EU経済の競争力強化に向けた3つの提案
![]()
著者フォロー
フォロー中
2026.10.20(火)
欧州委員会のフォンデアライエン委員長(10月6日撮影、写真:AP/アフロ)
EU経済の重要課題は競争力の強化
EUの対中貿易赤字は2025年に約3600億ユーロに達した。
これについて、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は9月16日の一般教書演説で、EUの対中貿易赤字は1日当たり10億ユーロに達していると述べた。
欧州委員長の演説では、こうした貿易不均衡が欧州の産業基盤を脅かしているとの強い危機感が示されている。
9月後半に欧州に出張した際に筆者が面談した専門家、有識者の多くがこの表現を引用して、対中貿易赤字の拡大を憂慮していた。
EUの対中貿易赤字の推移を見ると、2015~18年はおおむね1400億~1600億ユーロで推移していた。
それが新型コロナウイルス感染拡大の時期に急増し、2022年には約4000億ユーロに達した。2023年、2024年は3000億ユーロ前後で推移したが、2025年に再び拡大した。
本年上半期(1~6月)の赤字幅も約2010億ユーロに達した。
さらに、EU統計局(ユーロスタット)が10月16日に公表した最新統計では、7月、8月もそれぞれ365億ユーロ、384億ユーロの対中赤字となっており、貿易不均衡の拡大傾向が続いている。
ユーロスタットによると、2025年のEUから中国への財輸出は前年比6.5%減少した一方、中国からの輸入は6.4%増加した。
赤字幅拡大の主な要因を見ると、EUからの対中輸出が自動車、機械などを中心に減少した一方、対中輸入は化学品、電機・電子機器、機械、自動車・同部品などを中心に増加した。
こうした貿易赤字拡大の重要な要因の一つは、中国企業の競争力向上により、EU企業の競争力が相対的に低下したことにあると、筆者が面談した欧州の専門家の間では認識されている。その他の要因として、中国の内需低迷、産業政策、ユーロ高・人民元安なども指摘されている。
9月後半に筆者が欧州主要国を訪問した際に面談した専門家、有識者の多くが、「もはや欧州企業は中国企業の競争力に対抗することが難しくなっている」と語っていたのが印象的だった。
それと同時に、欧州の相対的な競争力の低下は、対中国のみならず、対米国でも深刻になっていることを懸念していた。
また、欧州企業が競争力を回復すべきであることは欧州の政治・経済分野のリーダーの間で広く認識されているが、そのために必要な有効性の高い具体策が示されていないのが問題であるとの見方も、面談相手のほぼ全員が共有していた。
以上のような競争力低下の問題は、とくにドイツにおいて深刻に受け止められている。
元々ドイツ企業は欧州で群を抜いて競争力が高く、中国市場でも自動車、化学品、一般機械などの分野で市場シェアを伸ばしていた。
しかし、中国の高度成長率が一段と鈍化した2022年以降、中国事業の業績が悪化する企業が目立つようになった。その原因は中国の内需の低迷と中国企業の競争力強化にあると考えられている。
加えて、ロシアからの天然ガス供給の大幅な減少などによるエネルギー価格の上昇や、為替変動なども個別企業の業績に影響している。
