
世界のEV(電気自動車)市場をリードしてきたTESLA(テスラ)は現在、主力モデルの価格調整や各国の競争激化に伴い、急激に拡大させてきた事業の変革期を迎えています。2025年(FY25)通期ベースは売上高が微減となり、利益面で厳しい結果となりました。しかし、2026年(FY26)の第1四半期(1Q)は増収・増益へと転じ、業績の底打ちを示唆する動きが見られます。今回は2025年(FY25)までの通期、および2026年(FY26)1Qの財務データを分析し、2026年(FY26)2Qの業績予想をしてみたいと思います。
(1)テスラ(TESLA)の最新業績と2026年(FY26)2Q予想
テスラ(TESLA)の直近業績は、急激な減益局面から回復の兆しを見せるプロセスにあります。2025年(FY25)4Qには営業損益がマイナス397百万ドルの赤字へ転落したものの、2026年(FY26)1Qは売上高22,387百万ドル、営業利益941百万ドルと持ち直し、営業利益率は4.2%まで復調しました。
テスラ損益計算書(四半期)

テスラ(Tesla) 損益計算書(四半期)

テスラ(Tesla) 損益計算書(四半期)
(※1)EPS=希薄化後1株当たり利益 (※2)PER=株価収益率 (※3)PBR=株価純資産倍率
2026年(FY26)2Qの業績予想としては、売上高24,500百万ドルで前年同期比8.9%増、営業利益1,200百万ドルで同30.0%増、当期純利益1,300百万ドルで同9.2%増を見込んでいます。市場アナリストによるコンセンサス予想でも、販売台数の持ち直し、各種コストの適正化を背景に、2026年(FY26)2Qは、ゆるやかな回復基調が維持されるとみられています。
高付加価値分野への高い期待
こうした業績予想には市場の期待と企業課題の両面が色濃く反映されていると思います。市場の期待としては、単なる自動車の販売台数増加にとどまらず、完全自動運転技術やエネルギー貯蔵事業、ロボティクスといった高付加価値分野での収益化に対する関心が高まっています。高いPERが維持されている背景には、こうした将来のソフトウェアおよびテクノロジー収益への期待が強く作用しています。
EV市場での収益性確保が課題
企業が直面する課題としては、激しいEV価格競争の中での本業の収益性確保が挙げられます。2026年(FY26)2Qは増益が見込まれるものの、かつてのような高い利益率を取り戻すまでには至っていません。車両の製造コスト削減を継続しながら、高利益率なソフトウェア収入を拡大させるかが、今後の業績の「質」を高める鍵です。
テスラ損益計算書(通期)

テスラ(Tesla) 損益計算書(通期)

テスラ(Tesla) 損益計算書(通期)
(※1)EPS=希薄化後1株当たり利益 (※2)PER=株価収益率 (※3)PBR=株価純資産倍率
(2)売上高の動向
テスラ(TESLA)の通期ベースの売上高は、2021年(FY21)の53,823百万ドルから、2023年(FY23)の96,773百万ドルへと高い伸びを記録しました。しかし、2024年(FY24)は97,690百万ドルと頭打ちとなり、2025年(FY25)は94,827百万ドル(前期比△2.9%)と微減に転じました。

テスラ(Tesla) 売上高成長率(通期)
四半期ベースでは、2025年(FY25)1Qに19,335百万ドルまで落ち込んだものの、2026年(FY26)1Qは22,387百万ドル、前年同期比15.8%増でプラス成長へ回復しました。続く2026年(FY26)2Qの予想も、24,500百万ドル、前年同期比8.9%増と拡大が見込まれています。2026年(FY26)1Qの売上高22,387百万ドルは、2025年(FY25)の通期実績である94,827百万ドルと比較すると23.6%の進捗率で、おおむね順調に推移していると言えそうです。

テスラ(Tesla) 売上高 前年同期比成長率(四半期)
(3)営業利益の動向
通期の営業利益の動向を通期ベースでみてみます。2022年(FY22)に13,692百万ドル、営業利益率16.8%で最高益を計上しました。その後は、価格引き下げの影響などにより減益傾向が続き、2025年(FY25)は4,355百万ドル、営業利益率4.6%まで低下しました。

