連載:M高史の陸上まるかじり
M高史
2026/09/02
(最終更新:2026/09/02)
#M高史の陸上まるかじり
#高校生

滋賀学園高校陸上部の売木村合宿に伺ってきました!(撮影・橘翔一郎コーチ)
今回の「M高史の陸上まるかじり」は滋賀学園高校陸上部のお話です。毎年、インターハイや都大路で活躍する選手を輩出し、800m日本記録保持者・落合晃選手(駒澤大学)をはじめ、卒業後も活躍する選手が多い滋賀学園高校。強さの源を学ばせていただきたく、長野県売木(うるぎ)村で行われた夏合宿に伺ってきました。
在校生、卒業生も活躍の滋賀学園高校
滋賀学園高校といえば、卒業生では落合晃選手(駒澤大学)、柴田侑選手(城西大学)、安原太陽選手(Kao)、安原海晴選手(駒澤大学)の「安原兄弟」、梶谷優斗選手(住友電工)をはじめ、多くの選手が大学や社会人でも活躍を続けています。
特に今季、駒澤大学の落合晃選手は800mで日本記録を2度更新し、1分43秒45まで記録を伸ばしました。7月10日にはモナコでのダイヤモンドリーグ初戦に、1000mで2分15秒24の“特大”日本新記録で世界の強豪選手に挑みました。城西大学の柴田侑選手はセイコーGP3000mで従来の日本記録を上回る7分39秒51で3位に。5000mでも13分22秒46の好記録をマークしています。
今年のインターハイでは1500mで鈴木佑岳選手(3年)が決勝に進出し、3分50秒37で11位となりました。鈴木選手は近畿高校総体の予選で出した3分47秒16が自己ベストです。
滋賀学園高校陸上部で指導されているのは大河亨監督、橘翔一郎コーチです。

指導されているのは大河亨監督(左)と橘翔一郎コーチ(右)です
売木村の大自然に囲まれて
この夏も岐阜県の御嶽合宿をはじめ、じっくり鍛錬を積み重ねてきました。そして、夏休み終盤となる8月下旬に長野県の売木村で合宿が行われました。昨年から売木村で合宿をしている滋賀学園高校。売木村は長野県南部に位置しており人口は約450人、村内に信号は一つしかない小さな村です。近年、陸上の合宿地として少しずつ注目を集めており、2025年には「NEXT走る村うるぎプロジェクト」が始動。高校や大学の陸上部、あるいは本気モードな市民ランナーさんの合宿として、訪れる選手やランナーさんが増えてきています。

人口約450人の売木村。大自然に囲まれて、心身を鍛えるのに最高の環境です(撮影・M高史)
村の名前に「木」という字が入るくらい、村はヒノキをはじめ、たくさんの木々、山、森、大自然に囲まれています。1周3.5kmのロードコース、400mの土トラック、トラック内を利用した1周380mのクロスカントリーコースもあります。その他、起伏が多いので、ジョグをするだけでも力がつきそうです。
合宿に伺った日は、ちょうどクロカンコースを使った練習の日でした。クロカンコースは1周380mですが、昨年の合宿時に大河監督が発案されて、今年に入って三つのコブが出来上がり、よりクロカンコースらしくなりました。自然豊かな場所ということで、草が伸びるスピードも早く、練習が始まる1時間前には大河監督、橘コーチが草刈りをされていました。
380mのクロカンコースを10周、それを3セットです。先生方が文字通り汗をかいて整備してくださったコースということで、生徒さんたちも気合の入った走りをしています。M高史もBチームで参加させていただき、なんとか2セットまでご一緒しましたが、そこで力尽きました(汗)。大河監督が発案された三つのコブは「キャメルバンプ」と命名されました。ラクダのコブを意味するこのキャメルバンプ。周回を重ねるごとにボディーブローのようにじわじわ効いてきます。鍛えるのに素晴らしい環境ですね。

クロカンコースでのトレーニング。M高史も参加させていただきました!(撮影・橘翔一郎コーチ)
そのあと200mを5本疾走し、間を100mジョグでつなぎます。200mを速いペースで駆け抜けたあと、この100mがあっという間に過ぎていきます。心拍も回復しないまますぐ次の200mが始まっていくので、本数を重ねるごとにじわじわキツくなってきます。レース後半、体がキツくなってからも粘って体を動かす練習になりますね。

