【安木レポート】崩壊するロシアのインフラ、マイナス30度・真冬に暖房途絶で犬と寝る住民も
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安木 新一郎
函館大学商学部教授/択捉島水産会理事
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2026.5.2(土)
BitRiver社のデータセンター(写真:ロイター/アフロ)
目次
暗号資産の採掘ができなくなったBitRiver
ビットコイン採掘による税収増はあえなく頓挫
ウクライナ戦争は5年目に入り、ロシアの辺境では多くの問題が発生している。シベリアや北コーカサスにおけるインフラの老朽化は、ロシアの電力供給を制限し、ビットコインをはじめとする暗号資産の採掘にも悪影響を与えている。
2026年に入ってから、シベリア南部のブリヤート共和国では、家庭用の薪や炭の価格が上昇し、暖房に電気を使うようになったことで、電力供給が逼迫するようになった。共和国行政府は、一般家庭用の電力を確保するため、ビットコインの採掘やデータセンターの稼働を止めようとしている。
薪や石炭の価格が上がった背景には、ブリヤートから多くの男性が戦場に送られたことによる労働力不足があると考えられる。特に森林伐採や炭焼きが行われる農村部に住む少数民族ブリヤート人は、モンゴル語を話すチベット仏教徒で、徴兵の標的にされてきた。
そんなブリヤートに暗号資産用のデータセンターを建てたのが、ロシア最大の採掘業者BitRiver社(以下、B社)だ。B社は主にブリヤートの西隣イルクーツク州の水力発電所から得られる電力を使ってビットコインなどを採掘していた。
B社はピーク時の2024年には年商100億ルーブル(約200億円)、15カ所のデータセンターで17.5万台以上の採掘用リグを動かしていた。B社のイゴール・ルネツCEOは2.3億ドルの資産を保有しているとされる。
B社はロシアのアルミニウム企業En+グループが所有する水力発電所から得られるクリーンなエネルギーを使って採掘するというのを売りにしていた。
イルクーツク州では水力発電由来の低廉な電力と寒冷な気候を生かし、採掘事業が広がった。En+グループもルネツCEOを経営者に据え、暗号資産の採掘事業に投資したのだった。そのため、B社はEn+グループの傘下にある。
B社が余剰電力と遊休工業用地を使ってビットコインを掘り、またロシア国内外から資金を集めることで、イルクーツク州の税収が増え、地元住民にも利益があると評価されており、イルクーツク州のモデルはロシア各地に伝播していった。
