
香川県内17市区町村の宿泊施設について、2026年10月11日〜24日の14日間を対象に掲載在庫の消化状況を集計した。対象237施設・7,574室のうち、14日間平均の残り枠(掲載在庫が総客室数に占める割合)の中央値は54.6%。ただしこの数字は施設規模に強く引きずられており、客室10室以上の105施設・7,257室に絞ると中央値は32.8%(p25 15.9%・p75 57.4%)まで下がる。14日中に掲載在庫が確認できなくなった日(以下「完売観測日」)は全体の中央値で2日、7日以上あった施設が54施設(22.8%)、ゼロだった施設が62施設(26.2%)と、同じ県内・同じ2週間でありながら消化のかたちは大きく割れている。本記事では、この分布を匿名のまま3つの型に分け、それぞれで点検すべき在庫設計の論点を整理する。
本記事のデータについて|対象: 香川県(高松・瀬戸内エリア)全業態 N=237施設・7,574室(在庫掲載条件を満たした施設/17市区町村)。推定稼働率の集計は同県の固定コホート N=199〜201施設・5,799室。稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値で、定義は記事末尾。本記事は在庫消化の分布を扱うもので、価格水準(推定成約ADR)は扱わない。データ時点: 2026年9月13日。
Key Takeaways
— 32.8%:客室10室以上105施設の残り枠中央値(p25 15.9%・p75 57.4%)。237施設全体の54.6%より約22ポイント低く、自館の比較は同じ規模帯で取る必要がある。
— 3室と24室:完売観測7日以上の54施設と、完売観測ゼロの62施設の客室数中央値。完売日数は消化の進み具合ではなく在庫規模の小ささを映しやすい。
— 21.4ポイント:宿泊日別の直近推定OCCの幅(10月23日(金)74.3%〜10月20日(火)52.9%、N=199〜201施設)。山の日と谷の日で打ち手を分けたい。
10月中旬〜下旬の需要断面 — 連休中日と土曜に山、火曜に谷
まず対象期間の地合いを、県単位の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)で押さえておく。下図は10月11日〜24日の各宿泊日について、宿泊日の45日前時点と直近観測時点の推定OCCを並べたものだ(固定コホート N=199〜201施設・5,799室、直近観測は宿泊日ごとに残り29〜42日の時点)。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
直近観測時点で最も高いのは10月23日(金)の74.3%、次いで10月17日(土)の71.5%、10月11日(日)の70.8%。逆に最も低いのは10月20日(火)の52.9%で、上下の幅は21.4ポイントある。10月11日は10月10日(土)から12日(月・スポーツの日)へ続く3連休の中日にあたり、45日前時点の61.2%から直近までに+9.6ポイントと、14日間で最大の上積みを見せている。平日側では10月19日(月)が+3.8ポイント、10月20日(火)が+3.1ポイントと動きがあるものの、水準そのものは50%台前半にとどまる。
一方で、10月17日(土)は45日前時点73.3%に対し直近71.5%と、数値上はわずかに下がっている。掲載在庫ベースの推定OCCは分母である掲載客室数が増えれば下がるため、この動きは予約が減ったことではなく、期間中に掲載枠が積み増されたことを示唆する。土曜の需要が読めた段階で在庫を追加放出した施設が一定数あった、という読み方が自然だ。同じことは10月24日(土)でも起きており、45日前67.1%→直近67.3%とほぼ横ばいのまま推移している。
累積の進み方を見るために、山(10月11日・日/10月17日・土)と谷(10月20日・火)の3日について、宿泊日の45日前から直近までのブッキングカーブを重ねた。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
3本のカーブは形が明確に違う。10月11日(日)は45日前の61.2%から一貫して右上がりに積み上がり、残り29日時点で70.8%。10月17日(土)は45日前の時点ですでに73.3%と高い位置から始まり、その後は70〜74%の帯を横ばいで推移する——早い段階で積み上がりきったか、掲載枠の追加と消化が拮抗している形だ。10月20日(火)は49.8%から52.9%へ+3.1ポイントと、傾きがほぼ寝たまま推移している。同じ県・同じ2週間でも、伸びしろがどこに残っているかは宿泊日ごとに別物であることがわかる。このカーブの形が業態によってどう違うかは、香川県・業態別ブッキングカーブ比較でビジネス・旅館・リゾートに分けて追っている。