テスラ(Tesla) 営業利益成長率(通期)
四半期ベースでは、2025年(FY25)4Qにマイナス397百万ドルの営業赤字となりましたが、2026年(FY26)1Qは941百万ドル、営業利益率4.2%とV字回復し、2026年(FY26)2Qは1,200百万ドル、営業利益率4.9%と、引き続き改善する見通しです。2026年(FY26)1Qの営業利益は941百万ドルで、2025年(FY25)の通期実績である4,355百万ドルに対して21.6%の進捗率です。

テスラ(Tesla) 営業利益 前年同期比成長率(四半期)
(4)当期純利益の動向
通期ベースで当期純利益をみてみると、2023年(FY23)に14,997百万ドルを記録したものの、2024年(FY24)は7,091百万ドルと前期比でマイナス52.7%になり、2025年(FY25)は3,794百万ドル、前期比マイナス46.5%と大きく減少し、本業の収益性悪化が最終利益に響きました。

テスラ(Tesla) 当期純利益成長率(通期)
四半期ベースでは、2025年(FY25)1Qの409百万ドルを底に、2026年(FY26)1Qは477百万ドル、前年同期比16.6%増を確保し、2026年(FY26)2Qは1,300百万ドルを見込んでいます。2026年(FY26)1Qの当期純利益は477百万ドルで、前年(FY25)の通期実績3,794百万ドルに対して12.6%の進捗率にとどまっており、今後、一層の収益向上が望まれます。
(5)株主価値指標の動き
続いてテスラ(TESLA)の株価が会社の価値に対して、「割安」なのか、それとも「割高」なのかをみていきます。
1)EPS(希薄化後1株当たり利益)
EPS(1株当たり利益)は、会社が1株に対してどれだけの純利益を生み出したかを示す指標です。通期のEPSは2023年(FY23)の4.30ドルから、2025年(FY25)の1.08ドルまで低下しました。

テスラ(Tesla) EPS
四半期ベースのEPSは2026年(FY26)1Qに0.13ドルを計上し、2026年(FY26)2Qは0.36ドルに持ち直すことが見込まれています。

テスラ(Tesla) EPS(四半期)
2)PER(株価収益率)
PER(株価収益率)は、株価が1株当たり利益の何倍まで買われているかを表しています。これは市場がテスラ(TESLA)の将来にどの程度期待しているかを示します。
純利益の低下に伴って、テスラ(TESLA)のPERは、2022年(FY22)の34.02倍から上昇し、2025年(FY25)は418.19倍、2026年(FY26)1Qも417.96倍と非常に高い数値になっています。これは足元の利益以上に、将来の自動運転技術やAI事業が高く評価されているためです。

テスラ(Tesla) PERとPBR(四半期)

テスラ(Tesla) PERとPBR(通期)
3)PBR(株価純資産倍率)
PBR(株価純資産倍率)は、企業の純資産に対して株価が何倍で評価されているかを示す指標です。テスラ(TESLA)のPBRは2021年(FY21)の36.16倍から、2022年(FY22)には8.72倍へと調整しましたが、2025年(FY25)は20.54倍まで戻り、2026年(FY26)1Qも16.60倍を維持しています。一般的な製造業と比べて極めて高水準で、ブランド力や将来性が高く評価されています。
(6)貸借対照表から見る「財務の安定性」
貸借対照表で企業の「健康診断」をしてみましょう。

