「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、

京都シネマスタッフによるイチオシ作品をご紹介します。

9月は拡大版!

PartⅠにて脚本家・奥寺佐渡子の特集上映企画について、PartⅡではさらにその中から1作品ピックアップして取り上げます。

 

『お引越し』から『国宝』まで

日本映画を支えてきた脚本家をたどる2週間

 本特集は、日本映画の第一線で数々の作品を支えてきた脚本家・奥寺佐渡子に焦点を当て、その創作の歩みをスクリーンでたどる貴重な機会です。1993年公開の『お引越し』で映画脚本デビューを果たして以降、奥寺は実写映画、アニメーション、文学作品の映画化など、幅広いジャンルの作品に参加してきました。人物の感情を過度に説明することなく、さりげない会話や行動の積み重ねによってドラマを立ち上げる筆致は、多くの観客の記憶に残る映画の時間を生み出してきました。

 近年も話題作への参加を通して、その確かな脚本力にあらためて注目が集まっています。子どもの目線から家族の変化を見つめたデビュー作から、最新作『国宝』に至るまで、奥寺佐渡子がどのように人物を描き、物語を組み立て、日本映画の豊かな表現を支えてきたのか。本特集は、その30年にわたる軌跡をまとめて体験できる、映画ファン必見の特集上映となります。

家族、学校、青春、芸の道――

日本映画を支えた奥寺佐渡子の脚本が描いてきたもの。

 

■『お引越し』

 本特集で上映する『お引越し』は、両親の別居をきっかけに揺れ動く少女の成長を描いた作品です。子どもの視点から家族の変化を見つめる物語でありながら、単なる家庭劇にとどまらず、ひとりの少女が現実を受け止めていく過程が丁寧に描かれています。奥寺佐渡子にとって映画脚本デビュー作となった本作には、登場人物の心の動きを繊細にすくい上げる、その後の仕事にも通じるまなざしがすでに表れています。

 

走る、走る、走る!6年生の少女の揺れ動く心と大人への階段。                 京都に住む明るく元気なレンコは、父ケンイチが家を出て、母ナズナとの二人暮らしが始まった。ナズナは新生活のための規則を作るが、レンコはナズナの気持ちが分からない。離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したりと反抗する…。

 

■『学校の怪談』

  『学校の怪談』は、1990年代を代表するジュブナイル・ホラーとして、多くの観客に親しまれてきた作品です。学校という誰にとっても身近な場所を舞台に、子供たちが不思議な出来事に遭遇する物語は、恐怖だけでなく、夏休み前の空気や子どもたちの関係性も含めて記憶に残ります。怪談という題材の中に子どもたちの行動や感情の変化を自然に織り込み、娯楽映画としての楽しさと人物描写を両立させている点に、奥寺脚本の確かな構成力を見ることができます。

 

ユーモラスな怪物たちが大暴れ!恐怖と大冒険を描く夏休みホラー。

終業式の日。小学2年生の美夏は、忘れた絵の具箱を取りに小学校へ戻る。ところが、サッカーボールがひとりでに転がっていく不思議な光景を目撃し、オバケが出ると噂の旧校舎に入り込んでしまう。5年生の姉・亜樹は、妹を探しに小学校へ戻ってくるが…。

 

■『時をかける少女 4K』

 筒井康隆の小説を原作に、細田守監督が2006年にアニメーション映画として発表した作品。原作の設定を踏まえつつ、現代の高校生・紺野真琴を主人公に構成されている。奥寺佐渡子が脚本を担当し、時間をめぐるSF的な設定と、若者たちの日常や関係の変化を描いている。

 

人生のかけがえのない時間”の意味を見出す、爽快な青春映画

高校生の紺野真琴は、同級生の間宮千昭、津田功介とともに日々を過ごしている。ある出来事をきっかけに、真琴は時間を跳躍する「タイムリープ」の力を得る。最初はその力を気軽に使っていた真琴だが、やがて自分の行動が周囲の人間関係や出来事に影響を及ぼしていることに気づいていく……。

 