在庫消化の3類型 — 完売観測日数で分けると施設は4分の1ずつに割れる
ここからは施設単位の分布に移る。対象は香川県内17市区町村で、観測期間中の掲載在庫の最大値が総客室数の30%以上だった237施設(掲載枠がごく一部に限られる施設を除くための条件)。14日間のうち掲載在庫が確認できなくなった日数(完売観測日数)で3つの型に分けると、次のようになった。
在庫消化の3類型(香川県・宿泊日2026年10月11日〜24日、N=237施設)
型定義(14日中)施設数構成比残り枠中央値客室数中央値主な業態
A 完売頻発型完売観測 7日以上5422.8%21.4%3室貸別荘13・ゲストハウス10・旅館7・ビジネス7
B 部分消化型完売観測 1〜6日12151.1%64.3%4室貸別荘34・ビジネス27・ゲストハウス14・ホステル13
C 完売観測なし型完売観測 0日6226.2%65.7%24室ビジネス27・ゲストハウス10・旅館8・リゾート6
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=237施設・2026年9月13日時点)
完売観測が1日以上あった施設は175施設。そのうち162施設は、宿泊日の45日以上前の時点ですでに掲載在庫が確認できなくなる日を含んでいた。客室10室以上の105施設に限っても、完売観測のあった64施設中59施設が同様だ。ただしこれは過去の観測の記録であり、対象期間の宿泊日はいずれもまだ先にあるため、今後の在庫追加や取消により状況は変わり得る。本記事は将来の完売を予測するものではなく、取得時点で掲載在庫が確認できるかどうかを記述するものである点に留意されたい。なお同じ「完売観測日数×残り枠」の切り口を業態を絞って適用した例として、山形のビジネスホテル38施設、在庫消化は3つの型に割れるも参考になる。
「完売日数」は消化の進み具合ではなく在庫規模を映している
3類型の表で目を引くのは、最も完売観測が多いA型の客室数中央値が3室、完売観測ゼロのC型が24室と、順序が直感と逆になっていることだ。規模帯別に整理すると、この構造がはっきりする。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
客室規模帯別の残り枠と完売観測日数(N=237施設)
規模帯施設数残り枠中央値完売観測日数
中央値完売観測ゼロ完売観測7日以上
1〜4室11371.4%3日16施設(14.2%)32施設(28.3%)
5〜9室1942.0%2日5施設(26.3%)7施設(36.8%)
10〜29室3554.6%1日12施設(34.3%)7施設(20.0%)
30〜99室4127.1%1日20施設(48.8%)5施設(12.2%)
100室以上2922.3%1日9施設(31.0%)3施設(10.3%)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=237施設・2026年9月13日時点)
100室以上の29施設は残り枠中央値22.3%と最も消化が進んでいるにもかかわらず、完売観測が7日以上あったのは3施設(10.3%)にとどまる。逆に1〜4室の113施設は残り枠中央値71.4%と枠を多く残しているのに、完売観測7日以上が32施設(28.3%)と最も多い。在庫が数室の施設では1件の予約で全枠が埋まるため、完売は日単位で頻繁に起き、翌日には空いているという出入りを繰り返す。つまり完売観測日数のランキングは消化の進み具合ではなく、在庫規模の小ささを映した指標になりやすい。県内の在庫消化を語るときにこの2つを混ぜると、自館の位置づけを読み違える。規模帯によって消化の速さそのものが変わる点については、大箱は最後に埋まるのか — 客室規模別に見る在庫消化スピードの差が全国データで掘り下げている。
ホテル運営の実務に近い客室10室以上の105施設・7,257室に絞ると、残り枠中央値は32.8%、四分位は15.9%〜57.4%。完売観測日数の中央値は1日、完売観測ゼロが41施設(39.0%)、7日以上が15施設(14.3%)となる。全体の分布(中央値54.6%・完売観測日数中央値2日)と比べて、残り枠は明確に低く、完売の出方はおとなしい。ホテル規模の在庫を持つ施設どうしを比べるなら、この105施設の分布が現実的なベンチマークになる。
