2021年東京オリンピックで初採用された空手の男子組手75㎏級で銅メダルを獲得したウクライナのスタニスラフ・ホルナ氏(37)が、ロシアの侵略を受ける母国を支援するためにチャリティーオークションに出したメダルを、本人に返還することになったからだ。2万500ドル(約260万円)で落札したのは、この道場に通う子どもの親御さんの一人だとい
う。

午後の返還式。道場に到着して母国の空手着に着替えたホルナ氏は、子どもたちの代表からメダルを首に掛けられると、「このメダルは僕の夢だった。この援助を一生忘れることはない。国と国の支援はあるが、このメダルは人と人とのつながり、助け合いを証明してくれた」と心から感謝の言葉を述べた。その直前、ホルナ氏は立って整列する子どもたちの前で正座し、両手をついて深々と礼をした。

石畳の街並みが続く、「ヨーロッパの真珠」「小さなパリ」とも言われる古都リビウで生まれ、育ったホルナ氏は13歳で空手を始めた。きっかけは「友達を作りたかったから」だという。天性の素質もあったのだろう。競技にのめり込むと、スピードと状況判断の良さでぐんぐんと頭角を現し、欧州選手権、ワールドゲームス等で優勝。世界選手権3位。そして、空手界全体の悲願でもあったオリンピックでメダリストになった。

だが、22年にロシアが全面侵攻を始めて、状況は一変した。友人らが最前線で死亡し、自らも軍隊に入った。まだ、戦地に赴いたことはないが、避難の援助等をしているという。オークションが始まると、迷わずメダルを出品した。

「残念ながら戦争が始まって優先順位が変わってしまった。僕は周りの人を助ける活動をしてきて、このメダルがその人たちをサポートするものになれば、オリンピックで勝ち取った以上の価値がある、思った」