大観衆を興奮のるつぼに誘った“This isリーグワン”。劇的な結末を生んだ二人の男の勝負勘と勇気

浦安D-Rocks 田村選手
【🄫ジャパンラグビー リーグワン】
NTTジャパンラグビー リーグワン2025-26ディビジョン1 第17節(リーグ戦)カンファレンスA2026年5月1日(金)19:00 秩父宮ラグビー場 (東京都)浦安D-Rocks 27-24 埼玉パナソニックワイルドナイツ
大観衆を興奮のるつぼに誘った“This isリーグワン”。劇的な結末を生んだ二人の男の勝負勘と勇気
無我夢中でしがみついたボールが大逆転トライにつながって勝利した余韻は、ミックスゾーンに姿を現したときにもはっきりと残っていた。
「夢のような試合でした。まだ、この結果を完全に理解し切れていないところもあります」
ドラマチックな結末を演出したルテウ・ラウララは、そう言ってはにかんだ。

浦安D-Rocks ルテウ・ラウララ選手
【🄫ジャパンラグビー リーグワン】
誰も予想できない劇的な幕切れであったが、そのシナリオは少し前から描かれていた。
2点のビハインドで迎えたゲーム終盤、田村煕は勝負どころを探っていた。その場面は、ホーンが鳴り響いたあとの後半41分に訪れる。ゴールポストまでピッチ中央40mほどの位置からドロップゴールを狙う。相手のチャージをものともせず、右足を振り抜いた。
「(後半)32~33分のときにヘンディ(ツイ・ヘンドリック)と話して、みんなも疲れていたし、風もあったので、どこかで勝負をかけないといけないと考えていました。足をつっていて届かないかなと思ったけど、当たった感覚は悪くなかった。『入った』と思ったけど、ルー(ラウララ)がちゃんとキャッチしてくれたので彼がプレーヤー・オブ・ザ・マッチのようなものですね」
田村の渾身のキックは無情にもクロスバーを直撃する。しかしその直後、乾いた直撃音をかき消すほどの歓声が沸き起こる。誰よりも速く一歩目を踏み出していたネイビーの22番がボールに飛びつく。そこにいたのは途中出場のラウララだった。
「実は1回目にドロップキックのコールが出たときは聞こえていませんでした。でも、2回目が聞こえたときに向かい風で難しい距離だったので『これは追うしかない』と直感でチェイスしてあそこにいるべきだと思いました。運が転がってきたとしか思えないです」
キャッチしてからの判断とプレーも冷静だった。トライを取り急ぐことなく、しっかりとボールを味方に預け、人数を掛けたアタックにつなげた。
「とにかく落ち着いて、冷静に判断することが大事だと思っていました。キャッチできたことで流れがこっちに来たと思えたので、プロセスどおり、われわれのアタックをやればいい、いつもどおりアタックすれば結果は付いてくると思いました」
後半42分、流血した頭を包帯とヘッドキャップで覆ったリサラ シオシファがトライゾーンに飛び込んだ瞬間、1万人以上の観客は全員が総立ち。ラグビーの魅力と醍醐味、そして多くの人々がラグビーを愛する理由が存分に詰まった試合の裏には、二人の男の確かな勝負勘と勇気が隠されていた。
(須賀大輔)
浦安D-Rocks