業態別に見ると(母集団は10室以上ではなく237施設全体)、シティホテル7施設は残り枠中央値15.7%と最も消化が進み、7施設すべてで完売観測日が1日以上あった。旅館26施設は残り枠中央値22.6%・完売観測日数中央値3日。ビジネスホテル61施設は残り枠中央値41.9%・完売観測日数中央値1日で、完売観測ゼロが27施設(44.3%)と最も多い。リゾートホテル12施設は残り枠中央値50.3%・完売観測日数中央値0.5日だった。
曜日で見る完売の出方 — 連休中日と土曜に集中
14日間の各宿泊日について、237施設のうち完売観測があった施設の割合を並べると、10月11日(日・連休中日)が44.3%で最も高く、10月24日(土)40.5%、10月17日(土)37.1%が続く。最も低いのは10月20日(火)の14.8%で、平日は概ね15〜25%の帯に収まる。客室10室以上の105施設に絞ると振れ幅は小さくなり、最高が10月17日(土)の25.7%、最低が10月19日(月)・10月20日(火)の9.5%となる。
週後半に完売が寄る形自体は珍しくないが、注目すべきは水準の差ではなく幅の差だ。全体では29.5ポイント開く曜日間の差が、10室以上では16.2ポイントに縮む。小規模在庫の施設は週末に一斉に閉まり平日は一斉に開く、という振れの大きい動き方をしている。県全体の完売施設率をそのまま自館の需給感覚に使うと、規模が大きい施設ほど週末を過大評価しやすいことになる。
香川県(高松・瀬戸内エリア)の宿泊施設を運営するレベニューマネージャーへ — 示唆とアクションプラン
(1) 自館のベンチマークは「県全体」ではなく「同じ規模帯」で取りたい。全体の残り枠中央値54.6%と、客室10室以上の32.8%では見え方が22ポイント近く違う。30〜99室なら27.1%、100室以上なら22.3%が中央値で、自館の対象14日間の平均残り枠がこの水準より大きく上振れしているなら、消化が遅れているのか、意図的に枠を残しているのかを切り分ける価値がある。
(2) 完売観測日数の多さを「売れている証拠」と読まない。完売観測7日以上の54施設は客室数中央値3室で、在庫が小さいほど頻繁に閉まる。一方で完売観測ゼロの62施設は客室数中央値24室と規模が大きい。自館が完売観測ゼロでも、残り枠が同規模帯の中央値並みなら消化そのものは平均的である可能性が高い。
(3) 宿泊日ごとに残っている伸びしろが違う。10月11日(日)は45日前から直近までに推定OCCが+9.6ポイント積み上がった一方、10月17日(土)は45日前時点ですでに73.3%で、その後は70〜74%の横ばい。10月20日(火)は52.9%どまり。同じ14日間に対して一律の販促を当てるのではなく、山の日は取りこぼしの点検、谷の日は需要創出、と役割を分けたい。
(4) 土曜に推定OCCが下がった動きは、在庫の出し方の問題として読める。10月17日・24日で45日前時点から水準がほぼ動いていないのは、掲載枠の積み増しと消化が拮抗している可能性を示す。需要が強い日に後から枠を出すこと自体は選択肢だが、出すタイミングが遅れれば強い日の単価形成の機会を自館で狭めることになる。強い曜日の枠出し計画を、期間全体の設計として見直す余地がある。
以下は、対象期間(10月11日〜24日)に対する時間軸別のアクションプランである。判断トリガーはすべて本記事で提示した数値に紐づけている。
対象期間(10月11日〜24日)に対する時間軸別アクションプラン
時間軸打ち手判断トリガー(記事中の数値)狙い
今日〜今週14日分の残り枠を1枚に並べ、同規模帯の中央値と突き合わせる自館の期間平均残り枠が、30〜99室なら27.1%・100室以上なら22.3%・10〜29室なら54.6%を大きく上回るか遅れている日と意図的に残している日の切り分け
今日〜今週完売観測が出ている日について、閉じた時点が意図どおりか点検する完売観測のある175施設中162施設が宿泊日の45日以上前から閉まる日を含む、という分布に対して自館が早すぎないか強い日を早期に閉じ切ることによる機会損失の回避
今日〜今週10月11日(日)・17日(土)・23日(金)・24日(土)の枠出し計画を先に固める4日の直近推定OCCが74.3%(23日)/71.5%(17日)/70.8%(11日)/67.3%(24日)と、期間の谷である10月20日(火)の52.9%を14ポイント以上上回っているか強い日の在庫を後出しにしない設計
2週間以内谷の平日に向けた滞在動機(連泊・地域周遊・早め到着)のプラン構成を用意する10月19日(月)55.5%・20日(火)52.9%と、山の日と20ポイント前後の差があるか平日の底上げと期間全体の平準化