テスラ(Tesla) 貸借対照表

テスラ(Tesla) 貸借対照表
1)資産の動向
テスラ(TESLA)の総資産は2021年(FY21)の62,131百万ドルから年々増加し、2025年(FY25)は137,806百万ドル、2026年(FY26)1Qは143,724百万ドルと拡大を続けています。特に工場や生産設備といった固定資産が2021年(FY21)の35,031百万ドルから2026年(FY26)1Qは73,976百万ドルと倍増しています。将来の増産や技術開発のための積極的な設備投資が、資産を増加させています。
2)負債の動向
テスラ(TESLA)の負債合計は2021年(FY21)の30,548百万ドルから、2025年(FY25)は54,941百万ドル、2026年(FY26)1Qは58,922百万ドルと増加傾向にあります。内訳は流動負債が34,138百万ドル、固定負債が24,784百万ドルで、資産全体の伸びに対して負債拡大のスピードは抑制されており、借入金に過度に依存しない経営がなされています。
3)純資産の動向
テスラ(TESLA)の純資産は2021年(FY21)の31,583百万ドルから、2025年(FY25)は82,137百万ドル、2026年(FY26)1Qは84,116百万ドルと一貫して成長しています。過去の事業活動で蓄積された利益が積み上がっており、一時的な業績の下振れや市況悪化に対しても、強固な自己資本が確保されています。
4)流動比率の動向
流動比率は、1年以内に返済する必要がある流動負債に対し、1年以内に現金化可能な流動資産がどれだけあるかを示し、企業の短期的な支払能力を表す指標です。一般に100%以上で安全とされます。テスラ(TESLA)の流動比率は、2021年(FY21)の137.53%から上昇し、2025年(FY25)には216.44%、2026年(FY26)1Qも204.31%と高水準で、短期的な支払能力には余裕がある状態です。
5)自己資本比率の動向
自己資本比率は、総資産のうち返済義務のない純資産が占める割合を示し、中長期的な企業の健全性を測る指標です。製造業では40%以上が望ましいとされる中、テスラ(TESLA)の自己資本比率は2021年(FY21)の50.83%から、2025年(FY25)は59.92%、2026年(FY26)1Qも58.81%と、60%近い水準を維持しています。
キャッシュフロー計算書から見る「事業の健全性」

テスラ(Tesla) キャッシュフロー計算書

テスラ(Tesla) キャッシュフロー計算書
営業キャッシュフロー(営業CF)は本業の営業活動を通じて獲得した現金の流れを示します。投資キャッシュフロー(投資CF)は将来の事業拡大のための設備投資や資産取得に使われた現金の動きを示し、通常はマイナス(△)で表されます。財務キャッシュフロー(財務CF)は借入金や株式発行など、外部からの資金調達および返済による現金の出入りを示します。
1)営業キャッシュフロー(営業CF)の動向
テスラ(TESLA)の営業CFは通期ベースで、2021年(FY21)は11,497百万ドル、2024年(FY24)は14,923百万ドル、2025年(FY25)は14,747百万ドルと高水準で推移しています。2026年(FY26)1Qには3,937百万ドルを創出し、2025年(FY25)通期実績の14,747百万ドルに対して26.7%の進捗率で、現金を創出する力は依然として十分な状況です。
2)投資キャッシュフロー(投資CF)の動向
テスラ(TESLA)の投資CFは通期ベースで、2021年(FY21)にマイナス7,868百万ドル、2024年(FY24)はマイナス18,787百万ドル、2025年(FY25)はマイナス15,478百万ドルと、巨額投資が続いています。2026年(FY26)1Qはマイナス5,023百万ドルで、2025年(FY25)の通期実績であるマイナス15,478百万ドルに対する進捗率は32.5%です。本業の現金を将来の成長分野へ積極的に再投資している様子がうかがえます。
3)財務キャッシュフロー(財務CF)の動向
テスラ(TESLA)の財務CFは、2021年(FY21)にマイナス5,203百万ドルだったものの、2024年(FY24)は3,853百万ドル、2025年(FY25)は1,139百万ドルのプラスとなりました。2026年(FY26)1Qは1,172百万ドルで、前年(FY25)の通期実績1,139百万ドルに対する進捗率は102.9%です。営業CFの稼ぎとの間でバランスを取りつつ、機動的な資金調整を行っています。
(8)FY26 2Q予想から読み解く総合展望
EV市場は急拡大期から、競合他社の台頭に伴う価格競争期へと移行しました。こうしたこともあって、テスラ(TESLA)は2025年(FY25)にかけて業績の減益局面を経験しました。しかし、2026年(FY26)1Qには増収・増益に転換し、2026年(FY26)2Qは売上高24,500百万ドル、営業利益1,200百万ドルと予想されている通り、最悪期を脱して、足元の業績が持ち直し始めているという見方ができます。
テスラ(TESLA)の収益性と成長性は、既存の車両販売における利益率の底打ちとあわせて、完全自動運転やエネルギー貯蔵事業といった高利益率な新規分野がどこまで業績に貢献してくるかが注視されます。
何より、自己資本比率約60%、流動比率200%を超える極めて健全な財務安定性こそが、テスラ(TESLA)が競合他社との苛烈な価格競争に耐え抜き、AIやロボティクスなどの未来技術へ巨額の投資を継続することを可能にしています。この強力な財務基盤を支えに、新たな成長フェーズを切り開いていけるかが、テスラ(TESLA)の長期的な価値を決定づけることになるでしょう。
岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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