浦安D-Rocksグラハム・ラウンツリー ヘッドコーチ(右)佐々木柚樹ゲームキャプテン(左)
【🄫ジャパンラグビー リーグワン】
浦安D-Rocksグラハム・ラウンツリー ヘッドコーチ
「選手たちのことを本当に誇りに思っています。(会見に同席の佐々木柚樹は)ゲームキャプテンとしてチームを素晴らしい形で導いてくれました。前半の最初から、チームのいいエネルギーを感じていました。風上の中でディフェンスする局面はたくさんありましたけど、その中でもいい形でハーフタイムを迎えることもできました。後半に向けては風下でのプランがあるから、それにしっかりと沿って戦おうと話していましたが、選手たちが最後までやりとおしてくれました。あとは、週の序盤に『こういうチャンスを生かしていこう』と話して、リーグワンデビューの選手も含めて若手からベテランの選手までかなり多くの選手にチャンスを与えましたが、それをうまく生かしてくれたと思います」
──首位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)に勝つためのプランとはどういうものだったのでしょうか。
「埼玉WKさんは首位ですし、リーグで一番キックを使うチームなので、キックに対する戦略を必要としていました。あとは、ディフェンスにおいてフィジカルで張り合わないといけないところで選手たちがすごくうまく見せてくれたと思います。後半は風下でどうやってエリアを取っていくのかが大事でした。短く細かいパスを使うことやショートサイドを使ったアタックを意識していました」
浦安D-Rocks佐々木柚樹ゲームキャプテン
「全体をとおして一貫性があったと思います。ハーフタイムに前半で出た課題や改善点をリーダー陣が明確に話してくれて、みんなで同じ方向を向いて後半もプレーできました。ラスト20分も攻められることが多かったですけど、みんながハードワークをして、あきらめなかったことが勝利につながったと思います」
──後半は我慢の時間が長かったと思いますが、どういう心境やチーム状態でしたか。
「前半とやることは特に変わらず、自分たちのゲームプランは明確にできていたので、我慢する時間帯でも全員で顔を上げていました。その中でみんなが(まとまりなく)ワーワーとしゃべることなく、リーダー陣がうまくまとめてくれたと思います。後半はけっこう興奮していましたけど、みんながその興奮をいいエネルギーに変えて、規律を守ってディフェンスできていたと思います」
埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ金沢篤ヘッドコーチ(右)坂手淳史キャプテン(左)
【🄫ジャパンラグビー リーグワン】
埼玉パナソニックワイルドナイツ金沢篤ヘッドコーチ
「最後に逆転されて非常に残念な結果だったと思います。どのチームも必死で、自分たちも必死にやりましたけど、特にキックのエリア、チェイスなどいくつかのところでスキを突かれたところはあったと思います。自分たちで(スコアを)取り切れるところで取れなかった。最後まで点数が近いところで試合が進んでしまい、最後に浦安D-Rocks(以下、浦安DR)さんがチャンスをつかんだと。『本当におめでとうございます』と言いたいです」
──ハーフタイムを含めて攻撃面の指示はどういうものでしたか。
「前半は自分たちのフィジカリティーを出そうとして、あまりオプションを使わなかったところで浦安DRさんのすごくいいタックルがあったので、そこで少しボールを動かしていこうという話はしました。後半は当然、風をうまく使いながら攻めて、できた面もあります。ただ、点差は近いまま(試合が)進んでしまったところはあります」
埼玉パナソニックワイルドナイツ坂手淳史キャプテン
「今季初めての夜のゲームで、素晴らしい環境でゲームをできたと思います。ショートウィークでしたが、1週間の準備はすごくうまくいっていました。チームに伝えたことは『誰にでも勝てる力があるが、誰にも負ける可能性がある』と。それが準備不足なのか、メンタル不足なのか、プレー選択のミスなのか、その検証は必要だと思いますが、自分たちは次に進む必要があります。この負けはしっかりと消化しながら、来週のゲームに向けてみんなで一つになって頑張っていきたいと思います」
──全体的に攻め急いでいるように映りました。
「そのとおりだと思います。特に前半に関しては22mライン内に入るために、強い風に対して風下で影響を受けました。その中で中盤でのプレー選択をうまくしながら敵陣に入ることはできていたんですが、そこでトライを取り切れなかったことが、前半ですごくキツくなってしまった原因だったと思います。浦安DRさんのタックルがとても良かったですし、そこへのサポートやキャリアーの(姿勢の)高さがあまり良くなかったと思います」
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