高知県仁淀川町では、いま「スタッドハウス」という木造の町営住宅の建設に力を入れています。
地元産の木材をふんだんに使用したこの住宅には人を呼び込み、未来を育む、山あいの町の挑戦がありました。
仁淀川町に2026年4月末に完成した2棟の木造住宅。
使用した木材の9割以上が仁淀川町産のスギとヒノキで、高い天井と木組みの美しさが印象的です。
■井手上アナ
「この住居は何のために建てられた?」
■仁淀川町農林課長 奥田誠さん
「仁淀川町は林業の担い手を育成するために林業研修制度というのを作っている。その研修生のための住宅」
この建物は「仁淀川スタッドハウス」と名付けられた、林業研修生のための町営住宅です。
1棟あたりの建坪は約10坪で、15畳のリビングダイニングキッチンと階段の上には5畳のロフトがあり、エアコンも完備。建設費は外構を含めて約1800万円です。
実は、この建物には一般的な木造住宅とは違うある特徴があります。
■農林課長 奥田誠さん
「板を作るのがすごく得意な町。その板材をどれだけ活用できるかという点ですごく工夫してもらっている」
構造を支える木材はすべて厚さ5.5センチ、幅12センチの板材なんです。
仁淀川スタッドハウスのスタッドとは、間柱と呼ばれる板材のこと。
一般的な木造住宅は柱や梁などに異なるサイズの角材を使いますが、仁淀川スタッドハウスでは同じサイズの板材を重ねてボルトで止めて柱や梁に使っています。
建設した高知市の和建設では、このスタッドハウスに新たな可能性を見出しています。
■和建設 工事統括所長 辻 信一さん
「この1つの材料で統一することによって管理がしやすくなっている。ボルトで何箇所も止めているが、このボルトの長さも同じなので(建設現場で)間違いがないというのも構造的な利点」
同じサイズの板材とボルトのみを使うため現場での作業は簡略化され、住宅をまるでプラモデルのように組み立てます。さらに仁淀川町産の木材の質の良さも強みだといいます。
■辻さん
「仁淀川町産のスギとヒノキはきれいな木なので、お客さんもよろこんでもらえるんじゃないかと思う」
板材を切り出しているのは仁淀川町の池川木材工業です。
1953年創業ですのこの国内シェアが全国トップの7割を占めていますが、すのこの需要は年々減少しています。
■社長 大原悠延さん
「いま加工機で切り出しているところ」
すのこ作りに適した細長い板材に加工するのが得意な池川木材工業が仁淀川スタッドハウスの木材加工を担うことで、住宅供給の地産地消が実現しています。さらに社長の大原さんはさらなる需要の掘り起こしを期待しています。
■大原さん
「仁淀川町で作られた木材を日本のみならず海外にも出していく未来というのは近いのかなと思うし 取り組みを加速させることで日本の木 新しい建築を発信できる良い機会になれば」
仁淀川町の林業の力が結集したスタッドハウス。
町ではこれまでにモデルハウスを含めて3棟を建てていますが、2027年3月にはさらに4棟が完成する予定です。
また、町が林業に力を入れることで人口減少をゆるやかにする効果も出ています。
仁淀川町では2016年度から林業研修生を募集し、これまでに県内外から64人が参加。1年間の研修後も44人が町内に居住し、定着率は現在68%という高い水準を維持しています。
■奥田さん
「家族で移住してきている人もたくさんいる (仁淀川町の)合併当初に計算された推移からいうと若干だが(人口減少が)ゆるやかになってきているというデータが出ている。それは林業のおかげだと思っている」
そしてスタッドハウスは移住へのPRにも役立っています。
■奥田さん
「東京・大阪の募集で(会場に)行かせてもらうが (仁淀川スタッドハウスの)写真を見てもらうと大変好評で、こういうところに住めるなら仁淀川町に行って林業してみたいなという反応はすごくもらっている」
現在スタッドハウスに住んでいる林業研修生に話を聞きました。
2026年5月からこの家に住む岩永拓也さん(31才)です。
以前は大阪で介護職をしていましたが、自然豊かな環境に憧れて移住フェアに参加。仁淀川スタッドハウスが移住の決め手だったといいます。
■岩永さん
「(決め手は)自然豊かというのはあるが、スタッドハウスを奥田課長から「こういうのがいまからできるけど よかったらどう?」と声をかけてもらって (スタッドハウスの)モデルハウスをみせてもらったが空間というか木の空間が気に入って 住まわせてもらえるということで 「じゃあぜひとも」と(林業研修制度に)参加させてもらった」
重機を扱うなどはじめての林業に奮闘する毎日ですが、休みの日は温泉を楽しむなどこの家を拠点に自分らしい暮らしを満喫しているといいます。
■岩永さん
「とても満足というか、ありがたく使わせてもらっている。新築というか木の香りというかすごく感じる。落ち着きますね。木の匂いが好きなので、田舎暮らしをしてみたいという気持ちで来たので、林業についてもそうだが、自分が楽しんでいけるような生活をしていきたい」
仁淀川町は町産木材をふんだんに使ったスタッドハウスを海外に売り出すことも目指しています。
2025年8月にはタイで国内最大級の展示会にはじめて出展し、スタッドハウスをPR。
2026年5月にはタイの首都バンコクの寿司店がすべて仁淀川町産の木材を使って増築しオープンしました。
仁淀川町によりますと、すべて町産材の建物の部材を輸出したのは今回がはじめてだということです。
町と和建設は今後もさらなる改良を重ねてスタッドハウスの販路を広げたい考えです。
■奥田さん
「キット化が進めば国内はもちろん販売戦略を練ってもらって、国外に対してもタイを足がかりにどんどん進出してもらいたいというのは仁淀川町として思っている」
人を呼び込み、未来を育む仁淀川スタッドハウス。山あいの町の挑戦は今後さらに広がりそうです。