■『国宝』

 『国宝』は、吉田修一の同名小説を原作に、歌舞伎の世界に生きる人々の長い歩みを描く作品です。任侠の一門に生まれた喜久雄と、上方歌舞伎の名門の御曹司・俊介。出自の異なる二人を軸に、芸、家柄、修業、舞台、師弟関係、ライバル関係が大きな時間の流れの中で描かれます。奥寺佐渡子は、重厚な原作世界を映画として成立させるために、人物の関係性と時間の推移を整理しながら、壮大な物語を観客に届ける脚本へと結実させています。

 

世界でただ一人の存在“国宝”へと駆けあがる男の壮大な一代記。

任侠の一門に生まれた美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主である花井半二郎に引き取られて、歌舞伎の世界へ飛び込む。半二郎の息子・俊介と出会い、ともに芸に青春を捧げていくのだが…。

『お引越し』から『学校の怪談』、『時をかける少女』、そして『国宝』へと続く流れの中で観ることで、奥寺佐渡子がいかに多様な題材に向き合い、それぞれの作品にふさわしい物語の形を作り上げてきたかが、より立体的に見えてくる特集となっております。

 会期中の9月21日(月)には、『国宝』上映後に奥寺佐渡子氏が登壇するティーチインも開催します。加えて同月20日(日)には、『学校の怪談』上映後に怪談・オカルト研究家の吉田悠軌氏によるオンライントーク、同月24日(木)には『国宝』上映後に、本作音楽担当の原摩利彦氏によるティーチインを開催します。

執筆:川添結生(京都シネマ)

――特集上映開催に向けて脚本家奥寺佐渡子さんからコメントが届きました!――

 このたび4作品も上映していただくことになりました。ありがとう、京都シネマさん!

デビュー作「お引越し」(原作:ひこ・田中 脚本:小此木聡と共作)の撮影は1992年、京都で行われ、私も見に行きました。デビュー作ですから現場見学も初めてです。夏の京都は暑い。けれど空も雲も町も川も輝いていました。カメラの後ろで、大勢のスタッフが働いているのを見たのも初めてのことでした。これが映画の撮影現場というものか。私はそこに足を踏み入れたんだ! 当時、奥寺26歳。現場の指揮をとる相米慎二監督44歳……44歳? 今の私より、はるかに年下だったの?! それもそのはず、デビューから30年ほど経ちました。才能あふれる監督・キャスト・スタッフと苦楽をともにした、あっという間の30年です。私がどれほど出会いに恵まれたのか、今回上映される4作品をご覧になれば一目瞭然。ティーチインにも、ぜひ足をお運び下さい。口下手ですが、がんばります。

奥寺佐渡子

 

9月11日(金)から9月24日(木)

「脚本家 奥寺佐渡子の世界 30年の軌跡『お引越し』から『国宝』まで」

 京都シネマにて2週間限定特集上映 

お引越し 4Kリマスター版

1993|日本|124分|

監督:相米慎二

脚本:奥寺佐渡子、小此木聡

原作:ひこ・田中「お引越し」

製作:伊地智啓、安田匡裕

撮影:栗田豊通

出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶

©1993/2023 讀賣テレビ放送株式会社

学校の怪談

1995|日本|100分|

監督:平山秀幸

脚本:奥寺佐渡子

撮影:柴崎幸三

出演:野村宏伸、杉山亜矢子、佐藤正宏、笹野高史、余貴美子、 遠山真澄、米澤史織、熱田一、塚田純一郎

©1995 東宝株式会社

★☆『学校の怪談』についてPartⅡでより詳しくご紹介☆★

時をかける少女 4K

2006|日本|100分|

監督:細田守

脚本:奥寺佐渡子

原作:筒井康隆

出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、垣内彩未、谷村美月

©「時をかける少女」製作委員会2006

国宝

2025|日本|175分|

監督:李相日

脚本:奥寺佐渡子

原作:「国宝」吉田修一著(朝日文庫/朝日新聞出版刊)

製作幹事:MYRIAGON STUDIO

制作プロダクション:クレデウス

出演:吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、中村鴈治郎、田中泯、渡辺謙

配給:東宝

©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会

【京都シネマクラブ公式HP】

▶https://kyoto-cinemaclub.com/

【上映スケジュール】

上映時間などの詳細は京都シネマ公式ホームページにてご確認下さい。

京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。

日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。

問い合わせ|京都シネマ TEL=075-353-4723

HP=https://www.kyotocinema.jp/

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