「寿退職」で家族に尽くしてきた50代60代女性
結婚や出産を経ても仕事を続ける女性の割合は、この5年で大きく伸び、出産前後も就業を継続する人は5割台から7割台へと増加した。育児休業を取得する男性の数も、同期間でおよそ4倍近くに増えている(2021年「令和3年国民生活基礎調査」より)。
女性のキャリアと家庭のあり方は、確実に変わりつつあると言えるだろう。
こうした変化を背景に、結婚・出産後の女性の生き方に対する意識にも変化が見られる。「仕事と子育てを両立する」というライフスタイルを理想とする人が、初めて最多となった。
今から30~40年ほど前の昭和から平成の時代は、女性は結婚を機に退職する「寿退社」が当たり前とされていた。未婚のまま年齢を重ねれば、「オールドミス」や「お局様」などの侮蔑的な言葉がささやかれ、差別的な扱いもあって、結婚して家庭に入り、子育てに従事することが女性の幸せと思われていたのだ。
だが時代は大きく変わり、現在の30代40代は、「ワンオペ」になりがちな家事育児を背負いながらも、ワークライフバランスを目指す。「結婚=女の幸せ」の時代を生きてきた70代80代の多くは、すでに年金生活に入っている。
では、時代の空気に押され、「寿退職」によって家族に尽くす道を選んだ現在50代、60代の女性たちは、今どのような思いを抱えているのだろう。
そんな人生に改めて目を向けさせてくれるのが、コミックエッセイの名手、野原広子さん著『うちのツマ知りませんか』(オーバーラップ)である。
『うちのツマ知りませんか?』(野原広子著/オーバーラップ)ツマの職場に「元カレ」が…
結婚30年、平穏に暮らしてきたはずの夫婦に突然訪れた異変。
ツマのヨシ子が夜遅くに「お醤油買ってくる」と言い残したまま、姿を消したのだ。当初はそれほど深刻に受け止めていなかった夫の康だったが、パート先を訪ねると自分が知らないうちに退職していた。警察に行っても、夫婦仲はどうだったかなどと訊かれ、行方不明や家出の可能性を示唆され、息子のところにも連絡はない。

職場の部下の反応も冷ややかで、「もう1週間も帰ってこない」とうなだれる康に、これまで妻の悪口をさんざん口にしていたと指摘し、「あんなこと言われてたら、私だったら別れますね」とまで言う。
実は、彼女が離婚したてのころ、妻に隠れて部屋の保証人になったこともあり、それがバレて、夫婦間が微妙な空気になったこともあったのだ。

