電車の中でバッグなどにつけられたヘルプマークを見かけたとき、「何か手助けをすべきだろうか」と戸惑った経験はないだろうか。ヘルプマークは、外見からはわかりにくい障害や病気を持つ人が、配慮を必要としていることを周囲に知らせるマークだ。内閣府の2022年の調査では、ヘルプマークを知っている人は52.3%と半数を超え、認知は高まりつつある。一方で、「嫌がらせを受けてからつけるのが怖くなった」「ファッションだと思われたくなくて身につけられない」という利用者の声もある。なぜ誤解や偏見が生まれるのか。当事者や専門家とともに考える。(Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部/監修:松波めぐみ)

ヘルプマーク利用者に向けられる誤解や疑いの背景には「固定観念」がある
「見えない障害」には多様な状態があり、マークをつける理由もさまざま
手助けの方法に正解はない。対話と調整を重ね、誰もが暮らしやすい社会へ

ヘルプマークは、義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人、妊娠初期の人などが、援助や配慮を必要としている(常時ではなくとも、その可能性がある)ことを周囲に知らせるためのマークだ。原則として、診断書や障害者手帳を提示する必要がなく、支援を必要とする人が利用しやすい仕組みとなっている。しかし近年、自己申告を前提とした仕組みを悪用し、単に席を譲ってほしいなどの理由でヘルプマークを利用するケースや、フリマサイトでの転売などが問題になっている。そうした中、ヘルプマーク利用者に対し、「本当に必要なのか」「優遇を受けたいだけではないか」といった疑念が向けられることがある。一部の不正利用の陰で、本当に支援を必要としている人たちが、偏見や誤解にさらされている実態がある。

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こうした議論について、障害福祉情報メディア「障害者ドットコム」を運営し、自身も発達障害の当事者である川田祐一氏は、「本当に問うべきは、助けを求めにくい社会のほうだ」と指摘する。

川田祐一

川田氏

川田氏
ヘルプマークをつける人の中には、「たたかれるかもしれない」「疑われるかもしれない」と思いながら、それでも必要だからつけている人がいます。
見た目ではわかりにくい症状を抱える人は、一見すると健康そうであるため、「本当に困っているのか」と疑われやすいのです。その結果、周囲から心ない言葉をかけられたり、嫌がらせを受けたりすることが少なくありません。

周囲から理解されづらいことについては、調査データにも表れている。株式会社ゼネラルパートナーズの2021年の調査によると、ヘルプマークが「役立っている」「どちらかというと役立っている」と回答した当事者の割合は、2017年の45%から21年には25%へ減少した。さらに、ヘルプマークを利用しない理由として、「嫌がらせを受けたなどの噂を聞いたから」という声が、8%から14%へと増加している。認知度は高まっているものの、当事者が安心してヘルプマークを使える環境が整っているとは言えないのが現状だ。

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川田氏

川田氏
見た目ではわからないしんどさを抱えている人はたくさんいます。すべてを理解することは難しくても、そういう人がいることを知ってほしいです。

不適切な利用が報じられると、「制度をもっと厳しくすべきではないか」という声も上がる。しかし、川田氏は、診断書なしで受け取れる仕組みは、制度のはざまにいる人を取りこぼさないための重要な設計だと訴える。

川田氏

川田氏
もしヘルプマークの取得に医師の診断書が必要になれば、どうなるでしょうか。
例えば、突発的なパニック発作などで外出自体が難しい人は、病院に行くことすら困難です。
不安障害などで症状をうまく説明できない場合は、診断書を出してもらえないケースも考えられます。「自分は障害というほどではない」と思い込んでいる人も、心理的なハードルもあり、支援から遠ざかってしまうかもしれません。

最近では、身体的な困りごとがないにもかかわらず、ファッションのようにヘルプマークを利用している人がいる、との指摘があります。しかし、そうした人たちの中には、居場所のなさや孤立、家族関係の悩みなど、さまざまな困難を抱えている人もいるかもしれません。彼らを非難しても問題は解決しません。大切なのは、「支援に値する人」を線引きすることではなく、つらいときに誰もが「助けて」と言える社会をつくることではないでしょうか。

