
設計・建設
2032年12月
施設引渡し・運営開始予定
~2063年3月
維持管理・運営
2023年に5,000席級・約145億円で具体化した岡山市の新アリーナは、3年間で最大1万人、スポーツ・大型ライブ双方に対応する施設へ計画を拡大しました。
今回の実施方針案と要求水準書案の公表によって、「アリーナを造る」という構想段階から、どのような施設を、どの事業者が、どの収益構造で30年間運営するのかを決める段階へ移ったことになります。
次の焦点は、11月議会で示される予定の物価高騰を反映した市負担上限額と、2027年の入札で提示される民間事業者の具体的な施設提案です。
出典元
岡山市「アリーナ整備運営事業に関する実施方針(案)及び要求水準書(案)の公表について」
岡山市「岡山市アリーナ整備・運営事業 実施方針(案)」
岡山市「岡山市アリーナ整備・運営事業 要求水準書(案)」
岡山市「岡山市多目的屋内施設(アリーナ)整備事業について」
日刊建設工業新聞「岡山市/アリーナ整備実施方針案/BT+コンセッション、27年2月に入札公告」
OHK岡山放送「岡山市が『新アリーナ整備』民間事業者向け実施方針と要求水準書を公開」
Re-urbanization「岡山市が新アリーナの基本計画素案を発表!」(2023年12月1日)
