
PROFILE: アーレム・マナイ・プラット/「アーレム」デザイナー
PROFILE: フランス・パリ出身。ファッションジャーナリストを経て、「アクネ ストゥディオズ」「ミュウミュウ」などのアパレル業界でのキャリアを経て、2014年、米ロサンゼルスにて「アーレム」を設立。17年には、CFDA/Vogueファッション・ファンド・アワードのファイナリストにアイウエア業界から唯一選出される。「アーレム」のアイウエアは、20世紀初頭のバウハウス運動から影響を受けた、流行に左右されないタイムレスなデザインと、機能性を追求したスタイルが特徴 PHOTO:IBUKI
パリを拠点とするアイウエアブランド「アーレム(AHLEM)」はこのほど、旅をテーマにした2026年春夏コレクション“オーディション”と、限定コレクション“ボヤージャー”を発表した。来日に合わせ、創業者でデザイナーのアーレム・マナイ・プラット(Ahlem Manai-Platt)に、ブランドの現在地や日本への思い、そしてコレクションの制作背景を聞いた。
掛ける人の個性を
静かに引き立てるアイウエア
「アーレム」2026年春夏キャンペーンビジュアル
「アーレム」2026年春夏キャンペーンビジュアル
「アーレム」2026年春夏キャンペーンビジュアル
「アーレム」2026年春夏キャンペーンビジュアル
デザイナーのアーレムは、パリで「アクネストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」や「ミュウミュウ(MIUMIU)」などアパレル業界でキャリアを積み、アイウエア業界へ。2014年に自身のブランド「アーレム」をスタートした。“アートを日々の生活に溶け込ませること”をコンセプトに生まれるフレームは、シンプルでありながら、時代の空気や彼女ならではの美意識を細部に宿す。フランスの眼鏡産地であるオヨナの老舗工場で熟練の職人によって製造され、ジュエリーのような美しさと、アイウエアとしての確かな機能性を併せ持つ。
妥協のないモノ作りこそ
真のラグジュアリー

限定コレクション“ボヤージャー”は、女性らしさの中に芯の強さを感じさせるキャットアイを2型展開。“Grace”は、ヨロイをぐっと引き上げたシルエットが印象的だ。“旅”というテーマに関連したトラベルケースなどのアクセサリーも展開している “Grace”各8万6900円、トラベルケース2万5300円 PHOTO:IBUKI
──現在のアイウエア市場の中で、「アーレム」の立ち位置をどのように定義している?
アーレム・マナイ・プラット(以下、アーレム):「アーレム」はきらびやかさや過度な装飾を前面に打ち出したブランドではありません。アイウエアとしての機能性と、熟練した職人技、丁寧な手仕事が生み出す美しさを何より大切にしています。常にベストなクオリティーを追求し続けること──それこそがラグジュアリーであるという新たな基準を提示していくことが、「アーレム」の立ち位置だと考えています。
──創業から現在まで、ブランドにとって変わらないことは?
アーレム:それは、ブランドが大切にしている“価値観”です。パリやニューヨークなどに構える5つの直営店、そして世界各国の取扱店舗を通じて多くの方に「アーレム」を届けられるようになった今も、創業当時と同じアトリエで制作を続けています。品質や機能性への真摯な姿勢はもちろん、誠実さやロイヤリティーといった精神をチーム全体で現在まで共有できていることも、ブランドの核として変わらない部分です。
──では、進化した点は?
アーレム:チームが大きくなったことで、私自身がデザインに向き合う時間をより多く確保できるようになりました。ブランドをどのように発展させていくかをじっくりと考える余白が生まれ、クリエイティブビジョンもさらに明確になってきました。
北海道の大自然に身を置くことで
向き合えた“女性としての自分”

“ボヤージャー コレクション”の“Comedie”は、レンズのフォームをサイドへ大胆に引き上げたナローなキャットアイスタイル “Comedie”各8万6900円 PHOTO:IBUKI
──この春発表した“ボヤージャー コレクション”は、北海道での滞在体験がインスピレーション源とのことだが、特に印象に残った風景や体験は?
アーレム:実は昨年、仕事が多忙を極め、自分自身をうまくコントロールできなくなっていた時期があったんです。そうした中、自分の生活圏から遠く離れた北海道へ赴き、広大な風景と静寂に包まれながら、ホテルの部屋でゆっくりと一人の時間を過ごすことで、それまで抱えていた全てのことからふっと解放された感覚を得ました。
──その体験は、デザインへどのように落とし込まれている?
アーレム:“デザイナー”や“母”といった日頃の役割から切り離した本当の自分、中でも“女性としての自分”と向き合えたことで、何かが降りてくるようにデザインが次々と浮かんできました。それをスケッチしたものがデザインの源泉となっているため、フェミニニティーを体現したようなキャットアイシルエットに仕上がっています。とてもパーソナルなコレクションだといえますね。

「アーレム」2026年春夏コレクション“オーディション”
──2026年春夏コレクション“オーディション”も、同じく北海道での滞在が着想源だ。あなたにとって、旅とはどのような意味を持つのか。
アーレム:自国にいると、時に社会的規範が重荷になることがありますが、旅先では「自分がどう見られるか」という他者の視線から解放され、自由でいられます。特に日本は、私にとって自由を感じられる場所です。
──それはなぜ?
アーレム:例えば、誰かにつけられているかもしれないと心配せずに夜道を歩けることは、女性にとって素晴らしいことです。加えて、街が清潔で美しいので、デザイナーとして物事をクリアに考えられ、静寂の中でより深く思考を巡らせることもできる。あらゆる重荷から解放され、とても自分らしくいることができるんです。実は日本には20年前から訪れていて、初めて20日間の旅を楽しんだり、初めて10キロ走ったりと、さまざまな挑戦を体験してきた、思い出深い特別な国です。自分の魂がここにあると感じるほど、強いつながりを感じています。
クラフツマンシップを重んじる
日本市場との親和性

PHOTO:IBUKI
──そんな日本は、福井県鯖江市というアイウエアの産地を擁し、高い審美眼をもつ成熟した市場でもある。
アーレム:日本は、「アーレム」が最初に進出した海外マーケットであり、現在も最大のマーケットです。それは、「アーレム」がアイウエア市場においても、工芸的な美しさや機能性を打ち出しているブランドであり、その価値観や誠実さが、日本の方たちに親しみを持って受け入れていただけているからではないかと考えています。
──今後、日本においてどのような展開を予定している?
アーレム:日本の皆さまにブランドの世界観をより深く知っていただける場を作りたいと、現在準備中です。お披露目できる日を、今から楽しみにしています。
