8月8日、ハンガリー南部の町バヤのドナウ川の底に沈んでいた第2次世界大戦時代の船の上に立つ男性。 Robert Nemeti/Anadolu via Getty Images記録的な熱波がヨーロッパを襲い、華氏100度(摂氏約37.8度)を超える地域が相次いでいる。水位の低下により、ヨーロッパの主要河川で先史時代や20世紀の遺物が次々と姿を現した。この水位の低下は、水上貨物輸送にも深刻な打撃を与えている。
記録的な猛暑と少雨が重なり、ヨーロッパの多くの河川はこの夏、例年より水位が低下している。その結果、かつて川底に沈んでいた遺物が露出し、ヨーロッパ大陸のサプライチェーンの脆弱性も浮き彫りになった。

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今回の危機の中心にあるのが、ドナウ川とライン川という2つの大河だ。
両河川は、ヨーロッパ全域の水運と貨物輸送を支える大動脈として機能している。欧州統計局(Eurostat)によると、2025年、欧州連合(EU)域内の内陸水運全体のうちドイツとオランダが占める割合は72%近くに達した。
この2つの川には、水運ルートであるというだけでなく、戦時中の出来事や先史時代の動物の移動にまでさかのぼる長い歴史がある。そして今夏、記録的な低水位によって、長らく水中に眠っていた歴史的遺物が次々と姿を現している。
ブルガリア北部の村リャホヴォでは、地元住民が偶然、ケナガマンモスの遺骸を発見し、地元当局や近郊の町ルセにあるルセ地域歴史博物館に届け出た。
同博物館の学芸員で生態学者のクラシミル・キーロフ(Krasimir Kirov)氏はBusiness Insiderの取材に対し、この地域でマンモスの遺骸が見つかったのは今回が初めてではなく、発見の記録は20世紀半ばにまでさかのぼると語った。
ただし、現在の水位低下と直射日光は、露出した骨の保存状態を脅かす要因になっていると指摘する。
「水は、いわば遺物の状態を保つ役割を果たしている」とキーロフ氏は語る。「水位が下がって骨が空気に触れると、多くの場合、不可逆的なダメージにつながってしまう。専門家が手遅れになる前に対応できなければ、被害はさらに深刻になる」
両河川のほかの地域でも、水位の低下によって第2次世界大戦時代の沈没船をはじめとする歴史的遺物が次々と露出している。
失われていた遺物の発見は、ヨーロッパを襲う今夏の猛暑がもたらした数少ないプラス面の一つと言えるだろう。だがその裏で、水位の激減は内陸水運の貨物輸送にも打撃を与えている。欧州統計局によると、EU域内の内陸水運による貨物輸送量は、2025年時点ですでに2024年比で3%減少していた。
特に、ヨーロッパ最大の経済大国ドイツでは、この水位低下による経済的打撃が深刻なものとなっている。オランダの大手金融グループINGの分析によると、水位低下の影響で同国の今年の国内総生産(GDP)成長率は0.3ポイント押し下げられる可能性があり、その損失規模は数十億ユーロに達するという。
湿地保護を訴える国際NGO団体ウェットランズ・インターナショナル(Wetlands International)の広報担当リチャード・リー(Richard Lee)氏は、8月6日に公開された動画の中で、気候変動に加え、ヨーロッパ各地で行われてきた浚渫(しゅんせつ)や排水事業が今回の水位危機を助長してきたと警鐘を鳴らした。
欧州委員会共同研究センター(Joint Research Centre)の予測によれば、9月にかけても平年より気温が高く乾燥した状態が続く見込みで、低水位が長期化する可能性があるという。
ここからは、両河川で発見された遺物を見ていこう。
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複数の第2次世界大戦時の沈没船が姿を現した
セルビア東部のプラホヴォ付近にある第2次世界大戦時のドイツ軍艦の残骸。1944年9月、撤退するナチス軍によって沈められた数十隻のうちの1隻だ。 REUTERS
オランダでは19世紀の沈没船もむき出しに
オランダ東部で1895年に沈没した船「デ・ホープ号(De Hoop)」の残骸。REUTERS
ブルガリア・リャホヴォの住民が、ドナウ川で若いケナガマンモスの下顎骨、大腿骨、牙、肋骨を発見
考古学者のクラシミル・キーロフ氏によると、保存処理には約3カ月かかるという。処理後は、ブルガリア・ルセの地域歴史博物館で展示される予定だ。 LYUBOSLAV YORDANOV/SLIVO POLE MU/Reuters
水位低下を逆手に取り、小さな歴史的遺物を探す人々も
考古学者のクリスティアン・ガンザー(Christian Ganser)氏は、州立文化財保護局の許可を得て、ライン川岸で歴史的な「お宝」を探している。 Christian Butt/picture alliance via Getty Images
ドイツのライン川岸で、考古学者が青銅器時代の鏃(やじり)を発見
ライン川の岸辺で鏃を掲げるガンザー氏。 Christian Butt/picture alliance via Getty Images
ほぼ完全な姿のまま川底から姿を現した20世紀のウナギ漁船
8月11日、ドイツ西部の都市ノイスのライン川の岸辺に打ち上げられた、かつてのウナギ漁船。 Hesham Elsherif/Anadolu via Getty Images
過去の干ばつでも、爆発物を積んだままのドイツ軍艦がむき出しになった
セルビア東部のプラホヴォ付近のドナウ川から姿を現した、第2次世界大戦時のドイツ軍艦の残骸。過去にも水位が下がるたびに姿を現してきたが、再び水位が上がって沈む前に、セルビア政府はそのほとんどを撤去できずにいる。Darko Vojinovic/AP
近年の遺物も発見された
8月11日、オランダ東部の都市アーネムのネーデルレイン川の岸辺には、川底にあった古い自転車がむき出しになり、ハウスボートが座礁していた。 Sjoerd van der Wal/Getty Images
考古学者たちは、水位が再び上昇して遺物が沈む前に、急いで発掘作業を進めるプレッシャーにさらされている
スイスとフランスの国境にあるブルネ湖の湖底に取り残されたボート。 REUTERS
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