出町桝形商店街
京阪出町柳駅から西に約400メートル。高野川、賀茂川を渡って進んだ先に出町
桝形(ますがた)
商店街(京都市上京区)はある。
「来店頻度を高めたい」と語る梅垣さん。アーケードには国際写真祭の会期中、作品が展示された(京都市上京区で)
昼間は映画を見て、鴨川デルタで古本片手にぼんやり。夜は飲み屋にぶらり――。ここに来れば、雑誌に出てくるような一日を過ごせそうだ。
ただ昔からそうだったわけではない。各地の衰退した商店街がそうであるように、シャッター街になる可能性もあった。変化を求めるうち、復活のきっかけが得られた。
転機は2017年末。映画配給などを手がけるシマフィルム(京都府舞鶴市)が、映画館「出町座」をオープンさせた。京都市内の学校跡地で映画事業に取り組んでいたが、番組編成を担う田中誠一さん(48)が「劇場の売り上げは場所が8割」と言うように、交通の便が良く、競合他社を避けた場所がここだった。
コンセプトは「間口の広さ」。ここで上映することが多いアート系の作品は、大衆映画に比べると気軽に選んでもらえない面があるという。そこで、1階にカフェや書店を設けて商店街になじむようにした。可能な限り入り口の扉も開放。「雰囲気のある商店街で、マイナスにならないように」と工夫を凝らした。
■アーケードが写真展会場
出町座に追随するように、古書店も増えていった。今ではわずか約160メートルの商店街に3軒の古書店が並ぶ。
京都大や同志社大が近く、需要も高い。哲学書や浮世絵、映画パンフレットなど、扱う本は三者三様だ。18年2月に古書店を開き、桝形事業協同組合で役員も担う田中啓史さん(49)は「何か気に入ったものが手に入る。お客さんからすれば新鮮だ」と語る。
20年からは「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の会場になった。会期中は毎年、写真家の作品をアーケードに掲げている。そのうち、文化的な豊かさなどが注目され、雑誌やSNSで話題となり、「文化とアートの発信地」として火がついた。
■小説、アニメの舞台
商店街の一帯には元々、映画や小説、京都アニメーションの作品の舞台に選ばれるなど、物語が生まれる素地はあった。組合理事長の梅垣昌治さん(73)は「普通のことをしても人は来ない。次は国際色を出すのもいいでしょ」と笑う。
梅垣さんは、創業から100年以上続く老舗食堂「満寿形屋」を営む。だが、「商店街を挙げて物品販売だけやってもナンセンス」との思いがある。「とにかく変わったことをしたい」が原動力だ。
そうした精神性も相まって、商店街はこの10年足らずで様相を変え、サブカルチャーが育まれてきた。
「条件がそろって一番ええ場所です」と梅垣さん。各地で苦戦する商店街復活のヒントが詰まっていそうだ。
出町座の隣には古書店(右奥)が並ぶ。商店街の連動性が感じられる(京都市上京区で)
メモ
出町桝形には、40店舗以上が連なる。付近は古くから京の北の玄関口だ。江戸時代には、福井・若狭地方からサバなどの海産物が多く運ばれたことから、「
鯖(さば)
街道」の終着点と呼ばれるようになった。商店街にはサバずしを扱う店もあり、アーケード中央には、巨大なサバのオブジェがつるされている。
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