横浜高校野球部を率いる村田監督。2020年に母校の監督に就任

新型コロナウイルスは、春のセンバツに続き、夏の甲子園までも、戦後初めての中止に追い込んだ。夢を絶たれた球児たちは、いかに代替大会へ向かうのか。神奈川の3校の練習風景から見えてきた本音とは――。(初出:Number1008号 [神奈川の強豪を訪ねて]コロナの夏の高校野球。)

 5月20日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、高野連の八田英二会長が夏の甲子園の中止を発表した。2020年、高校野球は失われてしまうのか――。

 その夜、慶應はZoomでのミーティングを開いた。3月2日から部活動が禁止となり、画面を通して話し合いを重ねてきたが、この日は3年生全員がひと言ずつ思いを述べ、涙を流す者もいた。

 その様子を見守っていた監督の森林貴彦は、生徒たちにこう約束した。

「最後の真剣勝負の舞台は、必ず用意する」

 森林は早速、他校の監督たちと話し合いを持った。

「その中で、『知事に手紙を書いたらいいのでは』という話が出ました」

 すると偶然、慶應の選手たちの話し合いの中でも「手紙を書いたらいいんじゃないか」というアイデアが出た。

「大人と高校生の意見が重なったので、それだったらアリかなと。そこで『大人に出来ることはなんだろう?』と考えると、それは知事に会うことだと思いました」

 人脈を辿り、神奈川県の黒岩祐治知事へのアポイントが6月3日に決まると、大急ぎで各学校から募った約300通の手紙を取りまとめ、知事に手渡すことができた。

 6月12日、神奈川県高野連は8月1日の開幕を目指し、代替大会の開催に向けて準備することを発表した。

コロナにおける大人の役割とは何だったのか。

 練習が再開された7月、慶應のグラウンドでは3年生たちが汗を流していた。密を避けるため学年別に練習日を設けているが、それでも例年と変わらず慶應の練習は自由だ。清々しいほどのアッパースイングでティー打撃に取り組む選手がいれば、ブルペンでは「今年はバッターの目が慣れていないから変化球が効くんじゃないか」と議論が交わされている。この夏、自主的に野球に取り組んできた生徒たちに対して、大人の役割とは何だったのか。森林は言う。

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photograph by Manami Takahashi

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