昨年の10~12月にかけて来日し、国立競技場で日本代表のブラジル戦、ボリビア戦を観戦したフィリップ・トルシエは、年末にフランスに帰国した後は、新年を迎えてもパリの自宅で家族とともに過ごしていた。パリでの穏やかな生活は、彼に新たな鋭気と活力を与えた。もちろん6月に迫ったW杯と日本代表への期待も。

 日本サッカーファミリーとともに歴史的勝利をスタジアムで分かち合ったブラジル戦は、トルシエにとっても忘れがたいものとなった。そんなトルシエを、日本サッカー協会はウェンブリースタジアムでおこなわれるイングランド戦に招待した。冒頭の写真は試合後、トルシエ自身が鈴木彩艶と撮ったもの。遠藤航や佐野海舟、そしてザッケローニ元監督に岡崎慎司、さらに4月16日に日本代表コーチへの就任が発表された中村俊輔とも交友を持ったという。

トルシエは歴史的勝利にも浮かれず分析を進めた

 英国遠征はW杯メンバー選考前の最後、そして最良のテストマッチだった。選手のテスト、チーム戦術の練りあげ、グループのマネジメント……。チームの骨格はほぼ出来あがっているとはいえ、森保一監督にとって詰めねばならないディテールはまだまだ多い。

ADVERTISEMENT

 森保ジャパンの定点観測を続けているトルシエは、チームの現状をどう見ているのか。アウェーでのスコットランド戦とイングランド戦の結果と内容を、彼はどう評価するのか。そして日本が優勝を目標として掲げる、W杯本大会への展望は……ふたつの試合翌日、トルシエに電話で話を聞いた。

 勝利に浮かれることなく、論理的かつ客観的に分析を進めるトルシエの言葉には、受け取る側も冷静に耳を傾ける価値がある。そのトルシエインタビューを、それぞれ前後2回に分けてお伝えする。まずはスコットランド戦の第1回からだが、筆者は体調不良のため現地取材をキャンセルせざるを得なかった。トルシエとの対話は東京とパリ、ロンドン間のやり取りであることを、予めお断りしておく。

スコットランド戦、モリヤスはグループ強化を目論んだ

――昨日のスコットランド戦は見ましたよね。

「フランスではレキップTVで放送された」

――どう評価しますか?

【次ページ】 前半の選手は理念に忠実だった…ただ予測可能でもあった