今年からクロカンコースに三つのコブができ、細かな起伏でじっくり脚作りです(撮影・橘翔一郎コーチ)
練習後は村内の温泉につかって疲れた体を癒やし、宿泊先のポレポレVillageさんで採れたての野菜を中心においしく栄養たっぷりの食事をいただき、翌日の練習に備えます。
合宿最終日の朝練習ではロードを使った集団走でした。宿から急な坂を駆け降りてきて、3.5kmの周回コースを4周、そして最後は宿にかけての急な坂を上って終了です。M高史は4周まではなんとかついていくことができましたが、最後の急坂で集団から後れをとり、やっとこさ宿にたどりつきました。こんなにハードなトレーニングを文字通り「朝飯前」にこなしていく選手の皆さんを尊敬します!
また、滋賀学園高校では給水は基本的に自分で準備して、自分でとります。こういった部分にもたくましさ、タフさが磨かれると感じました。
滋賀学園高校名物・下駄トレーニング!
そして、滋賀学園高校では約10年前から下駄(げた)を使ったトレーニングを導入しています。下駄トレーニングの第一人者で数多くのアスリートを指導されている宮崎要輔さんを招いて、下駄トレーニングを行っています。下駄でトレーニングすることで、腹圧を高め、姿勢・軸・バランスが自然と整い、体幹強化やランニングフォームの改善に取り組んできました。
ここ最近、下駄トレーニングを取り入れている選手やチームも少しずつ増えてきましたが、陸上界で下駄トレーニングといえば滋賀学園高校と真っ先に思い浮かびますよね。

約10年前から下駄トレーニングを導入している滋賀学園高校。今回はM高史が持参した下駄でトレーニングしていただきました(撮影・橘翔一郎コーチ)
今回、午前中の軽めの練習という時間帯にちょうど時間をとっていただき、M高史が持参した下駄も滋賀学園高校の皆さんに履いていただきました。
普段から取り入れているだけあって、どの選手もスムーズに履きこなし、良い感覚をつかんでいただけたようです。さらに印象的だったのは、トレーニングが終わってからでした。使った下駄を拭いてきれいにしていただくのですが、大河監督は生徒さんに任せるのではなく、自ら率先して下駄の掃除をしてくださいました。
大河監督は「道具を大切にする選手、感謝の気持ちを持ち続ける選手は強いです」と話されていました。もう20年以上前になりますが、当時、ケニアからの留学生、ジョン・カリウキ選手が在籍していた頃、カリウキ選手は使い古しの歯ブラシを使い、練習後に毎日きれいにシューズを掃除していたそうです。

下駄トレーニングのあとは下駄の掃除です。大河監督自ら率先して掃除されている姿に心を打たれました(撮影・橘翔一郎コーチ)
合宿を通じて感じた「人間力」の成長
滋賀学園高校では在学中はもちろん、高校卒業後も活躍する選手が多いですが、大河監督、橘コーチの指導力はもちろんのこと、下駄を使ったトレーニングで身体の使い方がうまいフォームのきれいな選手が多いというのもありますが、やはり「人間力」と今回の合宿を通じて実感しました。大河監督も「社会に出てからも生き抜く力をつけてほしいです」とおっしゃいます。
宿泊した売木村のポレポレVillageさんでは、収穫の手伝いもさせていただいたそうです。生徒さんたちも、トマト、きゅうり、みょうがを収穫。実際に自分たちで収穫した野菜が食卓に並ぶのはうれしいですよね。自然に囲まれて、競技や勉強だけでなく、生きていく力も育む、人としての成長は大河監督が伝えたいメッセージでもあります。

合宿最終日の朝食。採れたての野菜を中心においしく栄養補給!(撮影・M高史)
実はチームの合宿に臨んでいないメンバーも、バイト合宿として参加しています。滋賀学園高校では約25年前からバイト合宿を行っていて、毎年4人ほどが約1カ月にわたり、岐阜県御嶽の合宿地で住み込みのアルバイトをしながら空き時間に練習を積むそうです。「仕事をすること、お金をいただくことの大変さやありがたみを感じてほしいです」と大河監督。毎年、選手の顔つきや行動の変化が見られるそうで、成長ぶりを楽しみにされていました。
クロカンコースの草刈り、下駄の掃除など率先して大河監督自ら動かれている姿に生徒さんたちも自然と感謝の気持ちを持ったり、自発的に積極的に行動したりする姿勢につながっていることでしょう。
生徒さんたちは練習や行動などでは準備もテキパキ、常に時間に余裕を持って行動していますし、練習で少しでも弱気な走りをしている選手がいれば、大河監督から熱い檄が飛びます。大河監督の声を聞くと、選手の皆さんも身体が反応し、懸命に粘りの走りをされているのが印象的でした。

合宿最終日、「現状打破!」のかけ声とともに記念撮影(撮影・橘翔一郎コーチ)
一方で、大河監督は練習以外の時間では冗談を言ったり、生徒さんや橘コーチと一緒に豪快に笑ったりしておられます。大河監督は大の阪神ファンで、阪神が勝つと大喜び、負けると本気で悔しがる人間味あふれる太陽のような方です。
今回の売木村での合宿を通じて、滋賀学園高校の強さの理由をより実感しましたし、卒業してからも活躍する選手が今後も出てくることでしょう。滋賀学園高校の皆さん、現状打破!
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