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ヒューマノイドロボットの社会実装を目指す民間企業のコンソーシアム「J-HRTI(Japan Humanoid Robot Training&Implementation:ジェイハーティ)」は8月26日、千葉県習志野市内で「J-HRTI 関東データファクトリー」を本格稼働し、報道陣に公開した。

左から、INSOL―HIGH磯部宗克代表取締役、ツムラ 熊谷昇一執行役員 生産本部長、山善トータル・ファクトリー・ソリューション支社 中山勝人参与、ディーエムス 山本克彦社長、芙蓉総合リース 堀内洋介次長
製造、物流などで深刻化する人手不足や安全確保といった社会課題に対し、ヒューマノイドロボットの社会実装を加速することが目的。現場導入に不可欠となる大量の学習データを取得するため、複数企業が設備投資を分担し、企業横断でデータを収集するとともに、実証環境を共同利用する。
J-HRTIには、医薬品の製造販売を手掛けるツムラ、物流・ダイレクトメール(DM)発送代行のディーエムエス、リースを手掛ける芙蓉総合リース、ものづくり商社の山善など現在5社が参画。運営管理・事務局はINSOL-HIGHが務め、コンソーシアム全体の設計とデータ基盤の運営を担う。

ロボットに作業を学習させる「ロボットエリア」

ロボットにオペレータが作業を学習させている様子
施設は約1400m2で、最大40台のヒューマノイドロボットと、ロボットに人間の動きを学習させるオペレーターなどが常駐する。ロボットに作業を学習させる「ロボットエリア」、動作映像や関節データなどをAIの学習データに変換する「アノテーションエリア」、実際の作業環境を再現して検証する「テストエリア」で構成する。
「ロボットエリア」では、オペレーターとロボットが、モノをつかんで移動するピック&プレイスの動作や、粒状の樹脂をスコップなどの道具を使ってすくい、移し替える作業、両手でモノを同時につかむ様子などが公開された。また製函機へ段ボールを補充する作業では、実際に参画企業の環境を再現し、オペレーターが遠隔操作でロボットにお手本の動きを学習させている。
集まった動画やセンサーデータをもとに、「アノテーションエリア」で専門スタッフがマルチモーダルなAIデータへと変換。学習を終えたAIプログラムは再び、ロボットに載せ、現場で正しく動くかを検証・調整する。
J-HRTIの特徴は、現場を知る民間企業ユーザーが参画し、収集したデータを一度きりの実証で終わらせず、再利用する「データエコシステム」の仕組みだ。現場で発生した失敗や改善データを再び収集し、学習データにフィードバックすることで、ロボットの動作を継続的に高度化する。これにより、ロボットの「脳を進化させていく」という。

INSOL―HIGH 磯部代表取締役
同日、行われた会見でINSOL―HIGHの磯部氏は、「民間でのデータファクトリー開設は国内初であり、コンソーシアム形式でのエコシステム構築は世界でも類をみない。今後、ヒューマノイドが社会インフラとして、自動車と同じように自分たちの生活の近くに入ってくる、そんな可能性を示す大きな一歩」だと話す。
山善の中山氏は、「多種多様な参画企業の知見を集め、より高度で高効率のフィジカルデータを収集することにおいて、他業界にはない取り組み」と強調。山善では今後、仕入先メーカー3000社と全国の製造業ユーザーを結ぶネットワークを活かし、コンソーシアムの拡大とユースケース開拓を推進する。
ツムラの熊谷氏は、「生産年齢人口の減少に伴い従業員の確保が難しくなる一方、需要は増加しており、医薬品の安定供給に向けて自動化が必須になっている」と参画の背景を説明。
ヒューマノイドを活用することで、既設の生産ラインを生かしながら労働生産性を高めるほか、五感センシングの可視化などにも期待する。さらに「長年培ってきた伝統医療×最先端AIで、日本のモノづくり産業に貢献したい」と語った。
ディーエムエスは、年間3.5億通のDM発送と450万個の宅配出荷実績を持ち、物流ネットワークを支えている。同社では、DMの高速封入封緘機で、紙の厚みなどに応じてミリ単位で調整する工程や、3PLやEC発送の梱包作業などにおける人手確保が課題となっている。
山本社長は、労働人口の減少や人件費上昇は「日本全体の課題」と指摘。ヒューマノイドについては特に「手の器用さ」が重要になるとし、指先の技術が進化することで自動化できる作業の可能性が広がると期待する。将来的には知見とデータをパッケージ化し、同じ課題を抱える企業への提供も視野に入れている。
J-HRTIは今後、2026年内に搬送・定型作業などの単純タスクから現場実装を進める計画。すでに数千件のデータを蓄積しており、2027年には全国10か所にデータ収集拠点を展開、将来的には産業を問わず利用できる日本発のフィジカルAI産業基盤モデル群の構築を目指す。
併せて、中小企業へのロボット活用・AI開発推進へ、現場に「データ収集キット」を設置し、企業から現場データの提供を受けることで、J-HRTIのデータをリーズナブルに利用できる新サービスも開始する。
J-HRTIでは、さらに広い領域での企業や研究機関の参画を募っている。ヒューマノイドの導入においては、機体そのものの性能だけでなく、実際の現場でどれだけ多様な作業を学習できるかが実装の鍵となる。現場で生まれたデータが次のロボットの能力となり、そのロボットが新たなデータを生む。この循環を企業横断で構築できれば、物流をはじめとする産業現場でのフィジカルAI普及が一気に加速しそうだ。
INSOL-HIGH/ディーエムエスがヒューマノイドロボット実装団体「J-HRTI」に参画
