4/11は、Prime Video Boxing。

そして日本時間ではその翌日、AM3:00からはイギリスのトッテナム・ホットスパー・スタジアムでのスタジアム・ファイト。

60,000人収容のスタジアムをフューリー1人(あと強いて言えばコナー・ベン)では埋められないかもしれませんが、ともかく当たり前のようにスタジアムファイトを敢行するというのはやはりスーパースターです。

これはマフメドフの知名度が大いに関係しているのかもしれませんが、ともかくこの試合は今後のヘビー級にとって非常に注目すべきファイトです。

デオンテイ・ワイルダーが生き残り、AJはまだ不明ながらも復帰に動き出しており、オレクサンドル・ウシクは謎の防衛戦に臨む、ヘビー級のトップ戦線。

ということで今回のブログは、フューリーvsマフメドフのプレビュー記事。

 

 

 

4/11(日本時間4/12)イギリス・ロンドン
タイソン・フューリー(イギリス)34勝(24KO)2敗1分
vs
アルスランベック・マフメドフ(カナダ)21勝(19KO)2敗

タイソン・フューリーが「またも」帰ってきます。

前戦は2024年12月、オレクサンドル・ウシクとのWBA・WBC・IBF・WBO世界ヘビー級統一タイトルマッチの再戦。初戦に続いて判定負けを喫し、プロキャリア初の2連敗。その後5度目の引退を宣言したフューリーが今度の復帰を決めた理由として語ったのが「ChatGPTに、ボクシングには君が必要だと言われた」という、いかにもフューリーらしいエピソードでした。

笑えるのか笑えないのかよくわからないが、とにかくそういう人なのです。

今回の復帰にあたって、周囲の状況は穏やかではありません。父ジョン・フューリーは「タイソンとの関係は完全に崩壊した」と公言し、試合当日も会場に姿を見せないことを明言しています。

さらにフューリー自身が「父だけでなく、兄弟たちも、妻のパリスも、復帰発表後に連絡を絶った」と語っており、今回のキャンプはヘッドトレーナー不在という異例の状況で行われているとも報じられています。

翌4月12日にはNetflixのドキュメンタリーシリーズ「At Home With The Furys」のシーズン2が配信開始予定という商業的なタイミングも絡んでおり、フューリー家を取り巻く状況は実に複雑です。

 

 

 

また、今大会のチケットについても触れておく必要があります。フューリーの看板力は絶大なものがありますが、今回の売れ行きは2022年12月のチソラ戦(同会場で約6万人を動員)と比べるとやや苦戦している模様で、リセール市場では一時10ポンド(約2,100円)という信じがたい値段まで価格が崩落した席も出たと報じられています。

約1年5ヶ月のブランク、2連敗、さらには対戦相手のネームバリューという要素が複合的に影響しているのかもしれません。

対するは私の大好きなアルスランベック・マフメドフ。カナダのEye Of The Tiger Managementの所属。

カナダを拠点に活動するロシア系のヘビー級ボクサーで、21勝19KO2敗という戦績が示す通り、圧倒的なKO率を誇る大型のパンチャーです。長年カナダを主戦場に戦ってきたマフメドフは、見た目から察する通り(?)、あのアルツール・ベテルビエフの友人(友熊)です。

その実力が問われたのが2023年12月のアギット・カバイェル(ドイツ)戦でした。

当時18戦全勝17KOという完璧な戦績を引っ提げてアンダードッグのカバイェルと対戦したマフメドフでしたが、ボディワークを中心に攻め込んだカバイェルに圧倒され、4回TKO負けを喫しました。

この試合のマフメドフは前半3ラウンドで大きなスイングを空振りし続け、バランスを崩して自滅するような場面が目立ち、カバイェルのボディショットに一切の対処ができなかった。その翌年にはビアネロにも8回TKO負けを喫しており、負けが込んだ時期を経験しています。

 

 

 

そこからデビッド・アレン(イギリス)に12回判定勝ちして再起し、今回のフューリー戦へと漕ぎつけました。フューリー戦前の「箔付け」としてアレン戦を選んだ、という見方もできます。

マフメドフのパンチ力は本物であり、その右は21勝中19KOという数字が証明するものですが、カバイェル戦で露わになったボディへの脆弱性と、プレッシャーをかけられた時の打たれ脆さは、今も拭いきれていない課題と言えるでしょう。

フューリーのディフェンスは、しばしばスキルと称されますが、その本質は体躯とポジショニングによるものです。207cmという身長から繰り出されるジャブの間合い、上体のスウェー、そして試合の中でのロープ際の身の処し方——純粋な技術というよりも、あの体でないとできないことを積み重ねることで成立しているディフェンスです。

マフメドフにとって勝利の鍵となりそうなのは、このフューリーのディフェンスをどう攻略するかに尽きます。ただそれが非常に難しい。だからこそ、どうしてもフューリーの優位というのは動かないでしょう。

