愛知県美術館(名古屋市東区)で「没後100年記念 ビゲロー 幻のコレクションと近代日本画の夜明け ――日本美術に魅せられたボストン人――」が10月30日から開催されます。

本展は、明治の日本画の支援者であり、ボストン美術館の日本美術コレクションの礎を築いた大コレクターとして知られるウィリアム・ビゲロー(1850~1926年)の没後100年を記念して開催するものです。一度はアメリカに渡り、昭和初期に日本に戻った肉筆浮世絵を中心とするビゲロー旧蔵の美術作品や、ビゲローが支援した狩野芳崖、橋本雅邦ら鑑画会周辺で活躍した画家たちによる日本画が展示されます。

また、こうした作品とともに、仏教に帰依したビゲローが終生の拠りどころとした園城寺法明院(滋賀県大津市)に残る遺愛の品々も紹介されます。旧ビゲロー・コレクションで現在愛知県美術館が所蔵する橋本雅邦《秋景山水図》を含むゆかりの美術作品・資料を通して、ビゲローの日本美術への愛情と貢献について振り返ります。

没後100年記念 ビゲロー 幻のコレクションと近代日本画の夜明け
――日本美術に魅せられたボストン人――

会場:愛知県美術館(名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター10階)

会期:2026年10月30日(金)~12月13日(日)[41日間]
※会期中、一部展示替有
【前期:10/30~11/15 後期:11/17~12/13】

開館時間:10:00-17:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)

休館日:11/2(月)、16(月)、30(月)、12/7(月)

観覧料(当日券):一般 1,900円、大学生 1,000円、高校生 800円、中学生以下 無料
※本展のチケットで会期中に限りコレクション展も観覧できます。
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(愛護手帳)、特定医療費受給者証(指定難病)または指定難病登録者証のいずれかをお持ちの方とその付き添いの方(1名)は無料で観覧可能。当日会場で各種手帳(ミライロID可)、特定医療費受給者証(指定難病)または指定難病登録者証を要提示
※学生・生徒の方は当日会場で学生証(生徒手帳)を要提示

アクセス:
地下鉄東山線・名城線「栄」駅、名鉄瀬戸線「栄町」駅下車、オアシス21連絡通路利用徒歩3分

詳細は、愛知県美術館公式サイトまで。

本展の見どころ
1 国内の旧ビゲロー・コレクションが大集合

本展では、各地よりビゲロー旧蔵作品が集結。肉筆浮世絵や円山四条派絵画などを通して、ビゲローがどのような日本美術を好んだのか、紹介されます。

森狙仙《雨中桜五匹猿図》江戸時代(18-19世紀)、兵庫県立美術館(頴川コレクション)蔵【前期展示】
2 狩野芳崖《悲母観音》、《不動明王》など、日本画の名品を多数展示

本展では、新しいスタイルを模索した明治の日本画の傑作が多数登場。数々の名品を通して、画家たちや彼らのリーダーだったフェノロサを支援したビゲローの貢献に光が当てられます。

重要文化財 狩野芳崖《不動明王》明治20(1887)年頃、東京藝術大学大学美術館蔵【前期展示】
3 花鳥画に優れ、名古屋で活躍した女性画家・前田錦楓

前田錦楓は、ビゲローが支援した狩野芳崖と橋本雅邦の弟子でした。本展では、名古屋で活躍した、この知られざる女性作家についても掘り下げられます。

前田錦楓《紫陽花》明治20-29(1887-1896)年、前田速念寺蔵【通期展示】
4 仏教徒となったビゲローゆかりの品々

日本をこよなく愛したビゲローは、熱心な仏教徒でもありました。本展では、ビゲローゆかりの園城寺法明院に伝わる襖絵や資料の数々も公開されます。

《ビゲロー肖像写真》明治時代(19世紀)、園城寺(法明院)蔵【通期展示】
展示構成
Ⅰ 日本美術コレクター、ビゲロー

4万点以上の日本美術・工芸作品を集めたビゲロー。彼がアメリカに持ち帰ったコレクションの一部は、実は昭和初期に日本へ戻り、オークションに出品されていました。その後日本各地で大切に保管されてきた、喜多川歌麿や葛飾北斎らの肉筆浮世絵をはじめとするビゲロー旧蔵の「幻のコレクション」を再び集結させることによって、日本美術を愛したビゲローのまなざしを浮かびあがらせます。

喜多川歌麿《太夫と禿図》寛政(1789-1801年)頃、城西大学水田美術館蔵【前期展示】
橋本雅邦《秋景山水図》明治20(1887)年頃、愛知県美術館蔵【通期展示】
II 日本画の支援者、ビゲロー

明治の日本画改革運動のリーダー・フェノロサに共鳴したビゲローは、強力なパトロンとして運動を支えました。急激に欧化しつつあった当時の日本で、2人は日本美術がいかに独特で大切か、世に訴えました。ビゲローが支援しフェノロサが指導した美術団体「鑑画会」では、狩野芳崖や橋本雅邦らが日本の伝統的な絵画に西洋の描き方を取り入れるなどして、新しい時代にふさわしい「日本画」の創出をめざしました。その後ビゲローは、岡倉天心を中心に橋本雅邦、横山大観、菱田春草、下村観山らが日本美術院を設立した際にも寄附を行うなど、その支援は鑑画会解散以降の日本画にも及びました。

重要文化財 狩野芳崖《悲母観音》明治21(1888)年、東京藝術大学大学美術館蔵【12/1-13展示】
小林永濯《神話図》幕末-明治、板橋区立美術館蔵【後期展示】
特集 名古屋で活躍、前田錦楓

前田錦楓は「鑑画会」で活躍した唯一の女性画家です。狩野芳崖の弟子であった彼女は名古屋の前田速念寺に嫁ぎ、そこで制作に励みました。錦楓はデザインの分野でも才能を発揮し、その優れた図案は鑑画会が創設した「ビゲロー賞」を受賞しています。

前田錦楓《蓮池飛燕》(部分)明治26(1893)年頃、前田速念寺蔵【通期展示】
III 仏教徒、ビゲロー

ビゲローはフェノロサとともに園城寺法明院(大津市)で受戒し、仏教に帰依しました。法明院には鶴沢探索や池大雅の襖絵のほか、フェノロサが寄贈した絵画やビゲローが贈った地球儀、望遠鏡などが残されています。帰国後も仏の教えの理解に努めたビゲローは、本人の遺言により、法明院の墓地にフェノロサとともに眠ります。

鶴沢探索《群鶴図》江戸時代(18世紀)、園城寺(法明院)蔵【通期展示】

明治という激動の時代、日本の伝統美に深い愛を注ぎ、その保護と新たな発展に人生を捧げたアメリカ人、ウィリアム・ビゲロー。彼の没後100年を記念した本展は、かつて海を渡り、再び日本へと奇跡的な帰還を果たした「幻のコレクション」が一堂に会する大変貴重な機会です。喜多川歌麿や葛飾北斎らによる至高の肉筆浮世絵から、近代日本画の礎となった狩野芳崖の重要文化財《悲母観音》や《不動明王》、そして地元名古屋で鮮烈な才能を発揮した女性画家・前田錦楓の知られざる名品まで、至高の美術作品の数々をじっくりと堪能できます。さらに、彼が終生の精神的拠りどころとした園城寺法明院に伝わる遺愛の品々からは、一人のコレクターに留まらない「仏教徒ビゲロー」の深い精神世界にも触れることができるでしょう。美を愛し、日本の夜明けを支えたボストン人のまなざしを、ぜひ会場で体感してみてください。(美術展ナビ)

Share.