福井駅前では数少ない、伝統的な「町家造り」の木造建築「山田銘木店」が近く、取り壊される。1950年に建てられ、時代の変遷とともに発展していく駅前エリアで、懐かしさのある建物として市民に親しまれてきた。22日に開かれた見学会には多くの市民が参加し、「駅前の顔」がなくなることを惜しんだ。(杉原慶子)
取り壊しが決まった山田銘木店(福井市で)
戦後の建築史について研究する福井工業大の市川秀和教授らによると、店は1950年に建てられた後、58年には西半分が増築された。
間口は8間(約15メートル)程度と広く、玄関はガラス張りの引き戸。趣ある外観で人々の目を引いていた。通りに面した1階は商品の木材を並べた展示場、1階奥と2階は社長家族や従業員らの住居となっていた。床の間の床柱や床板などを扱う老舗として知られたという。
1955年頃の福井駅前の様子。右端に当時の山田銘木店も写っている=福井市立郷土歴史博物館蔵
福井の市街地は45年の福井空襲、48年の福井地震と豪雨災害で壊滅的な被害を受けた。復興に向けた動きが本格化する中、建築基準法が50年に施行された。福井駅前周辺は「防火地域」となり、新たな木造建築は建てにくくなった。当時、木造に思い入れを持つ初代社長が法規制を事前に知り、店の建築に動いたとみられる。
3代目で現社長の松原宏さん(70)は「いい木材で店を作ろうという初代のこだわりがうかがえる」と語り、市川教授は「建物自体の歴史に加えて、戦後復興期の国の政策の変遷との関わりから見ても非常に意義深い建物」と評する。
店で暮らしていた2代目社長の夫婦は既に転居。会社の事務所としての機能は市内の別の場所に移り、建物が老朽化していることから、松原さんらは6月にも取り壊すことを決めた。
公益財団法人「歴史のみえるまちづくり協会」(福井市)が22日に開いた見学会には、約50人が参加した。欄間などが残る店内に入り、市川教授から建物の特徴や駅前の変遷などについて説明を受けながら、熱心に見入っていた。
山田銘木店で市川教授の解説を聞く参加者たち
市内の建築設計事務所で所長を務める五十嵐清人さん(75)は、2代目社長から木材について教わった経験もあるという。「ここだけ時間が止まっているかのようだった。駅前の景色が変わるようで惜しい」と残念そうに話した。
2代目社長の長女山田恵美子さんは店で育った。「駅前は再開発でずいぶん変わってきたが、2代目は、一角に残る木造のたたずまいをなくせないと、これまで建物を守ってきたのだろう。寂しい気持ちはあるが、皆さんに愛され、親しまれてきたことを実感し、幸せな気持ちだ」と感慨深げに話した。
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