ゲーム開発者のThomas Grové氏は5月17日、同じゲームをUnityとGodot Engineの両方で作って比較したとする動画を投稿した。本動画は海外掲示板Redditでも紹介され、両ゲームエンジンの強みや弱みについて多くの議論を呼んでいる。

UnityおよびGodot Engineは、どちらもインディーゲーム開発を中心として広く採用されている汎用ゲームエンジンである。今年3月に開催された「GDC Festival of Gaming」に際して、Game Developers Conferenceが実施したアンケート調査では、開発者が主に使っているゲームエンジンとしてUnityが30%、Godot Engineは5%の採用率が記録されている。両者の採用率には未だ差があるものの、Godot Engineは今年大ヒットを記録した『Slay the Spire 2』に用いられるなど、シェアを伸ばしている状況にある。どちらのゲームエンジンを選ぶべきかは、ゲーム開発者にとって悩ましい問題 となっている。

そこでThomas Grové氏は、現在開発中のホラーアドベンチャーゲームの基礎的な部分を開発し終わった段階で、同じゲームをGodot Engineでも作ることにしたのだという。比較・検討した上で、今後の開発をどちらのゲームエンジンで続けていくかを決めたかったとのことで、動画はその際に得られた知見をシェアするために投稿したそうだ。

双方のゲームエンジンの違いにより、出力されたゲームは完全に一致するものとはならなかったようだが、どちらのゲームエンジンでも作りたいゲームを作ること自体は問題なく可能だったと結論づけられている。ゲームのフレームレートを比較した際も、60fpsを目標にしていたところ、どちらのエンジンもその数十倍のfpsを記録。今後グラフィックなどをブラッシュアップしていってもパフォーマンスには双方とも余裕があるとされた。

動画内でUnityとGodot Engineの違いとしてもっとも大きく取り沙汰されたのは、開発中の使い勝手である。まず、開発環境をインストールするために必要なストレージは、UnityがUnity Hubなどを諸々含むため約21GB必要なのに対し、Godot Engineはわずか164MBほどで済むため、ストレージの容量に余裕がない場合は決定要因になりうるとされた。

また、作業中にたびたび繰り返すことになるスクリプトのコンパイルにかかる時間は、Uniyでは15.4秒なのに対し、Godot Engineでは0.31秒と、大きく水を開ける結果となっている。Unity標準のC#がコンパイル型の言語であるのに対して、Godot Engineではインタプリタ型の独自言語GDScriptを採用していることが、大幅な時間短縮に繋がっているのだろう。Thomas氏はかつてUnityを好きになった理由の1つとして「変更が即座に反映される点」を挙げつつ、長い年月が過ぎて事情は変わってしまったとUnityの現状を憂いている。

ゲーム全体をビルドするのに必要な時間や、出力されたゲームの起動にかかる時間についても、UnityはGodot Engineよりも遅いという結果になっている。特に初回ビルドについては、Unityが約15分かかったところGodot Engineはわずか2.5秒と、かなりの開きがある。

さまざまな比較を経てThomas氏は、現在開発中のゲームでは今後Godot Engineを使うことにしたと結論づけている。動画ではこの他にも、開発画面のインターフェースや、3Dモデルを読み込む際の手間、Godot Engineではデフォルト設定でプロジェクト内の全アセットを含めてしまうため手動で変更しなければファイルサイズが大きくなってしまう点など、多くのことが語られている。詳しい比較内容を確認したい場合は参照されたい。

Redditや動画に寄せられたコメントでは、Unityで変更の反映やビルドに長い時間がかかってしまう点について特に多くの意見が見られる。同様の悩みを抱えている開発者がいかに多いかを垣間見ることができ、中にはAndroid版をフルビルドするのに7時間かかるというビルド時間自慢や、待たされる時間のたびに休憩したり犬を撫でたりする「工夫」を語るものもあった。

一方で、またGodot Engineではオブジェクト数が多くなってからパフォーマンスが低下し始めるという指摘もみられ、比較方法の妥当性について疑問を投げかける意見もある。動画での比較内容についてはあくまでも1人の開発者の参考意見として、慎重に受け止める必要があるだろう。Thomas氏の動画はやや極端な例ではあるものの、迷ったらまずは両方を試してみるのも一手かもしれない。

ところで、先述したGDC 2026におけるゲームエンジンの採用率に関するアンケート結果からも垣間見えるように、業界内での転職も視野に入れた場合にはまだUnityに軍配が上がる状況のようだ。ただGodot Engineの採用例は年々増加を見せており(関連記事)、Godot財団の取締役をつとめるエンジニアのClay John氏によれば、大規模スタジオでもプロジェクトの節目にGodot Engineに“乗り換える”例は増えているという(弊誌インタビュー記事)。今後のシェアの推移に伴って、開発者間での評価がどのように変化していくかも注目されるところだろう。

他方、Unityを手がけるUnity Technologiesからはノーコードでカジュアルゲームを作れるとする新バージョンの「Unity AI」の登場が告知されている。そしてヨーロッパでもゲームエンジン自体に生成AIエージェントを組み込むことを想定した新たなゲームエンジンの開発が始動するなど、ゲーム開発環境を取り巻く環境は変化し続けている(関連記事1、関連記事2)。業界ではゲーム開発における生成AIのあり方についての議論も続いており、ゲームエンジンの未来には注目が寄せられる。

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