【8月24日 CNS】「時代に見放される時は、何の前触れもない」

数年前、この言葉ほど長距離バスに当てはまるものはなかった。高速鉄道網の整備が進み、自家用車が普及するにつれ、かつて多くの人びとの旅の思い出を支えた長距離バスは、まるで一夜にして人々から忘れ去られたようだった。別れと再会を見届けてきた各地のバスターミナルも次々と閉鎖された。

データによると、中国の営業用道路旅客輸送量は2012年に355億7000万人でピークを迎えた後、減少傾向に転じた。2022年には35億5000万人まで落ち込み、その後数年は回復傾向を示したものの、依然としてピーク時の半分にも届いていない。

長距離バスに最も大きな打撃を与えたのは高速鉄道だった。例えば四川省(Sichuan)成都(Chengdu)――重慶(Chongqing路線では、2015年に成渝高速鉄道が開業すると、長距離バスの利用者数は急減した。これは中国全体の道路旅客輸送を象徴する出来事でもあった。時速300キロという速さと定時性、快適性を備えた高速鉄道は、長距離バスを一気に苦境へ追い込んだ。

しかし、より根本的な要因は、長距離バスの運行モデルが硬直化していたことにある。従来の長距離バスでは、利用者は「出発地―バスターミナル―到着地のバスターミナル―最終目的地」という煩雑な乗り継ぎを余儀なくされていた。この仕組みは、高速鉄道の速さや快適さにも、配車サービスの柔軟性や利便性にも及ばず、利用者離れは避けられなかった。

しかし、誰もが長距離バスは歴史の舞台から姿を消すと思っていた矢先、意外にも力強く復活し、人気を集めるようになった。今年の夏、長年人びとの視界から遠ざかっていた成都―重慶間の長距離バスが、新たな形で復活した。6月下旬には成都―重慶間の都市間快速バスが正式に運行を開始し、片道運賃は最安50元(約1208円)となった。これに対し、高速鉄道の普通車指定席は約150元(約3626円)で、バスの約3倍の価格である。

この路線の人気ぶりは驚くほどで、運行開始からわずか1週間で乗車率は98%を超えた。これは一つの事例にすぎない。データによると、2025年には中国全土のオーダーメード型旅客輸送路線は1万1300路線を超え、「第14次5カ年計画」期間中の年間平均成長率は36.9%に達した。この数字の伸びは、実際の移動ニーズの高まりを反映している。

市場は長距離バスという交通手段を見放したわけではない。ただ、そのあり方を変えることが求められていたのである。その復活の背景には、供給側の大きな変革があった。

現在、長距離バスは従来の「バスターミナルからバスターミナルへ」という固定的な運行形態にこだわらなくなり、サービスモデルも静かに変化している。例えば浙江省では、一部のオーダーメード型旅客輸送路線で乗客が乗降場所を自由に選べるようになり、その柔軟性は配車サービスに匹敵する。四川省では、一部の旅客輸送会社が大型バスを7~9人乗りのビジネス車両へ切り替え、航空機のビジネスクラスをイメージした座席を採用し、「自宅まで迎え、自宅まで送り届ける」サービスを提供している。多様なサービスの提供が利用者への魅力を大きく高めている。

サービスの向上だけでなく、手頃な価格も人びとが長距離バスを選ぶ重要な理由となっている。再始動した成都―重慶間快速バスを例に挙げると、車両はすべて新エネルギー車を採用し、1キロ当たりの運行コストを大幅に削減した。さらに、停留所を地下鉄駅やバス停の近くに設置し、バスターミナルを経由せず、人件費も抑えることで、低運賃を実現している。相次ぐ高速鉄道運賃の値上げと比べると、長距離バスの価格競争力は明らかである。

また、高速鉄道ではカバーできない地域を補完することも、長距離バスが再び支持を集める大きな強みとなっている。高速鉄道網がどれほど発達しても、すべての地域を網羅することはできない。長距離バスは「ラストワンマイル」を担い、高速鉄道が通らない県や遠隔地の観光地、さらには都市間通勤、通院、通学といった利用頻度の高い移動を支え、幹線交通を補完する「毛細血管」の役割を果たしている。

もちろん、長距離バスが柔軟に形を変えられる背景には、年々充実し、整備が進む道路網がある。2025年末時点で、中国の道路総延長は557万8900キロに達し、このうち高速道路は19万9400キロを占めた。縦横に広がる高速道路網が骨格となり、長距離バスの定時性と快適性を大きく向上させた。一方、農村部まで延びる道路網は毛細血管のように広がり、町や村までつながることで、オーダーメード型旅客輸送が農村部へも展開できるようになった。

交通の本質とは、人と人、人と都市をより良く結び付けることである。長距離バスの復活は、ほかの交通機関の利用者を奪うためではない。むしろ、中国の総合交通システムが成熟段階に入ったことを示すものであり、「道路がある」時代から、「利用者に応じたサービスを提供する」時代への転換を意味している。

立体的な交通ネットワークとは、高速鉄道が効率性を担い、長距離バスが人びとの日常を支えることで、多様な移動ニーズにきめ細かく応えられるものである。それこそが、「誰もが快適に移動できる社会」の最も素朴な姿なのである。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News

 

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