新たな真珠養殖産地を目指していた地域で、導入が失敗してしまいました。しかし、それは決して残念なことではないかもしれません。

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2026年10月24日

サカナ研究所 その他

宮城で真珠養殖の試みが失敗

世界屈指の豊かな漁場に臨み、様々な魚が水揚げされる宮城県。ここで2024年より、とある「新たな水産物」の養殖が画策されていました。その水産物とは「真珠」。

宮城県で真珠養殖が困難と判断された理由とは? 黒潮大蛇行の終息と海水温の変化が影響養殖真珠(提供:PhotoAC)

真珠はアコヤガイという二枚貝が作るもので、アコヤガイを養殖することで真珠を採ることができます。世界的に高い需要があり、日本でも三重県をはじめ各所で養殖が行われています。

宮城県では2024年に初めて野生のアコヤガイが生息しているのが見つかり、真珠の養殖ができるのではないかということで研究が進められていました。しかし先日、県内の研究機関により「県内の海域での養殖は難しい」という結論が出され、断念する形となりそうです。

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なぜ失敗したの?

アコヤガイは本来、温暖な海域を好む性質があります。宮城県の沖合は寒流である千島海流の影響を受けるため本来は水温の低い海域で、アコヤガイの生息には不適でした。

しかし、ここ数年の黒潮大蛇行の影響で、暖流である黒潮(日本海流)が宮城県沖まで影響を及ぼし、水温が上昇していました。その結果、宮城県でも生息が確認され、養殖が可能なのではないかと水産関係者が色めき立ったのです。

宮城県で真珠養殖が困難と判断された理由とは? 黒潮大蛇行の終息と海水温の変化が影響養殖されたアコヤガイ(提供:PhotoAC)

しかし、その黒潮大蛇行は昨年半ばに突如停止し、それ以降徐々に太平洋側の海域が元の水温に戻ってきています。結果として宮城県沿岸がアコヤガイの生息に適さない環境に戻りつつあり、養殖ができないという結論に至ったようです。

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大局的に見れば「好ましい」ことかも

宮城県ではアコヤガイ以外にも、ここ数年で急激に生息数が増えたと見られる魚介類がいます。その代表がイセエビとトラフグです。いずれも高級魚介類であるため、水揚げが増えたことは好意を持って受け止められてきましたが、一方でもともと宮城県で水揚げされてきたサンマやサケ、サバなどの漁獲量は大きく減っており、それらを獲る漁師は困っていたという事実もあります。

宮城県で真珠養殖が困難と判断された理由とは? 黒潮大蛇行の終息と海水温の変化が影響不漁が続くサンマ(提供:PhotoAC)

全国的に海水温上昇が見られる中、南方系の魚が水揚げされる地域が増える一方、北方系の魚が水揚げされる地域は急速に減少しており、サケやスルメイカなどのような日本の食卓に欠かせない魚介類もどんどん獲れなくなってしまっています。その大きな原因の1つと目されていた黒潮大蛇行が本当に終了したのであれば、今後このような北方系の魚たちの水揚げは多少回復するかもしれません。

わが国が世界に誇る魚食文化は、水揚げされる魚介類の多様性にも支えられてきました。イセエビやトラフグ、そしてアコヤガイは本来の南西日本で水揚げされ、宮城県・三陸海岸では北方系の魚が獲れるという以前の状態に戻ることが、和食文化を支えるという点では好ましいと言えるかもしれません。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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