ただし、フューリーの現状についても正直に見ておく必要があります。ウシクに2度敗れたことによるダメージの蓄積は、あの2試合の内容を見ていれば否定できません。

父ジョンが「ワイルダーとの三部作でタイソンはダメージを受けた、もう脚がない」と発言しているのは、確かに気になる言葉です。ただ一方で、フューリーは過去にも何度も「もう終わり」と言われながら蘇ってきた選手でもありますね。

フューリーにとって最大の不確定要素は、やはりモチベーションです。フューリーは精神的な浮き沈みに大きく左右される選手で、本気になれる相手と戦う時は別次元のパフォーマンスを見せる一方、気持ちが乗らない試合では凡庸な内容に終わることもあります。

 

 

 

マフメドフという相手が「本気にさせる相手」として映っているかどうか——これが試合の質を決定的に左右する可能性があります。家族全員に反対されながらも、それでも戦う場所に選んだのがリングである、という事実はポジティブに捉えることもできますが、その逆もしかりです。

もし予想するとするなら、フューリーのKO勝ちという流れになりそうではあります。ただ、ニューカマーが次々と台頭してきている現代のヘビー級において、マフメドフの19KOが示すパンチ力は夢のある武器です。フューリーのディフェンスを一発でも崩すことができれば、展開が面白くなる可能性はある。その意味で、個人的にはマフメドフを応援したいと思っています。

コナー・ベン(イギリス)24勝(14KO)0敗
vs
レジス・プログレイス(アメリカ)30勝(24KO)2敗

セミファイナルはコナー・ベン対レジス・プログレイスです。

コナー・ベンについては、2022年10月、試合直前にVADA(検査で禁止薬物クロミフェン(女性向け不妊治療薬)の陽性反応が2度検出されて試合が中止となった、あの件は記憶に新しいでしょう。

ベンは汚染による陽性であると一貫して無実を主張し、長い法廷闘争の末、2024年11月に英国独立ドーピング審判委員会(NADP)が「ドーピング違反があったとは確認できない」として処分を解除。

本人は法的に「シロ」とされた立場です。ただ、この問題が世間の記憶から完全に消えているわけでもなく、今なお付きまとう問題であることは否定できません。

一方のプログレイスは元WBA世界スーパーライト級王者。かつてはこの階級の最強格の一人として名を馳せましたが、デビン・ヘイニー(アメリカ)、ジャック・カテラル(イギリス)に連敗を喫しており、その地位は大きく後退しています。本来はAサイドとして戦いたいはずの選手が、アウェイのイギリスまで出向いて戦わなければならない状況——この「最後のロード」は険しいもので、コナー・ベンの地元という環境もプログレイスにとっては逆風です。

ベンの件を考えると積極的に応援する気持ちにはなりにくいのが正直なところですが、プログレイスには意地を見せてほしいと思います。

 

 

 

フレイジャー・クラーク(イギリス)15勝(11KO)1敗1分
vs
ジャスティス・フニ(オーストラリア)23勝(16KO)2敗

ということでセミファイナルよりも、このカードこそが非常に興味深い。

両者に共通するのは、ファビオ・ウォードリー(イギリス)に敗れた経験です。ただしその内容はそれぞれ大きく異なります。

フニはウォードリーとの一戦で、ノックアウト負けを喫したラウンドまで明らかにスキルでウォードリーを上回っていました。足を使い、ジャブで距離を作り、知的にボクシングをしながらも最後の一発に沈んだ——あの試合で見せたボクシングのクオリティは、27歳という年齢を考えれば今後の伸びしろを強く感じさせるものでした。

だからこそ、ウォードリーの凄さ、ボクシングのスリル、エキサイティングを見た、とも言えるのですが。

ともあれこのジャスティス・フニ、オセアニア発の次世代ヘビー級として、これからのキャリアに期待が膨らむ選手です。

一方のクラークはウォードリーとの初戦を12回戦いドローに持ち込みながら、再戦では初回KO負けを喫しています。ただ初回KOというのは不確定な要素も多いもので、それだけでクラークの実力を低く評価するのは早計かもしれない。イギリスの地で戦う地の利もある。

 

 

 

フニが勝利すれば、オセアニアの次世代ヘビー級の旗手として大きな一歩を踏み出すことになります。そういう意味で、フニには頑張ってほしいと思っています。

オーストラリアのボクサーは、とにかくスキルがあって、そしてハートが強い、これは日本のボクサーにも共通していることだと思います。だから私はこのオーストラリアのボクサーたちが大好きです。

リアム・パロあたりもそうですが、こういった体格に恵まれたアスリートがボクシングに来てくれる事は本当にありがたいことです。

今週末の両国国技館とトッテナム・ホットスパー・スタジアム、二つの夜の行方が楽しみです。

↓Prime Video Boxingのプレビューはこちら

boxingcafe.hatenablog.com

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配信情報

この興行は、Netflixでライブ配信。

配信開始は日本時間4/12(日)AM3:00から、メインイベントはおそらくAM7:00頃でしょう。

カネロvsクロフォードがあってから、結構長い間放置された私のNetflixが、ようやくボクシング興行という日の目を見る日がやってきました。

おそらくPrime Video Boxing興行の興奮が冷めやらない中視聴することになるであろうこの興行、今週末は本当に楽しみです。

 

 

 

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