2週間以内完売観測が14日間でゼロの日が続く場合、掲載している枠の内訳(室タイプ・人数条件・食事区分)を棚卸しする完売観測ゼロ施設が10室以上では41施設(39.0%)と珍しくない一方、自館の残り枠が同規模帯の第3四分位(10室以上で57.4%)を超えているか売る枠が限定されていないかの確認
来月に向けて今回の14日間を「山・中間・谷」の3分類で記録し、11月以降のカレンダー設計のひな型にする14日間の直近推定OCCの上下幅が21.4ポイントあったという事実曜日・連休を織り込んだ在庫設計の反復精度を上げる
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
まとめ — 3つの物差し
第1に、比較する母集団を規模で揃える。香川県237施設の残り枠中央値は54.6%だが、客室10室以上の105施設では32.8%。どちらが正しいという話ではなく、自館と同じ在庫規模の分布を見なければ位置づけが読めない、というだけのことである。
第2に、完売の頻度と消化の進み具合を分けて扱う。完売観測7日以上の施設は客室数中央値3室、完売観測ゼロの施設は同24室。完売日数は在庫規模を映す指標であり、消化の進み具合は残り枠で見る。2つを別々の物差しとして持っておくと、A型(完売頻発)なら「閉じるのが早すぎないか」、B型(部分消化)なら「残りの日をどう動かすか」、C型(完売観測なし)なら「そもそも出している枠は適切か」と、点検する論点が自動的に決まる。
第3に、期間ではなく宿泊日ごとに設計する。10月11日〜24日の直近推定OCCは52.9%から74.3%まで21.4ポイント開いた。14日を一括りにした販促は、山の日では単価形成の機会を狭め、谷の日では足りない。連休中日と土曜、平日の谷では、打ち手の種類そのものが違う。
データについて
指標の定義と集計対象
推定OCCの定義OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。本記事ではその施設数を N= として併記)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。本記事では「推定OCC(OTA掲載在庫ベース)」と表記。対象月は2026年10月(宿泊日2026年10月11日〜24日)。
ブッキングカーブ宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。本記事の各宿泊日の直近観測時点は、宿泊日までの残り29日〜42日にあたる。累積推移の図はいずれも残り45日以内の観測のみで構成している。
残り枠・完売観測日数残り枠=対象14日間における掲載在庫室数の総客室数に対する割合の平均。完売観測日数=14日間のうち、OTA等で掲載在庫が確認できなくなった時点が観測された宿泊日の数。完売施設率=OTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合(推定)。集計対象は、観測期間中の掲載在庫の最大値が総客室数の30%以上だった施設に限定している。
価格指標について本記事では価格水準(推定成約ADR)は扱っていない。参考までに定義を示すと、推定成約ADRとは、OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)であり、過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。
対象Nの内訳施設別の在庫消化集計:香川県17市区町村、条件を満たした N=237施設・7,574室(うち客室10室以上 N=105施設・7,257室/1〜4室 113・5〜9室 19・10〜29室 35・30〜99室 41・100室以上 29)。業態内訳はビジネスホテル61・貸別荘50・ゲストハウス34・旅館26・ホステル18・リゾートホテル12・シティホテル7・その他29。県単位の推定OCC集計:固定コホート N=199〜201施設・5,799室(主要予約サイト掲載ベース、観測カバレッジ 99.5〜100%)。
データ時点データ時点: 2026年9月13日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。対象期間の宿泊日はいずれも取得時点より先にあり、今後の在庫追加・取消により状況は変わり得る。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