つらいときに他者に助けを求め、周囲が気づき、助けるにはどうしたらいいのだろうか。障害学を専門とする松波めぐみ氏は、ヘルプマークをめぐる誤解の背景には、「障害者は援助の対象だ」という固定観念と、「援助が必要ならわかりやすく示してほしい」という願望があると指摘する。

松波めぐみ

松波氏

松波氏
障害のある人というと、車いすや白杖(はくじょう)を使っている人のように、外見から障害がわかる人を思い浮かべがちです。
ですが、実際には見えない障害のほうが圧倒的に多いのです。元気そうに見えても、強い疲労感や痛み、めまいを抱えている人、発作などの体調変化に気をつけている人がいます。

また、ヘルプマークを持つ理由も人それぞれです。常に支援を求めている人もいれば、万が一のときのお守りとして持ち歩いている人もいます。あるいは、電車や人混みなど、特定の場面での困難を想定して身につける人もいます。つまり、ヘルプマークをつけている人が、常に助けが必要な人とは限らないのです。
支援が必要なときもあれば、そうでないときもあります。抱えている困難の状態も、必要な支援も、人によってさまざまです。

自分の身体や状況を一番よく知っているのは本人です。大切なのは、自分で「こうだろう」と決めつけずに、相手と対話しながら、お互いに理解を深めていくことではないでしょうか。

ヘルプマークをめぐる誤解の背景には、「助けたいけれど、どう助ければいいのかわからない」という戸惑いもある。2025年の内閣府の「人々のつながりに関する基礎調査」では、「まわりに不安や悩みを抱えている人がいたら、積極的に声掛けや手助けをしようと思いますか」との問いに、「しようと思う」と答えた人は48.4%だった。「しようと思わない」は約10%にとどまり、「わからない」が約40%を占めた。「わからない」と答えた理由としては、「自分が何をすればよいかわからない」、「どのように接したらよいかわからない」が27.6%を占めていた。

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約半数が他者を助けたいと思っているが、「方法がわからない」のだ。では、電車や街でヘルプマークを見かけたとき、私たちはどのような手助けができるのだろうか。そのヒントとなるのが、「障害の社会モデル」という考え方だ。松波氏はこう解説する。

松波氏

松波氏
障害の社会モデルとは、障害や難病をもつ人が遭遇する困難を、本人の症状ゆえのものと考えるのでなく、健常者中心の社会のしくみにも原因を見いだす考え方です。例えば、階段しかない駅では、車いす利用者だけでなく、妊婦やベビーカーを押す人、高齢者も移動しづらい。多様な人を想定していない設備は今も少なくありません。ただ、それ以上に厄介なのは、「見えない困難」の存在を想像することなく、ないものとしてしまっている社会の認識です。

ヘルプマークをめぐる戸惑いや誤解も、「見えない困難」について知識を得にくく、想像しにくい社会のあり方がバリアになっていると考えるのです。ヘルプマークをつけている個人を「本当に困っているかどうか」判断するのではなく、「見えない困難がさまざまにある、それが知られていないことが問題だ」と発想を転換するのが、社会モデルの考え方です。

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松波氏

松波氏
ヘルプマークをつけている人を見たら必ず席を譲らなければならない、必ず声をかけなければならない、というわけではありません。障害や難病があるからこそ、自分の身体や体調を把握し、自分なりに工夫しながら生活している人はたくさんいます。
ヘルプマークをつけている人を一方的に「援助の対象」と見て助けようとすることが、その人の主体性や尊厳を損ねてしまうこともありえます。
勝手に判断せずに、相手に手助けが必要か聞いてみることです。もし断られても、気にする必要は全くありません。「今は手助けを必要としていないんだな」と受け止めるだけで十分です。
「見えない障害」の幅の広さ、奥の深さの一端に触れた、と思ってみてもいいでしょう。

私たちの誰もが、いつ困難を抱える立場になるか分かりません。多様な人たちがいつでも安心して外出できる社会になるよう、その都度対話を重ね、必要な配慮を調整していくこと。そうした一人ひとりの柔軟な発想や実践の積み重ねが、社会にある多種多様な障壁(バリア)を少しずつ減らし、結果として「誰もが暮らしやすい社会」へとつながっていくのだと思います。

ヘルプマーク以外の障害者に関係するマークは、内閣府のWebサイト(外部サイト)から確認できる。

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※AIの回答は不正確な可能性があります。AIが生成した回答の注意点はガイドラインをご確認ください。

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