【和歌山】就労継続支援B型 たいようとわんおく 〜 バジルの成長 働く喜びに

障害者ら水耕栽培  販路も確立

 肉や魚料理をはじめピザ、パスタ、サラダなどに使われるシソ科のハーブ、バジル。食卓でおなじみのこの香味野菜を、岩出市清水の就労継続支援B型事業所「たいようとわんおく」の利用者たちが水耕栽培で育てている。今年4月には地元産直市場と契約し、毎朝採れたてを出荷する販路が確立。植物の成長が、利用者の働く喜びや社会参加への意欲を育んでいる。

「作業が楽しい」

 和歌山市太田の株式会社たいようが運営する同事業所には、精神や身体、知的、発達などの障害を抱える18歳以上の約40人が在籍。組み立てや箱詰めなどの内職作業を通して自信をつけ、自立への一歩につなげることを目指している。

  栽培室で水溶液を与える利用者

 水耕栽培を導入したのは2年前。同社の西林郁裕社長が、「次世代農業」に着目したのがきっかけだ。「土を使わず室内で栽培でき、身体への負担が少ない。一年中安定して収穫できる」と決断。初心者でも比較的育てやすいといわれるバジルを選び、他県で実績を上げている同業者から技術指導を受けスタートした。

 利用者は栽培室を備えた「あうりんこ農園」へ外部就労して作業する。手順はシンプル。濡れたスポンジに種を置き、発芽するとピンセットで一つずつ栽培トレーへ移す。棚は手の届きやすい高さに設置され、しゃがんだり背伸びしたりせずに作業ができる。室温は20〜25℃、湿度は60%に保たれ、1日16時間LED照明をあてる。農薬は使わず、与えるのは栄養剤入りの水溶液だけ。収穫時期は種置きから約3カ月後。香りを強くするためにサーキュレーターで空気を循環させている。

 作物の成長を日々実感できる環境は、皆のモチベーション向上にもつながっている。主任の山口晃司さんは「利用者から『作業が楽しい』と言ってもらえるのが一番うれしい。自分が関わった野菜が誰かに食べてもらえると分かると、みんな俄然やる気を出してくれる」と目を細める。利用者の女性に話を聞くと「ここのバジルを使ってパスタを作ったら、すごく美味しかった」と満面の笑顔。「自分で育てたバジルですもんね」と返すと、「いいえ、自分『たち』です」と、仲間への信頼をのぞかせた。

農薬不使用評価

産直市場よってって岩出店の店頭に並ぶバジル。毎朝、山口さんが採れたてを届けている

 収穫したバジルの販路は、山口さんが開拓した。初めての営業活動で不安もあったが、農薬不使用という強みが評価され、契約に至った。同農園が販売主となり、「産直市場よってって岩出店」と「産直広場てんこもり岩出高塚店」に毎朝、採れたてを出荷、陳列する。同農園には「苦味がなく、葉が薄くて柔らかい。そのまま食べても風味がよい」と感想が届く。サニーレタスやルッコラ、春菊、大葉、イチゴ、スプラウトにんにくなどの挑戦も始めた。

 可能性は食用に留まらない。和歌山市の化学研究者、境保統さんは「農薬不使用の水耕栽培だからこそ、葉から根まで余すことなく活用できる」と強調。消臭・リラックス効果が期待される乾燥バジルの特長を活かし、虫除け線香の開発を探るなど、新分野への展開を見据える。

 「障害を持った方が楽しみながら、丹精込めて作ったバジルです。ぜひ一度食べてみてほしい。みんなの励みになります」と西林社長。同農園では、乾燥バジルパウダーに岩塩やスパイスを加えた新商品や苗も販売している(インスタグラム「あうりんこ農園」で検索)。詳細はたいようとわんおく(0736・67・7219)。

(ニュース和歌山/2026年8月15日更新)

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